不動産投資における戸建賃貸の建築費は、なかなか適正価格がわかりにくいものではないでしょうか。
しかし、適正価格を把握していないと割高な工事をすることになったり、余計な費用を払うことになったりするため、不動産投資に大きな悪影響を与えます。
そこで今回は戸建て賃貸の適正な建築費と、その利回りについて徹底的に解説をしたいと思います。
また建築会社や工法による価格の違いや建築費を抑える方法なども紹介していますので、ぜひ最後までご覧になってください。
戸建て賃貸の適正価格相場
戸建て賃貸の建築費は、建物の骨組みや作り方である工法によって適正価格が変わります。
それぞれの工法の特徴と、適正価格を以下にご紹介します。
木造
木造は日本に古くからある木の柱や梁などを使った工法で、設計の自由度が高いことを生かし個性的な外観や間取りを実現しやすい工法です。
また、広く普及している工法でもあるため工事ができる建築業者も多く、さらに材料も広く流通し価格競争が起きていることから、低価格で建築することも可能です。
工期は30坪程度の建坪なら2〜3ヵ月です。
適正価格:50万円/坪
ツーバイフォー
ツーバイフォーはアメリカで生まれた2×4インチの角材と、木のパネルを組み合わせて作る工法です。
材料の種類が少なく組み立ても方もシンプルなので、木造よりさらにコストを抑えて建てられるというメリットがあります。
また、工期も木造に比べ2〜3割ほど早いため、その点からも建築費を削減できます。
ただし大きな窓家や広い空間を取ることは難しい工法なので、計画している間取りが実現できるかどうか、しっかりと確かめてから選ぶと良いでしょう。
適正価格:45万円/坪
軽量鉄骨
軽量鉄骨はプレハブとも呼ばれ、柱や梁の厚みが6mm以下の鉄骨で作られている住宅です。
他の工法に比べて広い空間を取りやすく、また製品精度も高いため狂いのない高品質な建物を作ることができます。
実際には耐震性や耐火性は、木造やツーバイフォーと大きく変わることはないのですが、入居者の中には鉄骨に良いイメージを持つ方もいて、入居者集めで有利に働くかもしれません。
工場生産の部分が多いため工期は非常に短く、ツーバイフォーと同等かそれ以上に早く完成させることが可能です。
適正価格:55万円/坪
坪単価に含まれるものと含まれないもの
建物の金額は坪単価で表されていることが大変多いのですが、この坪単価には以下の付帯工事の費用と諸費用が含まれていないことが一般的なため、建築費の判断には注意が必要です。
また以下の項目でも建築業者によって坪単価に含めてこともあるため、出来る限り複数の建築業者から見積もりを取り、比べながら検討することをお勧めします。
付帯工事
- 屋外給排水工事
- 地盤改良工事
- 盛土・整地工事
- 解体工事
- 駐車場工事
- 外構工事など
諸費用
- 設計料
- 建築確認申請手数料
- 土地の許可申請費用
- 登記費用
- 融資諸費用など
建築会社による建物の違い
戸建住宅を建築する建築会社の種類は主に、ハウスメーカーと工務店という選択肢がありますので、この種類による建物の違いを大まかにご説明します。
それぞれの特徴を十分に理解し、ご自身の投資スタイルに合った相手を選ぶと良いでしょう。
ハウスメーカー
ハウスメーカーは住宅専門の建築企業で、実績が多いため提案力に優れ、品質も一定レベル以上のものが期待できます。
価格帯は幅広く用意されており、賃貸用として初期投資を抑えたい方に合ったモデルも選べます。
またアフターサービスも専門の部署を設け、対応が早いというメリットもあります。
全体的に耐久性の高い建材や設備を使うため、長期計画で投資を計画する場合や、途中の修繕などの維持費を抑えたい場合に適した依頼相手と言えます。
ただしハウスメーカーの戸建は金額的に高めな場合が多く、出口戦略を含めた投資計画をしっかりと立て、実質的な利回りを確かめた上で選ぶようにしましょう。
工務店
工務店は特定の地域に根ざして工事を行っている建築業者で、一番の特徴は金額を調整しやすいことにあります。
ハウスメーカーは一定の品質を保ちたい考えがあるため、使う材料などを予算に合わせて下げることが難しいこともあります。
一方で工務店は最低限の決まりごと以外は、依頼者の要望に合わせて柔軟に作り方や材料を変えることができます。
このため価格を抑えやすく、初期投資の予算に合わせて建物を作ってもらうことも可能です。
ただし経営基盤としてはハウスメーカーの方が安定していますので、建築中に頼んだ工務店が倒産してしまうというリスクがあります。
また完成した後に倒産すれば修理などの手配は所有者の方で行うことになり、安いなりのデメリットもあると言えます。
建築費を抑える方法
戸建ての建築費を抑える方法には以下の三つがあります。
どれもスタンダードな方法ですが堅実に費用を抑えられるので、もれなく実行することをお勧めします。
複数業者から見積りを取る
複数の建築業者から見積もりを取ることは、建築費を抑える基本中の基本です。
ポイントは見積もりを取る各建築業者へ、他の業者からも見積もりを取るということをはっきりと伝えることです。
これにより競争が生まれ、なるべく費用を抑えた見積もりを提案してくるようになります。
ただし極端に安くはないか、適切な工事が行われるかということをしっかりと見分ける必要があります。
もし、経験が少なく心配な方は、建築事務所やコンサルタントなどの第三者にアドバイスを求めると良いでしょう。
個性的な間取りや外観は避ける
入居者集めに有利と考えて個性的な間取りや外観を考える方もいますが、建築費を抑える意味ではスタンダードな間取りや外観にすることをお勧めします。
個性的な間取りや外観にするには流通量の少ない建材を使うことになり、材料コストが割高になる可能性があります。
また依頼する建築業者のプランナーや現場監督の手間も増えるため、設計料や管理費が割増になることも考えられます。
一方でスタンダードな間取りや外観であれば、材料は流通量の多い価格のこなれた物を使え、建築会社の手間や人件費も削減できます。
建築する地域のニーズを確実に捉え攻めの物件を建築するなら別ですが、費用を抑えるなら平均的な間取りと外観で建てておくべきでしょう。
過剰設備を避ける
外観や間取りと同様に、設備もスタンダードなものを選ぶ方が初期投資は抑えられます。
設備とはキッチンや浴室、洗面台、トイレなどで、機能や使い勝手が充実した設備も多数販売されています。
このため、建築業者からの提案段階では、そうした高機能な設備を勧められることもあります。
しかし、それが入居者を獲得したり継続して入居してもらったりすることに、必ずしも貢献するとは限りません。
むしろ、高機能な設備は後々故障した場合に部品が高額だったり、交換も商品が限定されたりして出費が多くなる可能性があります。
できるだけ設備もスタンダードな物を選び、極力初期投資額を抑えるようにした方が、長期的に見ても利回りを高めることになるでしょう。
新築戸建て賃貸のメリット
ここでは改めて、新築で戸建て賃貸の投資をすることの、メリットをお伝えしたいと思います。
初期投資額は中古よりも当然かかりますので、利回りだけを見れば中古の方が圧倒的に高くなります。
しかし、この後ご紹介するメリットも新築には明確にありますので、十分に考慮した上で新築を検討してみると良いでしょう。
入居者を集めやすい
新築の戸建て賃貸のメリットは、何よりも入居者を集めやすいということです。
賃貸アパートやマンションで新築プレミアムという言葉が存在することからわかるように、新しくまだ誰も入居していない、あるいはまだ真新しい物件は、それだけで入居者の関心が集まります。
特に戸建て賃貸がターゲットとするファミリー層であれば、奥様が年数の経った中古物件を嫌う傾向があるため、戸建て賃貸ではなおさら、新築の方が入居者を集めやすいと言えます。
入居者を集めやすく空室期間が生まれにくいということは、1世帯だけの家賃収入となる戸建て賃貸では非常に大きなメリットです。
中古住宅として売却しやすい
出口戦略を考えた場合に比較的早期に売却をするなら新築から所有していた方が有利になる可能性は非常に高いと言えます。
投資の1つのスパンともいえる10年を目安に考えると、築10年というのは今の建築の品質から考えると劣化や損傷はそれほど目立つものではなく、十分に良好な印象を与えられる物件になります。
また売却の際に物件情報を情報サイトに掲載した場合でも、築10年と言う数字の見た目は非常に好意的に捉えられるはずです。
しかも所有者の履歴が1名だけとなれば、修繕履歴にもよりますが丁寧に扱われていたことが伺えるためやはり売却時の有利な条件となります。
新築戸建て賃貸のデメリット
新築戸建賃貸にはもちろんデメリットも存在します。
良い面ばかりを見て判断するのではなく、これからご紹介するデメリットも十分理解していただいた上で、建築をするかどうか判断するようにしましょう。
空室になると収入がゼロになる
これは1棟もののアパートやマンションと比べた場合の話ですが、戸建て賃貸は入居者が1世帯のため空室が発生すると家賃収入がゼロになります。
アパートやマンションであれば多少の空室が出ても家賃収入がゼロになるということはなく、戸建て賃貸の大きなリスクです。
それゆえに戸建て賃貸では、新築であるなどより物件状態が良状態で運営することが、空室リスクの回避のために必要です。
区分所有マンションと値段が近い
物件の場所や土地価格にもよりますが、地方の戸建て賃貸なら都心の区分マンションと価格が近く、投資先の判断を迷う方もいるかもしれません。
確かに区分マンションは物件数が多く、新築の戸建てのように間取りなどの打ち合わせなども不要で、手軽に投資を始められると言う敷居の低さはあります。
しかしこの後ご紹介するように利回りには大きな差があり、最終的な収益を考慮すれば新築の戸建て賃貸は、投資を大きく成功させる可能性を秘めていると言えるでしょう。
戸建て賃貸の利回り
新築の戸建て賃貸物件を検討する際には、他の物件形態の利回りをしっかりと把握した上で、投資先を決定することが重要です。
新築と中古の投資物件で物件形態ごとの、主な利回りは以下の通りです。
物件形態 | 新築 | 中古 |
区分マンション | 3〜4% | 6〜7% |
1棟アパート | 5〜7% | 7〜8% |
戸建て | 8〜10% | 13〜15% |
新築ということを抜きにしても、戸建て物件は非常に高い利回りを得ることができます。
利回りだけを見ると中古アパートの1棟ものも近い利回りですが、中古とはいえ初期投資額が1棟アパートの方が高額になるため、準備できる資金によって判断されると良いでしょう。
戸建て需要の見極めが重要
新築の戸建て賃貸への投資を計画する際に最も重要な判断材料になるのが、建築する地域の戸建て需要の見極めです。
戸建てなら入居者のメインターゲットであるファミリー層の需要が、その地域に十分になければ空室が発生し損失が増えてしまいます。
また周囲の競合の有無や入居率の情報なども、しっかりと仲介不動産業者にリサーチして事前に掴んでおくことも重要です。
大手企業の工場に勤める人たちの需要がある地域でも、最近は撤退などで一気に需要が減り空室が頻発するケースが見られます。
新築戸建てに限りませんが、単に人口だけでなくこうした地域経済にも目配せをして、投資は判断するべきです。
個人でリサーチや需要判断が難しいようであれば、コンサルタントなどの意見を聞きながら投資判断することも、リスクを防ぐ意味では有効な手段と言えます。
賃貸併用住宅
賃貸併用住宅とは戸建ての一部を賃貸として、その他の部分を自宅として併用する物件形態です。
あまり多いケースではありませんが、自己所有の土地をお持ちの方が検討されるケースがありますので、このメリット・デメリットをお伝えします。
賃貸併用住宅のメリット
・低金利の住宅ローンが使える
賃貸併用住宅の最大のメリットは、低金利の住宅ローンが使えるということです。
一般の投資物件への融資に比べ住宅ローンは非常に低金利になっており、利回りを高めるには大変有利な条件です。
賃貸部分と住宅部分の比率など銀行によって様々な条件がありますが、もし利用できるとなればぜひ採用したいメリットです。
・転居や二世帯への状況変化に対応できる
もしご自身が転勤などで引っ越しをすることになれば、住居部分を賃貸に出し2戸分の賃貸収入を得られます。
また子供世帯との2世帯に生活が変化するなら、賃貸を終了させそこに子供世帯を住まわせることができます。
このように賃貸併用住宅は、住み方の状況変化に柔軟に対応できます。
賃貸併用住宅のデメリット
・入居者とのトラブル
賃貸と住まいが一緒の賃貸併用住宅では、入居者と騒音やプライバシーの問題でトラブルになることがあります。
話し声がうるさかったりゴミ出しのマナーが悪かったりと、入居者という立場なら我慢できるものも、自宅でそれが起きるとなると苦痛に感じる方は多いでしょう
逆に、入居者からすると大家が同じ建物に居るというのは気兼ねをしそうで、敬遠される要因になるという意見もあります。
・戸建てにしては利回りは高くない
戸建て賃貸は建物が大きく建築費がかかりますが、家賃収入は1部屋分だけなので利回りだけを見ると5%前後と決して高いものではありません。
これは投資として考えれば確かにデメリットですが、あくまで自宅の住宅ローン返済の助けと考えるならマイナスではないため、建てる価値のあることになります。
賃貸併用住宅を検討する際は投資なのかローンの助けなのか、方向性を定めた上で判断すべきでしょう。
まとめ
戸建て賃貸は建築費が工法や依頼先によって異なり、さらに複数業者から見積もりをとったり間取りや設備をスタンダードなものにしたりすることで、出費を抑えられます。
また、戸建ての新築という面では入居者を集めやすく、適切な時期を選べば状態の良い中古住宅として売却が有利です。
さらに、新築の賃貸建物は投資物件の中では利回りが高い部類ですので、しっかりと賃貸需要をリサーチした上で建築をすれば堅実なリターンが期待できます。
今回の記事を参考に適正な価格で戸建て賃貸を建築し、不動産投資を成功に導いてもらいたいと思います。
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