不動産投資物件の屋上防水工事費用を安く抑える4つの方法

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屋上防水工事は不動産投資物件の雨漏り被害などを防ぐために非常に大切ですが、その費用相場は普段から馴染みのあるものではないため、なかなか知る機会はありません。

また、できるだけ安く抑えたいと考える方もいると思いますが、具体的な方法を知るチャンスもないでしょう。

そこで今回は屋上防水工事の費用相場と、それを安く抑える4つの方法をお伝えします

さらに、防水方法の種類や耐用年数、大規模修繕と合わせて行うことで費用を抑えられる点についても解説していますので、ぜひ最後までご覧になってください。

 

屋上防水工事の費用相場と耐用年数

屋上防水工事の費用相場と耐用年数

屋上防水工事の費用は防水の方法によって変わります。

防水の種類についてはこの後解説しますが、まずは費用の相場を紹介します。

防水方法 費用相場 耐用年数 特徴
ウレタン塗装防水 5,000円〜8,000円/㎡ 10〜12年 低価格で工期も早い
シート防水 6,000円〜10,000円/㎡ 10〜15年 段差などを解消できる
アスファルト防水 6,000円〜10,000円/㎡ 15〜20年 外部からの力に強い

 

屋上防水の方法

屋上防水の方法は主に、ウレタン塗装防水、シート防水、アスファルト防水の3つがあります。

それぞれの特徴や工事をする上での注意点について、一つずつ解説していきます。

 

ウレタン塗装防水

ウレタン塗装防水

ウレタン塗装防水は塗料によって防水をする方法で、比較的手頃な価格でしかも広い面積を短時間で仕上げられるという特徴があります。

また複雑な形状の屋上でも施工がしやすく、既存の防水方法がどのようなものであってもある程度柔軟に施工できる、というメリットも持っています。

より耐久性の高い塗料もありますが金額がかかりますし、特に投資物件では施工後にどれくらいの期間所有するかによって選択が変わります。

その点ではウレタン塗装が最も耐久性と価格のバランスが良いと言えるでしょう。

 

シート防水

シート防水

シート防水はゴムや塩ビなどの複合シートを敷き詰めていく防水方法で、耐久性が高く施工も比較的容易でコストを抑えられるため、ビルの屋上などではよく用いられます。

既存の床にある小さな段差程度なら解消でき、フラットに仕上げられるメリットも持っています。

ただし複雑な形状に合わせて施工をするのは難しく、無理に複雑に貼ろうとするとはがれや耐久性の低下を引き起こすため、現場の選定は慎重に行うべきでしょう。

 

アスファルト防水

アスファルト防水

道路や駐車場の路面で使われるアスファルトを、屋上の床に施工する防水方法がアスファルト防水です。

強度が非常に高く、人が歩いたり物を置いたりしても損傷しにくいのが特徴です。

価格はそれほど高額ではなくコストパフォーマンスに優れますが、重量が非常にあるため施工できる建物が鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造のような耐荷重性能の高い建物に限られます。

また、既存の屋上の劣化が進んでいたり、下地が損傷していたりすると施工できない場合があるため、十分に業者による調査の上で施工可能かが判断されます。

 

防水工事費用を安く抑える4つの方法

工事費用を安く抑えることができれば、投資物件の利回りの面で有利に働きます。

ここでは屋上防水工事の費用をコストダウンする、4つの方法を紹介します。

 

複数業者に見積りを取る

複数業者に見積りを取る

屋上防水に限らず工事の費用を極力抑えるには、複数業者に見積もりを取ることが大前提です。

この際ポイントは各業者に、他の業者からも見積もりを取ることをはっきりと伝えることです。

これにより競争原理が働き、各業者が費用を抑えた見積もりを出してくることが期待できます。

一方で粗悪な工事にならないように、工程や仕上がりをきちんと確認判断できる知識が必要になります。

もし難しいようであれば費用はかかりますが、防水工事の知識のある建築事務所やコンサルタントに見積り判断を依頼するのも一つの方法です。

投資家の方の中には管理を任せている不動産業者から紹介された工事業者に、そのまま比較もせず依頼をしてしまう方もいますが、企業努力をしていない業者が多く価格も割高な上に工事の質も悪くなる可能性があります。

なるべく費用を抑えつつ品質の高い工事をするために、手間を惜しまず複数業者に見積もりを依頼するようにしましょう

 

閑散期を狙う

閑散期を狙う

建築においては、繁忙期と呼ばれる年末から年度末にかけては材料や職人の手配が難しくなり、費用も高額になりがちです。

そのため可能な限りその時期を避け、閑散期と呼ばれる4月から6月にかけての工事予定で見積もりを依頼すると、比較的安く行える場合があります。

また、業者によっては9月が決算で10月から閑散期というところもあるため、依頼する予定の業者があるようなら事前に聞いておくと良いでしょう。

閑散期であれば工事が時間に追われることもないため、丁寧に施工してもらえることも期待できます。

この点に関しては劣化や損傷の程度や資金計画にもよると思いますので、早めに計画を練っておくことをお勧めします。

 

火災保険の利用を検討する

火災保険の利用を検討する

屋上の損傷の原因などによっては、火災保険を利用できる場合があります。

火災保険と言うと火事の時に利用するものと思いがちですが、現在の火災保険の多くが風災や雪災、雹災などの自然災害による建物被害の補償も含んでいます。

そのためもし屋上の裂傷などが台風や大雪などの原因によるものであれば、その修繕の費用が火災保険で補償される可能性があります。

適用の条件を満たす必要がありますが、補償対象となれば費用を大幅に削減することができます。

ただし経年の自然な劣化によるものは対象となりませんので、利用を検討する際は火災保険を利用した補修の経験が豊富な工事業者に一度下見をしてもらうと良いでしょう。

 

程度によっては補修もあり

程度によっては補修もあり

屋上の防水の劣化や損傷の状態によっては、新たに防水施工するのではなく傷んだ部分の補修で対応することも検討しましょう。

傷みの程度が軽ければ補修によって部分的に直すことで、費用を大幅に抑えられます。

もちろん、全面的にひび割れやはがれなどが発生していて補修を何度も行ってしまうと、結果的に新たに防水施工をするよりも費用が高額になってしまうこともあります。

またそれだけの費用をかけて補修をしても、見えない部分に損傷があり腐食が発生してしまう恐れもあります。

そのため、費用ばかりを優先して安易に補修を選ぶと結果的に大きな被害を招き、より高額な修理費用がかかる恐れもあります。

補修を選ぶ場合は必ず損傷などの程度を冷静に判断し、長期的な視点で補修にするか全面的な防水塗り替えにするか検討するようにしましょう。

 

大規模修繕と同時に行い費用を抑える

大規模修繕と同時に行い費用を抑える

屋上防水工事の費用を抑えるためにぜひ確認をしたいのが、大規模修繕の工事時期です。

総額としては大きな工事になりますが、ここに屋上防水工事を含めることで単独に工事を行うよりは費用を抑えられる可能性があります。

特に以下に紹介する工事をご予定であれば、同時に行うことでコストを削減できることが期待できるため、一度大規模修繕を行っている工事業者に相談してみましょう。

 

同時に行える工事

同時に行える工事

屋上防水工事は塗装業者が行うことが多く、以下の工事は同一業者で施工することが可能です。

管理諸経費を削減できたり、工事全体の金額が増えることで割引の値段交渉をしやすなったりします。

ぜひそれぞれの損傷具合や、前回の補修時期を確かめてみましょう。

 

外壁塗装

外壁塗装は当然塗装業者が行いますので、屋上にウレタン塗装防水工事を行う場合は同一業者に依頼できます。

塗装は面積が大きくなるほど費用を抑えられるため、なるべく同種の工事はまとめて行うことがおすすめです。

また塗料が異なってもそれほど工事手間に影響はないので、積極的に塗装を複合させて依頼すると良いでしょう。

 

共用部やベランダの床塗装

共用部とは屋外に面した廊下や階段、エントランスなどのことで、この床面や立ち上がり壁、排水溝などの防水塗装も屋上防水と同じ工事業者が行えます。

ただし、屋上は常に紫外線や風雨にさらされているため劣化が早いのですが、共用部は屋根があることが多く屋上ほど劣化が早くはありません。

そのため必ず同時に行えるとは限りませんが念のため劣化の程度を見極め、状態が悪いようであれば一緒に塗装を依頼することを検討してみましょう。

 

各所の防水

外壁や窓まわりなどの継ぎ目の防水は、シーリング業者や防水業者と呼ばれる工事業者が行うことがあります。

厳密には屋上の防水塗装と違う業者になるのですが、塗装業者が屋上防水工事をする際に関連する防水部分の工事をシーリング業者に依頼することがあります。

このため塗装を行う際は、防水などの劣化がある部分の補修を同時に依頼できます。

 

大規模修繕の周期

大規模修繕の周期

大規模修繕は工事項目ごとに適切な時期を見極め、まとめて行う修繕工事です。

建物規模にもよりますが修繕する箇所はたいへん多く、それぞれに時期を適切に判断するのは一定の知識が必要です。

参考に代表的な修繕部分の工事目安の時期を示しますが、最終的には必ず、大規模修繕の経験が豊富な工事業者に判断をしてもらいましょう。

対象建物部分 修繕の目安時期 備考
外壁塗装・タイル補修 12〜15年  
共用部床塗装 10〜15年 廊下やエントランスの床
共用部鉄部塗装 5〜10年 手摺など
屋上・屋根防水 10〜15年  
屋根葺き替え 20〜30年 屋根材により差がある
給排水管洗浄 10年 点検は5年ごとを推奨
給排水管入れ替え 30年  
サッシ、玄関ドアの入れ替え 30〜35年  
外構路面などの補修 15年 駐車場、駐輪場、歩道、外部階段など

以下の記事では、上記以外のインターホンやエレベーターなど設備の修繕時期や、実際に大規模修繕が行われる具体的な年数の国が行った詳細な調査結果を紹介しています。

大規模改修の時期を検討する際にはぜひ一度ご覧になってみてください。

不動産投資物件を大規模修繕するベストタイミング!実例データで検証

http://fudosan-archi.com/2020/08/26/large-scale-repair-2/

 

大規模修繕の費用相場

大規模修繕の費用相場

大規模修繕において同時に行うことで、それぞれの工事費用は抑えられるとしても、やはり合計の費用が大きくなることは避けられません。

工事項目 適正価格 備考
外壁塗装 1万円〜1万2,000円/㎡ 補修、防水、手すり塗装を含む
給排水設備補修 300万円〜 清掃と劣化部分の交換
給水ポンプ入れ替え 150万円〜  
受水槽交換 120万円〜  
屋上、ベランダ床防水 5,000円〜8,000円/㎡ ウレタン塗装防水の場合
キュービクル交換(受変電設備) 400万円〜 大規模マンションでは所有者負担

工事費別途

共用部照明器具交換 300万円〜 LED照明仕様
オートロック+インターホン入れ替え 500万円〜 全戸+エントランス部
エレベーター入れ替え 200万円〜/台  
自動火災報知設備交換 30万円〜/台  
屋内消火栓BOX交換 30万円〜/台  
機械式駐車場基部交換 150万円〜/台  

修繕部分ごとの工事費用を参考に示しますので、前述の適正時期と照らし合わせながら、どこまでを大規模修繕で行うか慎重に検討してみてください。

下の記事ではこれ以外にかかる大規模修繕の諸費用や、建物規模別の費用総額の目安も詳しく解説しています。

予算の見通しを付ける上で大変参考になりますので、ぜひ一度目を通してみてください。

不動産投資における大規模修繕の適正価格!相場や実施周期を詳細解説

http://fudosan-archi.com/2020/08/24/large-scale-repair/

 

屋上防水工事の投資上の効果

屋上防水工事の投資上の効果

屋上防水を行うことは雨漏りなどの防止に効果的ですが、投資物件で行うとなると費用の出し惜しみを感じてしまう方が多いのも事実です。

建物を健全に維持することと高い利回りを求めることのバランスを取りながら、工事を判断することは確かに難しいものです。

しかし各種の建物維持をする工事は必ずしも資産を減らすものではなく、長期的には資産形成にもつながるのです。

ここでは、建物の修繕が投資にどういった良い影響を与えるのかを紹介しておきます。

 

雨漏り被害の防止

屋上の劣化や損傷を放置して発生する被害として、真っ先に思い浮かぶのは雨漏りです。

雨漏りは単に天井にシミをつくるだけではなく、屋根裏の構造材を腐らせたり錆びさせたりする恐れがあります。

これらの被害は見えない部分で発生するため、気づいた時には取り返しのつかない大きな損傷になっていることも珍しくありません。

構造部分が傷めばその修理は非常に高額な費用がかかり、しかも建物の耐久性や耐震性に大きく影響するため決して後回しにはできなくなります。

また、雨漏りは物件の部屋を汚すだけでなく入居者の家財を傷める可能性があり、損害賠償を請求されることも考えられます。

雨漏りの被害は消して見た目の問題ではなく、建物や入居者に深刻な損害を与えるものであると捉えるようにしてください。

 

売却価値を高める

投資物件に精通した方ほど建物の修繕履歴や、雨漏りが発生した過去がないかを購入前に確認しています。

もし屋上防水工事が不十分で劣化が激しく、まして雨漏りが発生したことがあるとなれば売却に大きな悪影響を与え、価格の値引交渉をされる可能性さえあります。

逆に屋上の防水が十分に行われている状態であれば建物評価は高まり、希望通りの価格で売却できる期待が高まります。

あくまで投資であることを考えると出口戦略は重要であり、その点を考慮すると屋上防水工事は決して軽視すべきではありません。

売却というゴールの価値を高めるために、ぜひ屋上防水を適切な記事に行うようにしましょう。

 

まとめ

まとめ

屋上防水工事はその費用相場を事前に把握することで、適正な金額で工事を行うことができます。

しかし、防水の方法ごとに特徴や耐用年数の違いもあるため、金額だけでなく長期的な計画の中で判断するようにしましょう。

また、紹介した費用を抑える方法を活用していただくと、安全に工事コストを抑え利回りを高めることが期待できます。

さらに、大規模修繕は多くの手間と資金が必要となりますが、規模が大きいほど個別の工事費用の削減効果が高まります。

ただし大規模修繕の経験が少ないのであれば、その種の工事に慣れた業者やコンサルタントに、アドバイスをもらいながら行ったほうが安全です。

ぜひ適切な費用で屋上防水工事を行い、物件価値を高めるために今回紹介した情報を活用してください。

【記事監修】 山田 博保

株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
建築業界での経験を活かした不動産コンサルティング及び建築、不動産に関わるWEBメディアを複数運営。Facebookお友達申請大歓迎です。その他、建築や不動産、ビジネスモデル構築に関するコンテンツは公式サイトより。

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