不動産投資における賃貸物件の建築費内訳は、投資初心者の方にとって非常にわかりにくいものです。しかし建築費の内訳を知ることは、不動産投資の利回りを高めるために非常に重要です。
そこで今回は賃貸物件の建築費内訳を詳しくお伝えし、さらに建物工法別の坪単価相場や建築費を安く抑える方法なども解説します。
利回りの高い物件建築に必ず役立ちますのでぜひ最後までご覧になってください。
賃貸物件の坪単価相場
初めに賃貸物件の工法別坪単価相場を紹介します。坪単価とは建物の面積単位である1坪あたりの目安金額を表したもので、これを建物の坪数にかければおおよその建物総額がわかります。
構造ごとの坪単価
坪単価は建物の骨組みの種類である工法によって異なるため、代表的な工法ごとの目安をお伝えします。
工法 | 平均坪単価 |
木造 | 50〜70万円 |
軽量鉄骨造 | 60〜80万円 |
鉄筋コンクリート造 | 80〜100万円 |
建物の工法と特徴
賃貸建物の主な工法は木造、軽量鉄骨造、鉄筋コンクリート造の3つに分かれます。この工法ごとに金額だけでなく建物の特徴も変わります。
木造
木造は木の骨組みを使った工法で1〜3階建てまでの建物に主に用いられます。木材は規格品が大量に流通しているため価格を抑えやすく、コストを重視した小中規模の賃貸物件に用いられることが多くなります。
依頼先は地場工務店から大手ハウスメーカーまで選択肢が豊富で、予算や好みに合わせて選べます。
軽量鉄骨造
軽量鉄骨造は厚みが6mm未満の鉄骨を使った建物で、主に4階程度までの建物に用いられる工法です。金額は木造より若干高めですが工期が早いというメリットがあります。
一般的に耐震性や耐火性に優れるというイメージが有りますが、実際には木造と大きな差はありません。
鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造は芯材に鉄筋を使い、コンクリートで固めた構造体を作る工法です。耐荷重性能が高く主に中〜高層マンションに用いられ、1階を駐車場にして敷地の広さをできるだけ建物に使う工夫もできます。
また防音性が高く断熱性能も優れた工法で住み心地が優れているのも特徴です。ただし金額は前述の2つの工法より高額になり、工期も長期間必要になります。
これらの工法による違いについては以下の記事で詳しく紹介していますので、興味のある方はぜひご覧になってください。
「不動産投資の賃貸アパート建築費!適正価格と安く抑える4つの方法」
https://fudosan-archi.com/2020/09/23/reasonable-price-and-low-price/
見積り費用の内訳
賃貸物件の見積りの内訳を詳細に解説します。いずれも多くの建築会社で共通の項目になっていますので、複数の見積りを比較する際に役立てていただけると思います。
本体工事
本体工事とはベースとなる建物のことで、構造体はもちろん外壁やサッシ、内装などを含んでいます。冒頭の坪単価に建物面積を掛けて算出される金額は基本的にこの本体工事になります。
実際の見積り計算でも建築会社が設定した坪単価をもとに算出するところと、使う材料をひとつずつ数え単価を積み上げて算出するところがあります。
この後解説する付帯工事や諸費用は本体工事に含まれず、それぞれの合計が総費用となるため注意をしてください。
付帯工事
付帯工事とは本体工事に含まれない現場ごとに異なる内容の工事で、主に以下のようなものがあります。
設備工事
設備工事にはまず各部屋に付くキッチンや浴室、トイレ、洗面化粧台などの水回り工事があります。
他に照明やエアコン、インターホンなどの電気設備工事もあります。最近ではエントランスの集中インターホンやオートロック、防犯カメラと言ったセキュリティ関係が人気の高い設備になっています。さらに建物規模によっては入り口の自動ドアやエレベーターといった設備も加わります。
ハウスメーカーの中には何種類か用意しているモデルごとに標準設定品が決められており、価格帯に応じてグレードも変わってきます。
一方で一つずつ打ち合わせをしながら、どのような設備を付けるか決めていく建築会社もあります。
給排水工事
給排水工事は飲み水を部屋に届ける水道配管と、各部屋や共用部分から出る排水を流し出す排水管の工事です。
建物内の配管と建物外で行う配管を合わせて給排水工事とする建築業者もあれば、建物内部の配管は本体工事に含み建物外で行う給排水工事を付帯工事にする建築業者もあります。
この分け方によって給排水工事の金額が大きく変わるので、見積りを見る時はどちらになっているか確実に理解するようにしましょう。
造成工事
造成工事とは敷地に凹凸があった場合に整地して平坦にする工事です。
道路から見て大きく下がっている敷地では土を大量に入れる工事が必要になり、逆に道路から高ければそれを削り出し処分する工事が必要になり、いずれも敷地が広いとかなりの金額になるため注意が必要です。
特に田畑に盛り土をするような建築地が極端に高くなる造成では、周囲を囲う擁壁工事も加わりさらに多額な費用が必要になります。
地盤改良工事
地盤改良工事は建物を建てる場所の地盤が軟弱な場合に建物が傾かないように補強する工事で、工法や規模によって大変高額な費用がかかることがあります。
太い鉄パイプを建物の下に打ち込んで支える鋼管杭工法や、セメントの柱を地中に作り周囲との摩擦で沈下を支える柱状工法などがあります。いずれも数百万円から1,000万円を超えるような高額費用がかかることも珍しくありません。
事前に地盤調査を行い改良工事が必要かどうか予測することはできますので、心配な方は早めに建築会社に相談するようにしましょう。
駐車場・外構工事
駐車場や外構の工事も内容によっては大きな金額がかかります。
駐車場はアスファルトを敷きラインを描くだけの工事から、省スペースで済む立体駐車場工事まであり規模によりますが立体駐車場の方が高額になりがちです。
外構はアプローチの路面や植栽、門構えなどの工事で、物件の方向性によって工事内容が大きく変わります。
簡素なアパートには必要最低限の外構で十分ですが、平均以上の家賃を設定する付加価値の高い物件であれば見栄えのするエントランスや植栽にすることをおすすめします。
内見に来た時の外構の印象は入居決定に大きく影響しますので、物件の方向性によってはしっかりプランと予算を準備するようにしましょう。
諸費用
各種申請や手続きなどの諸費用も額は小さいものの必ずかかる項目なので、内訳をしっかり理解しておきましょう。
設計料
物件の設計と建築の申請、現場管理に対する手数料が設計料です。これは建築会社の中にある設計部門が行う「設計施工一貫方式」と、建築会社とは別の設計事務所などに依頼する「設計施工分離方式」とで金額が大きく変わります。
設計施工一貫方式は建築費の1〜3%、設計施工分離方式が7〜8%と大きな開きがありますが、設計施工一貫方式は手抜き工事の温床になっているという指摘もあります。
この発注方式における問題については以下の記事で詳しく解説していますので、関心のある方はぜひ目を通してみてください。
「賃貸マンションで不動産投資!建築費の適正価格と抑える方法」
https://fudosan-archi.com/2020/09/23/reasonable-price-and-low-price/
登記費用
新たに建てた建物の登記や土地の地目変更などで必要になるのが登記費用です。各作業の費用は法定手数料で上限が定められていますが、そこからどれくらい割引をしてくれるかは依頼先次第です。
ただ金額的に特別高額なものではないため、忙しい方は金額よりも建築会社や金融機関と提携していて連絡や書類の手渡しがスムーズな相手を選ぶと良いかもしれません。
火災保険地震保険
火災保険は万一の火事の被害を補償し、さらに現在の保険では自然災害の建物被害などもカバーしてくれます。内容によって多少の違いはありますが、保険会社によって極端な金額差はありません。
支払い方法は年払いと最長10年までの一括払いがありますので、用意できる予算に応じて選ぶと良いでしょう。
不動産取得税・固定資産税
建物を所有すると不動産取得税が課税されます。取得時に1回だけですが建物規模によっては非常に大きな金額になるので、事前に相場を調べ予算に組み入れておくことが大切です。
また固定資産税は毎年かかることになるため、こちらもしっかりと準備しておくようにしましょう。
融資諸費用
銀行の融資を受けるには事務手数料や保証料、抵当権設定費などの融資諸費用がかかります。
融資額や期間によってはまとまった大きな金額になることもあるため、銀行で融資相談をする際に具体的な金額を確認しておくと良いでしょう。
入居者募集費用
建物完成時に入居者募集のため仲介会社や管理会社にチラシを作成してもらったり、物件情報サイトに掲載してもらったりする費用がかかります。
新築完成時に満室にすることは不動産投資では非常に重要ですので早めに相談して十分な予算を準備し、しっかり宣伝活動をしてもらうようにしましょう。
建築費を安く抑える方法
賃貸物件の利回りを高めるには建築費を安く抑えることが効果的です。ここでは建築費を抑える3つの方法を紹介します。
複数の会社で比較検討する
建築に限らず複数の会社を比較検討することは、金額を抑えるための基本的な方法です。各社を競合させより良い金額を提示してもらったり、提案を比較することでコスト削減の具体的な方法を学べたりするからです。
ただしあまり過剰にコストダウンを要求すると品質が下がってしまう恐れもあるため注意が必要です。
過剰設備にしない
入居者募集を意識しすぎて過剰な設備を付けてしまい、費用が膨らんでしまわないようにしましょう。例えばキッチンにそれほどハイグレードなものが求められていないのであれば、平均的なグレードにして費用を抑えるなどです。
他にも内装など地域における入居者層の要望に合っているものかどうか、常に意識すると良いでしょう。
適切な工法を採用する
冒頭で紹介したように建物の工法によって建物の価格は変わります。
建築時の費用だけを考えるのであれば木造が1番有利ですが、不動産投資では売却時の価値も重要になります。そのため耐用年数の短い木造は価値が落ちやすく必ず良い利回りになるとは限りません。
将来的に建物を売却する際の価値や所有している間の修繕費など、長期的な視点で最適な工法を選ぶようにしましょう。
建築費を抑える具体的な方法は以下の記事で詳しく解説していますので、参考にぜひ一度目を通してみてください。
「不動産投資の賃貸アパート建築費!適正価格と安く抑える4つの方法」
https://fudosan-archi.com/2020/09/23/reasonable-price-and-low-price/
空室を避けやすい建物にする3つのポイント
建築費を抑えることは利回りに大きく影響しますが、あまりに費用を抑えすぎて入居者が集まりにくい建物になっては意味がありません。
また最終的な売却価格が低くなるような建物であれば、投資結果が赤字になる恐れもあります。建築費の検討も大切ですがあくまで不動産投資であることを忘れてはいけません。
投資として成功させるためには空室を極力避け、家賃収入が減らないようにすることも非常に重要です。ここでは満室にしやすい物件にするためのポイントを3つ紹介します。
需要にあった部屋タイプにする
賃貸物件の部屋タイプは大きく分けて、単身者用のワンルームタイプと家族向けのファミリータイプがあります。
ワンルームタイプは同じ面積の建物でも部屋数が多く取れるため、ファミリータイプに比べ建築費がかかることになります。しかし需要が安定してあり空室になりにくいのはワンルームタイプです。
ファミリータイプの方が家賃設定を高くできるというメリットはありますが、空室が多ければ利回りが低くなる恐れがあります。
建築する地域の需要をよく見極め、適切な部屋のタイプを選ぶことが空室回避の前提となります。
適切な設備にはコストをかける
建築費を抑えることは大切ですが、空室回避につながる設備には適切なコストをかけるようにしましょう。
たとえば入居を検討する人の印象を左右するエントランスや外構のコストをカットしすぎて、建物が貧相に見えてしまえば空室が発生しやすくなります。
またキッチンや浴室のグレードが極端に低くければ、入居者が不便に感じて退去されやすくなるかもしれません。
他にもセキュリティのような近年の物件では必須とされる設備も省いてしまうと、入居者を集めにくくなってしまうでしょう。
空室を回避することは建築費を抑える以上に利回りに大きな影響を与えるということを十分に理解しておきましょう。
立地も重視する
空室を回避するには物件の立地も非常に重要です。すでにお持ちの土地で建築されるなら立地を選びようもありませんが、土地も合わせて購入される方はその選定を慎重に行うべきです。
普段の買い物に利用する商業施設や日常的に使う病院が近くにあれば、利便性が高まり物件のアピールポイントになります。また毎日の交通手段が鉄道の地域なら、駅までの距離は非常に重視されます。
いくら立派な建物にしても立地が悪ければ入居者に敬遠され、空室の続く物件になりかねません。建物だけに力を注ぐのではなく立地についても、仲介会社と十分に相談しながら検討するようにしましょう。
まとめ
賃貸物件の建築では見積りの内訳項目を十分に理解し、それぞれの内容をしっかりと打ち合わせすることで最終的な建築費を抑えることができます。
また工法や設備によっても金額が大きく変わるため、それらも適切に選ぶ必要があります。
しかし投資初心者の方がこれらを判断するのは現実的にかなり難しいため、信頼できる建築業者や仲介業者を探し協力しながら計画を進めた方が安心でしょう。
今回お伝えしたことを参考に、高い入居率を維持できる利回りの良い物件建築を実現させてください。
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