初めて不動産投資で物件をリノベーションする方にとって、適正価格はなかなか分かりにくいものだと思います。
適正な相場価格を把握しておかないと割高な工事費用になり、物件運営で大きな損失をしてしまう可能性があります。
そこで今回は物件のリノベーションをする際の適正価格や、工事費用を抑える方法を紹介します。
併せてリノベーションを行うべきかの判断基準や、不動産投資での効果もお伝えしますので、適切に工事をする上でお役立てください。
リノベーション費用の適正価格
まずは、工事内容ごとのリノベーション費用の適正価格を紹介します。
価格は平均的な工事内容を行った場合のものであり、その規模によって安く済むこともあれば高くなることもあります。
あくまで平均ということをご了解のうえ、具体的な内容を工事業者とお話をする際の基準としていただければと思います。
フローリング
フローリングのリノベーションは、上貼りと張り替えの2種類があります。
上貼りは既存のフローリングの上にリフォーム用の新しいフローリングを重ねて貼る工事で、費用を抑えられることが最も大きなメリットです。
また工事期間もリビングのような広い部屋でも1〜2日程度と短く、空室期間を短くできるメリットがあります。
ただし既存のフローリングから材料の厚み分だけ多少段差ができ、ドアやクローゼットの扉が当たってしまう恐れがあります。
一方の張替えは既存のフローリングをはがし新たなフローリングを貼るため、段差ができる心配はなくなります。
しかし、古いフローリングをはがす手間やその処分費がかかるため、どうしても費用は高くなってしまいます。
また工期は一週間以上かかることも珍しくなく、次の入居者が決まっていると日程を組むのが困難な場合もあります。
また、極力費用を安く抑えるのであればフローリングではなく、クッションフロアと呼ばれる塩ビのシートを貼る方法もあります。
クッションフロアは柄も豊富で撥水性がよく、質感はフローリングに劣りますが掃除のしやすさなどメリットがあります。
工事内容 | 適正価格(8畳) | メリット | デメリット |
フローリング張替え | 150,000円〜 | 段差ができない | 価格が高い |
フローリング上張り | 120,000円〜 | 価格が抑えられる | 段差ができる |
クッションフロア張り替え | 70,000円〜 | 価格が一番安い | 質感が今一つ |
壁紙
壁紙はリノベーションで部屋の雰囲気を大きく左右する要素のひとつです。
色や柄を変えることで部屋のイメージを一新でき、価格も抑え目でありながら効果は非常に大きいものがあります。
ただし、個性的を狙いすぎるあまり住む人を選ぶような強すぎる色柄になってしまう失敗を、リノベーションでよく見かけます。
目に入る面積が広いため、色柄の選択を誤るとかなり印象を悪化させるおそれがあるので、センスの良いインテリアコーディネーターなどに任せた方が安全です。
貼る壁紙の素材はビニールクロスが一般的ですが、和紙調や織物調、塗り壁調など質感が豊富で金額もこなれていて、価格を抑えながら雰囲気を変えることができます。
差別化を狙うのであれば壁紙ではなくペンキや漆喰などの塗り壁にするリノベーションもありますが、これも個性が強すぎると入居者に敬遠される結果になりかねません。
また売却においてもあまり主張が強いと売りにくいことも考えられますので、個性的な仕上げにする場合は慎重に検討することをお勧めします。
工事内容 | 適正価格(8畳4面) |
壁紙 | 70,000円〜 |
塗り壁仕上げ | 120,000円〜 |
キッチン
キッチンはリノベーションにおいて最も費用が掛かる工事の一つですが、適切な商品を選べば部屋の最大のアピールポイントになる可能性を秘めています。
ただしこれは部屋のタイプによるもので、ファミリー向けや単身者の女性向けの物件において力を入れてリノベーションする部分と言えます。
あるいは丸ごとキッチンを入れ替えるのではなく、部分的に改修もできます。
たとえば、ガスコンロをIHに入れ替えたり水栓金具を新しくスタイリッシュなものに変えたりするだけでも、使いやすさと見た目の良さが増します。
また、本体の扉などに塗装を行えば、全体の見た目も大きく改善できます。
ただし、キッチンが新しくきれいになると急に周りの壁紙や食器棚部分の汚れが目立つようになるため、キッチン空間全体でリノベーションをしたほうがチグハグな印象は防げます。
当然コストはかかるので計画当初から、キッチン本体だけでなくその周囲も視野に入れたリノベーションを考えるべきでしょう。
工事内容 | 適正価格 |
キッチン本体の入れ替え | 80万円〜 |
ガスコンロからIHへの入れ替え | 20万円〜 |
扉の塗装 | 15万円〜 |
水栓金具の交換 | 3万円〜 |
浴室
浴室はゼロから業者が作った造作では、あまりに古いと劣化がひどくリノベーションどころか、修理さえできないことがあります。
費用も状態によって非常に大きく変わりますので、まずは専門業者に見積もりを取ってから検討する方が現実的です。
またユニットバスであれば入れ替えも可能ですがそれでも金額は大きくかかるので、今後の物件の所有期間や物件の築年数などを考え、こちらの場合も専門業者に相談してから検討することをお勧めします。
工事内容 | 適正価格 |
造作浴室改修 | 物件ごとに個別見積り |
ユニットバス入れ替え | 120万円〜 |
トイレ
トイレは毎日入居者の方全てが必ず使いますので、極力不具合のない状態にする最優先の設備です。
特別高機能なものは必要ありませんが、あまりに古いと入居者から敬遠される要因になります。
金額も入れ替えるだけであれば特別高額にはなりませんので、優先的にリノベーションに含めるようにしたいところです。
トイレ本体はシンプルで新しいものにして価格を抑え、内装などで個性を出す方が印象は良くなります。
また部屋と違って面積も狭いため、多少冒険をした壁紙のデザインを選んでも良いでしょう。
また、これからの若い世代の入居者層を狙うのであれば、ウォシュレットを備えたトイレは必須といえます。
工事内容 | 適正価格 |
トイレ本体の入れ替え | 10万円〜 |
ウォシュレット付き便座へ交換 | 3万円〜 |
トイレの壁紙張り替え | 3万円〜(最低限の人工代がかかるため割高) |
リノベーションを安くする方法
リノベーションの費用を安くするのは投資物件の利回りを高めるために非常に有効な手段です。
そこでリノベーション初心者の方でも容易に行える、価格を抑える方法を紹介します。
自分で工事を行う
リノベーションに限りませんが工事費用を安く抑える方法の一つに、自分でリノベーションすることがあげられます。
詳細な工事見積もりを一度でも取った事がある方は、工事費が意外と大きなウエイトを占めていることをご存じでしょう。
これを自分でやることで、大きくコストダウンをすることが可能になるのです。
ただし、一般の方ができる工事は限られますし、商品は手に入っても工事業者以外が取り付けをすることで保証がなくなることもあります。
特に電気と水道関係のものは、万一事故が発生すると被害が甚大になるためご自分でやるのは避け、内装など比較的簡単で失敗の少ないものや、やり直しのしやすいものを選ぶと良いでしょう。
複数見積り
工事費用を抑えるのに最も有効なのは、基本的ですが複数の工事業者から見積もりを取ることです。
ポイントは見積もりを取る際に、各業者に他の工事業者も検討すると必ず伝えることです。
これによって契約を勝ち取ろうと、他社よりも良い工事内容で価格を抑えた見積もりが提示されるはずです。
物件の管理会社から紹介された工事業者をそのまま選ぶ方もいますが、そのような業者は競争原理が働いていないため工事内容に対して割高なことが多くなっています。
依頼する手間や出てきた見積もりを適正なものか判断する作業は必要になりますが、確実に一社から見積もりを取るよりは費用が抑えられますので、是非とも複数業者から見積もりを取るようにしましょう。
閑散期に行う
建築工事は繁忙期に行うと、職人や材料の手配などが難しくなるため金額が高くなりがちです。
逆に閑散期であれば質を下げずに安く職人を手配しやすくなり、費用を抑えることができます。
空室になる時期によるため、工事時期を貸主側で選ぶことは難しいかもしれませんが、退出の時期が決まっていて閑散期であるようなら、積極的に工事業者に値段交渉を打診してみると良いでしょう。
建築工事の閑散期は年度末の決算が終わった後の4〜6月頃が一般的です。
また、業種によりますが10月ごろに多少工事が空いている場合もあります。
これらの時期であれば業者も時間的なゆとりがあるため、丁寧に工事をしてもらえるというメリットも考えられます。
低コストでも可能なリノベーション
いきなりコストの大きいキッチンなどの設備の入れ替えを行うのではなく、まずは低価格な工事を行いどれくらい雰囲気が変わるか確かめてから、さらに大きな工事に取り掛かるのもおすすめです。
以下に比較的低価格で効果もある程度期待できるリノベーション工事を紹介しますので、参考にしてみてください。
まずは補修をしてみる
リノベーションと言うと大掛かりな内装変更などを思い浮かべる方も多いのですが、意外に物件内をきれいにクリーニングするだけで雰囲気が良くなることがあります。
ポイントはお掃除系のクリーニング業者ではなく、傷やへこみ、日焼けや劣化による変色などを直せる補修業者(リペア職人)に一通りのリフレッシュを頼むことです。
これにより単にきれいになるだけでなく、痛みや劣化が隠されるため部屋が新しい雰囲気になり、大掛かりな工事をしなくても入居者受けが良くなることがあります。
価格も当然本格的な工事よりも抑えられますので、まずはリノベーションの前に行ってみることをお勧めします。
照明器具を変えたりLEDへ変更したりする
照明器具を変えたり電球をLEDに変更したりするだけでも、部屋の雰囲気が良くなることがあります。
特に年数の経った物件で効果が大きく費用も抑えられるため、本格的な工事をする前にぜひ試していただきたい方法です。
物件の下見を仕事帰りの暗い時間に行い入居を検討する方もいるため、この照明の影響は意外に大きなものがあります。
照明器具が古びて薄暗くなっていれば部屋の印象は悪くなりますが、明るく真新しい照明であれば部屋は同じでも印象を良くすることができます。
所有している物件を夜見たことがないというオーナーの方は多いので、一度機会があれば見てみるのもお勧めです。
居室だけでなくキッチンや浴室、トイレの照明も確認し、多少でも暗く古びた印象があるようなら費用も特別高額ではないので、早めに交換することをお勧めします。
リノベーションを行う判断基準
リノベーションを行うか否かの判断基準は、さまざまな要素が関係して悩むところですが、ここでは代表的な検討事項を紹介したいと思います。
地域の需要をリサーチする
まずは、リノベーションを行うことがその地域で十分に需要があるのか、しっかりとリサーチすることが重要です。
需要がないところへ資金を投じても回収できないのは明らかであり、この判断基準は投資の基本中の基本といえます。
ただしこの判断を所有者ご自身で行うにはある程度の経験が必要になるため、まだ不慣れな方は仲介の不動産業者に周囲の需要を十分に確認するようにしましょう。
あるいはリノベーション物件に明るいコンサルタントなどに、相談するのも有効な方法です。
売却時期を見通す
物件の売却時期をしっかりと見通した上で、リノベーションは行うべきです。
リノベーションは付加価値を建物に物件に加え大きな収益につながる可能性もありますが、規模によっては大きな費用がかかることでもあります。
せっかく費用を投じてリノベーションを行っても近いうちに売却をするようになれば、回収できない投資になるのは可能性があります。
目先の空室回避のため短絡的にリノベーションを行う方もいますが、冷静に投資の長期計画の中で判断することが大切です。
また、リノベーションをしても空室のままとなって売りに出すと、余計に新たな購入者から敬遠される恐れもあります。
近いうちに売却するようであればリノベーションは行わず、最小限の補修やクリーニングに留めて様子を見るというのも戦略の一つでしょう。
リフォームの投資上の効果
リノベーションの投資上の効果を、最後に確認しておきたいと思います。
リノベーションはコストがかかるため、実行すべきかどうか判断に迷う場面もあると思いますが、次に紹介するようなメリットが期待できる攻めの投資戦略です。
これらのメリットをしっかりと念頭に置きながら、実施の判断をするようにしてください。
新規の入居者募集に有利
物件の価値を高め新規の入居者募集を有利にできることが、リノベーションの最大のメリットです。
築年数の経った物件は時間とともに空室期間が増え、家賃の値下げを検討する方もいるでしょう。
しかし家賃を下げれば当然利回りは低くなるため、安易な値下げは決して得策ではありません。
的確なリノベーションを行うことで家賃を下げずに済み、しかも入居者を集めやすくできます。
リノベーションは資金を減らしてしまうのではなく、増やすための有効な手段と捉えましょう。
売却価値を高める
物件の売却価値を高められるのも、リノベーションの大きなメリットです。
築年数の経った物件はなかなか売りにくいことがありますが、リノベーションをした物件は売却しやすくなり、しかも価格を高く設定できることも期待できます。
もちろん、ニーズから外れたリノベーションは逆効果になる可能性もあり、十分に地域の入居者層をリサーチし適した工事を行うことが重要です。
需要にマッチしたリノベーションを行った物件であれば、投じた資金以上の売却価値に高めることも可能です。
このため、リノベーションに不慣れな方は投資物件への工事に長けた専門業者や、リノベーションに詳しいコンサルタントと念入りに相談をしながら進めていくと安全です。
まとめ
リノベーションはリフォームのように建物をきれいに復旧させるだけでなく、新たな価値を加え入居者を集めやすくし、しかも長く住んでもらえるようにする攻めの投資戦略です。
適正な価格を把握していただいた上で効果的なリノベーションを行い、より高い利益を生む物件に変えるようにしましょう。
ただし、入居者層のニーズにマッチする工事かどうかをしっかりと見極めることが、リノベーションを成功させる上で最も大切です。
ここがずれてしまうと投じた資金が回収できなくなり、利回りを一気に下げてしまう可能性もあります。
できる限りリノベーションに精通した工事業者やコンサルタントに相談しながら、リノベーションは計画することをお勧めします。
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