消防点検の内訳が妥当かを把握していないなら資産の無駄使いの可能性があります。
行うべき消防点検は建物の条件で非常に複雑に定められており、管理会社の確認不足があれば不要な点検費用を払い続けている可能性があるからです。
そこで今回は消防点検の主な内訳項目とその費用相場を詳細に解説していきます。
また妥当な項目を判断し無駄を削減する具体的なテクニックもご紹介していますので、ぜひ最後までお読みください。
消防点検とは
消防点検とは消防設備点検や消防用設備等の点検とも呼ばれ、消防法によって多数の人が出入りする対象物の、防火と被害拡大を防ぐために定められた設備の点検を指します。
設備の設置条件は対象建物の面積や階数、収容人員などによって詳細に定められていますが、これらが確実に機能するかどうかをしっかりと点検します。
以下に具体的な点検と報告の頻度、主な対象設備や費用相場をご紹介します。
点検と報告書の提出の頻度
点検は目視で外観上の損傷や劣化の確認、簡易操作での動作確認を行う機器点検と、実際に使用して消防機能に問題ないかを確かめる総合点検があります。
頻度は機器点検が6ヶ月に1回、総合点検は1年に1回行うことが定められています。
また建物はその用途によって特定防火対象物と非特定防火対象物に分かれ、それぞれの頻度で該当の消防長または消防署長へ点検などの報告が義務付けられています。
主な用途と報告頻度は以下の通りですが、例えば共同住宅=マンションでも1階に一定条件の飲食店があると特定防火対象物になるなど、複合用途や面積などによって取扱が変わることもあるため注意が必要です。
・特定防火対象物
飲食店、物品販売を営む店舗、病院、ホテル、宿泊所、映画館など
1年に1回の報告
・非特定防火対象物
共同住宅、工場、事務所、学校、図書館など
3年に1回の報告
主な点検設備
以下は消防法で定められた消防設備の一部です。
設置するかどうかや個数、方式、仕様などは建物の条件によって変わるため、所有されている物件については個別に作成されている消防計画書を管理会社から取り寄せ確認してください。
・消火器
・自動火災通知設備
・避難器具
・ベランダハッチ
・誘導灯
・非常警報設備
・連結送水管
・スプリンクラー
消防設備点検の費用相場
消防設備の点検費用の相場を、共同住宅を例に建物規模別でご紹介します。
実際には設備の種類や数、建物の用途などによって金額は変わるため、あくまで一つの目安としてください。
建物面積の目安(3DKでの戸数目安) | 費用相場 |
700㎡(10戸) | 50,000円〜 |
2,200㎡(30戸) | 100,000円〜 |
3,200㎡(50戸) | 150,000円〜 |
5,300㎡(80戸) | 200,000円〜 |
7,000㎡(100戸) | 個別相談 |
※設備修理、交換費用は別途
防火対象物点検の主な項目と費用相場
前項で触れた特定防火対象物になると、設備点検だけでなく、年に1回の防火対象物点検とその報告(緩和物件の場合は3年に1回の報告)も義務として加わります。
主な点検の項目は以下の通りですが、非特定防火対象物よりもかなり厳格な点検と維持管理が求められます。
点検や報告を怠ると所有者には罰金だけでなく、懲役の厳罰が下る可能性もあるため、確実に実施するようにしてください。
◯防火対象物点検の主な項目(一部)
・防火管理者の選任状況
・消火や避難の訓練実施状況
・カーテンなど防炎対象物の防炎性能表示確認
・防火扉や避難階段の障害物の有無確認
費用相場
防火対象物点検の費用相場の目安として、1000㎡の1棟所有の場合をご紹介します。
ただこの点検の費用は建物規模、テナント数、用途や管理権原者数などによって変わる上に業者による金額差も大きいため、見積もりは必ず複数の設備業者から取ることをお勧めします。
項目 | 費用相場 |
基本料金 | 30,000円〜 |
点検費 | 30,000円〜 |
点検票作成 | 5,000円〜/1権利 |
テナント個別点検追加 | 10,000円〜15,000円/1テナント |
※夜間割増、出張費などは別途
防火管理者選任のコスト
防火管理者とは建物の防火対策や設備の管理、実際の消火活動を行う責任者のことであり、講習や試験を受けて合格した者がなれる有資格者です。
消防法では用途や面積、収容人員などによって、この防火管理者を選任すべき建物を定めており、選任しないと所有者や管理者に6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。
所有者や管理者で資格を持ち管理などが行える者がいないと、外部の防火管理者や専門業者へ依頼することになり費用がかかってきます。
外部委託の費用相場は以下の通りですが、複数の管理権原者がいる物件では、さらに統括防火管理者の選任が必要となる場合もあり料金が割増になります。
建物用途 | 費用相場(月額) |
共同住宅のみ | 13,000円〜/月 |
複合建物(住居や店舗など) | 18,000円〜/月 |
消防点検費内訳の確認ポイント
ここまでで解説した消防点検費の内訳をまとめると以下のようになります。
・消防設備点検実施(機器点検と総合点検)
・ 〃 点検報告書作成と提出代行
・防火対象物点検の実施と報告(特定防火対象物の場合)
・防火管理者委託
この他に設備の修理や交換の費用も必要であれば加わってきます。
管理会社などから届く消防点検費の内訳で注意したいのが、建物の設備や点検、報告の義務が正確かどうかです。
消防法によって建物は非常に細かく分類され、さらに必要な設備や点検、報告はいくつもの条件が複雑に関係し合って決定されます。
これは一般の投資家の方はもちろん管理会社の人間でも正確に判断することは難しく、建築当初に専門業者が立てた消防計画のままで運用しているケースが多いです。
しかし建物の仕様やテナントの用途が変わったり、あるいは法改正で条件が厳しくなったり緩和されたりがあれば、年数経過とともに当初の消防計画から変わっている可能性があります。
中には現在では不要な費用が組み込まれたまま請求されているケースもあり、もし内容や額に不自然な点があるなら、一度外部の専門業者へ内訳を確認してもらった方が良いでしょう。
設備業者との直接契約でコスト削減
消防点検費のコストを抑えるには内訳を精査することも大切ですが、さらに管理会社を通じた設備業者ではなく、ご自身で依頼先を探し直接契約を結ぶことも有効です。
管理会社経由で点検や報告などを行えば当然その費用にマージンが乗ることになり、さらに交換や修理の費用も割高になってしまいます。
また管理会社が最も建物を良く理解しているから安心だ、という理由で任せている投資家の方もいますが、実際の点検実施状況を把握していなかったり、業者見積りをチェックもせず利益を乗せて請求したりする管理会社もあるため注意が必要です。
もし消防点検費が割高に感じているなら、知り合いの投資家の方に紹介してもらったり建築の専門家に相談したりするなどして、管理会社以外の業者の見積もりを取ってみることをお勧めします。
まとめ
消防点検は利用者の安全を守り、物件を維持するために非常に重要な行為です。
しかし消防法で有資格者による定期的な点検や報告が定められているため、どうしても継続的に費用がかかってしまいます。
そのため今回ご紹介した代表的な項目と相場を参考にしながら、一度その請求の内訳が適正かを確認してみてください。
ただ所有されている物件の複雑な条件によって設備や点検内容が決まるため、一般の投資家の方が適正な内訳か判断するには限界があります。
出費の見直しを兼ねて一度管理会社以外の設備業者や専門家に、内訳の確認をしてもらうと良いでしょう。
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