初めて新築マンションを建築しての投資をする方にとって、建築費はとてもわかりにくいものだと思います。
かなり高額なイメージはあると思いますが、基本となる適正価格がわからず、十分に把握しないまま業者と交渉を始めると割高な建築費を払う可能性があります。
そこで今回は適正なマンションの価格を知っていただき、さらに価格を抑える具体的な方法や間取りや構造によって価格が変わることなどを、お伝えします。
マンション建築費の適正価格相場
マンションの建築費の適正相場は国土交通省が2019年度行った、建築着工統計調査によって知ることができます。
この報告によると居住専用住宅の鉄筋コンクリート造における、全国の床面積合計は11,738,686㎡になっています。
これに対し工事費の予定額の合計は全国で2兆9,672億3,685万円となっており、これを先程の床面積で割ると㎡当たりの単価は25.28万円、坪に換算すると83.72万円となります。
この㎡単価や坪単価を予定しているマンションの床面積にかければ、マンションの適正価格が割り出せます。
ただしこれはあくまで予定額であり、工事開始後に追加になった費用は含まれていません。
マンションに限らず大型の建築では、工事開始後に追加や変更になり費用が変わることは珍しくありませんので、注意をする必要があります。
また現在も建築費の高騰は緩やかですが続いており、今後さらに上昇する可能性は十分にあります。
参照元
建築着工統計調査報告
令和元年度計
国土交通省
東京都の適正価格と全国の違い
同調査による東京都の単価を出してみると、㎡では43.67万円、坪換算では144.65万円となり、全国の平均と大きな開きがあります。
つまり建築する場所により適正価格は大きく変わるため、前述の平均全国の平均はあくまで目安としておいた方が安全でしょう。
同調査には都道府県ごとに床面積と工事費予定額が掲載されていますので、建築される地域の数値を確認することをお勧めします。
マンションの建築費を抑える方法
マンションの建築費をなんとか安く抑えることは利回りを高めるために必要であり、その方法を模索している投資家の方も多いでしょう。
具体的にご紹介すると、マンションの建築費を抑える方法には次の3つがあります。
1.複数の見積もりを取る
2.コストダウンの提案をしてもらう
3.間取りタイプでコストを削減する
それぞれを詳しく解説します。
複数の見積もりを取る
複数の建築業者から見積もりを取る事は、ベーシックですが価格を抑える上で非常に有効な方法です。
ポイントは見積りを依頼する各社に、他の複数の建築業者からも見積もりを取ると伝えることです。
土地を仲介する不動産業者から、建築業者を紹介されそのまま話を進めてしまう方がいます。
しかし、不動産会社から紹介されたお客様は建築業者にしてみると、競合せず自動的に受注が取れることが多いため見積もりが高めなことが一般的です。
これに対し他社と競合することが事前に分かっていると、建築業者は受注を取るためなるべく見積もりを適正な価格にする努力をします。
もちろん建物の質が落ちてしまってはいけませんから、見積もり内容が妥当かどうかを確かめる知識が必要になります。
もし見積り内容を判断するのが不安なら、建築事務所に第三者的な目で見積もりが妥当か確認してもらったり、マンション建築に明るいコンサルタント会社に相談したりすると良いでしょう。
コストダウンの提案も出してもらう
建築業者からマンションを建築する見積もりを取る場合は、必ずメインとなる見積もりの他にコストダウンをした見積もりも出してもらいましょう。
一般的にメインの見積もりは内容が標準的な仕様で作られており、材料や設備などは低価格なものを使わない傾向があります。
さらに、その業者のおすすめとする少し利益率の高い設備や外装、内装などを見積もりに盛り込む業者もおり、適正価格よりも高くなっている可能性もあります。
そのためその建築会社が考える、適正に価格を下げる方法でのコストダウン見積りを併せて作ってもらうのです。
コストダウンの見積もりを頼むことは建築の提案をしてもらう場合には決して珍しいことではなく、むしろ初めから依頼して作成してもらえば、何度も打合せをする必要もなく時間が効率的に使えます。
逆に初めにコストダウンの見積り依頼をしておかないと、標準的か若干割高な見積もりで提案され話を進められ、余計に費用をかける建築になりかねません。
エントランスの床を大判のタイルではなく小さな廉価版のタイルに変更するなど、見た目の問題だけで利便性や品質を下げずに価格だけを下げる材料建材はたくさんあります。
もちろん標準的な見積もりで予算が合えばいいのですが、価格を抑えた建物でも要望が十分満たされるのであれば、その方がより高い利回りを得ることができます。
見積もりを出してもらう時には、必ずコストダウンの見積もりも依頼するようにしましょう。
間取りタイプでコストを削減
マンションの建築費を抑えるには、各部屋の間取りも大きく影響してきます。
間取りには主に単身者が住むワンルームタイプと、家族向けのファミリータイプがあります。
ワンルームタイプの方が利回りは高い
ワンルームタイプは一部屋が小さな面積で済むため、同じ面積の建物に作った場合はファミリータイプより部屋数が多く取れます。
しかしキッチンや給湯器、浴室、トイレなどの設備は一部屋ごとに必要なので、ワンルームタイプでマンションを建てた方が建築費用は高くなります。
ただし、ワンルームタイプは部屋数が多いことから、実際に稼働を始めると家賃収入がより多く得られる可能性があるのです。
ワンルームタイプとはいえファミリータイプより家賃は若干安いだけですから、月々の家賃収入の合計はワンルームタイプの方が多く、投資額の回収は早くなります。
ファミリータイプは建築費が安い
逆にファミリータイプで建築すると建築費は安く、家賃は高く設定できるため一見収益が多いように思えます。
しかし、同じ延べ床面積のマンションであればワンルームタイプより部屋数が少なくなり、月々の家賃収入はファミリータイプの方が少ないという現象が起きます。
単に建築費を抑えるだけであればファミリータイプがお勧めになりますが、投資として考えた場合はワンルームタイプの方が有利になる可能性が高いのです。
初期段階で用意できる投資資金を確認しながらですが、より高い利回りを求めるのであればワンルームタイプを検討するべきでしょう。
発注方式でコストを抑える際の注意点
建築費を抑える方法としては既にご紹介した3つの他に、発注方式で調節するという方法もあります。
発注方式はマンションの設計と施工を同じ会社に頼む「設計施工一貫方式」と、設計と施工を別々の会社に頼む「設計施工分離方式」があります。
この選択でコストに関わるのが設計料で、一貫方式は同じ社内で設計部と施工を行う工事部がやり取りをするため、人的コストや時間コストが抑えられ建築費の1〜3%が設計料の相場になります。
しかし同じ社内の設計と施工同士なので、本来設計が行う施工の品質管理に馴れ合いが生まれてしまい、手抜き工事の温床になっているとの指摘があります。
分離方式は設計と施工を分けて行いますが別の会社であるため、連絡や業務のやり取りでどうしても人的コストや時間、移動のコストなどがかかり、設計料は7〜8%が相場と一貫方式よりかなり高額になります。
チェック機能がしっかり働くことが期待でき、手抜き工事や施工ミスの防止につながるというメリットを持っていますが、この差は大きく投資家の方も悩む部分でしょう。
現実は受注を取る営業部も同じ社内にあることからか、一貫方式で行われていることが圧倒的に多くなっています。
以前ほどではありませんが施工ミスが完全には無くならない構造になっており、依頼主の方で第三者の管理を手配するなどの対策も考えて良いかもしれません。
価格が変わる建物の構造
建物の構造も価格に影響し、マンションで主に用いられる鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、そして割合としては少ないのですが、低層マンションで用いられる鉄骨造(S造)の違いを解説します。
先に構造ごとに都市部における坪単価の価格帯をご紹介すると、以下のようになります。
構造 | 平均坪単価 |
鉄筋コンクリート造 | 坪100万円前後 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 | 坪120万円前後 |
鉄骨造 | 坪90万円前後 |
それぞれの構造に一長一短がありますので単に価格だけで選ぶのではなく、ご自身の投資計画と照らし合わせより適した構造を選ぶようにしましょう。
マンションで主流のRC造とSRC造の特徴
初めにマンションで主流の構造であるRC造とSRC造について解説します。
RC造はコンクリートの柱の中に鉄筋の骨材が埋め込まれた構造で、低〜中層のマンションで主流の構造です。
耐震性や耐久性が十分で価格と性能のバランスが良く、マンション以外の建築でも多用されています。
もうひとつのSRC造はコンクリートの中に主の骨材として鉄骨材を入れ、その周りを囲うように鉄筋が入れられている構造です。
RC造より建物強度が高く高層マンションで主に用いられている構造ですが、工期が長くなりやすく建築コストも高額という欠点がありました。
しかし近年はRC造の技術が向上し、高層の建物でもRC造が使われるようになっています。
もちろん低層のマンションではRC造が主流ですが、価格面や工期の有利さで、今後は高層マンションでRC造が増えていくことも考えられます。
鉄骨造(S造)の注意点
鉄骨造(S造)は鉄板をコの字型に折り曲げた鉄骨を柱として用いる工法で、以前から2〜3階建てのプレハブアパートで用いられていましたが、マンションでも低層タイプで用いられることがあります。
RC造とSRC造を知っていると貧弱な柱に見えるかもしれませんが、耐震性は問題なく確保されている構造です。
ただし部屋ごとの仕切りが中空の壁になっているため、コンクリート系のRC造やSRC造に比べ防音性に劣り、隣の部屋の音が聞こえやすくなっています。
また、むき出しのままだと鉄骨は火事の際に熱で曲がりやすいため、耐火被覆と言って鉄骨にロックウールをかぶせることで、火事の時の建物倒壊を防いでいます。
価格はRC造とSRC造よりも安くできますので、価格を重視するのであれば検討してみる価値はあるでしょう。
ただし、マンションとしての工事実績はまだ少ないため、選ぶ際は十分のある施工業者を選ぶことがポイントになります。
建築費の工事内訳に注意
マンションの見積比較をする際の目安となるように、マンション建築に必要な工事項目をご紹介します。
ただし、項目はあくまで一例であり、工事業者によってその名称や、坪単価に含まれるかどうかなどがバラバラです。
複数の見積もりを比較することは金額を抑えるために大切ですが、マンションの見積もりは数100ページになっていることも珍しくなく、一般の方が正確に把握し比較するのは困難です。
できれば建築事務所や建築コンサルタントなどに、有償にはなりますが比較と解説をしてもらったほうが間違いはないでしょう。
坪単価に含まれる主な工事
マンションの坪単価に含まれている主な工事には、以下のようなものがあります。
この大分類の中身も会社ごとの違いがあり、そこまで理解をするのは非常に難しいものになっています。
・仮設工事
・本体工事
・電気設備
・空調設備
・衛生設備
・エレベーター
・諸経費
坪単価に含まれない工事
坪単価に含まれない工事は各種ありますが、比較的漏れやすかったり工事費が大きかったりする項目もありますので、必ず見積りに記載があるか確認をしましょう。
特に解体工事、整地工事、駐車場工事、外構工事は高額になる工事ですので、必ず概算でも良いので契約前に見積もりを出してもらうべきです。
変更工事に関しては、契約前にどの程度まで煮詰めて打ち合わせができたかによって、大きく変わります。
中でも各部屋につける個数の多い工事が変更になると、一つずつは少額でも合計で高額になることもあるため注意が必要です。
近隣への補償費は必ず発生するものではありませんが、完成後に必要となることがあるため、資金調達が終わってしまっている状態も考えられます。
さらに費用の算出に日数がかかるケースがありますので、周囲の調査や告知を十分にしておくべきでしょう。
・解体工事
・整地工事
・変更工事
・式典費用
(地鎮祭、上棟式、竣工式)
・近隣への補償費
(テレビの電波障害、日照権などの補償、状況調査費)
・広告宣伝費
・電気、電話、ガス、上下水道の負担金や加入金
・追加変更などの行政への申請費
・駐車場工事
・外構工事
(アプローチや植栽、サイクルポートなど)
・消火設備
アパートの建築費の相場
マンションとは規模や構造が違いますが新築1棟物の投資物件として、アパートも候補に考えている方がいるかもしれません。
参考に工法別の坪単価をご紹介します。
工法 | 坪単価相場 | 適した建物 |
木造 | 50〜70万円 | 2〜3階建て向き |
軽量鉄骨 | 60〜80万円 | 2〜4階建て向き |
詳しい内容や費用を抑える方法などについては、以下の記事で詳しく解説していますのでぜひ参考にご覧になってください。
「不動産投資の賃貸アパート建築費!適正価格と安く抑える4つの方法」
http://fudosan-archi.com/2020/09/23/reasonable-price-and-low-price/
まとめ
マンションの建築費を抑えるには複数の建築会社から見積もりを取り、合わせてコストダウンの見積もりも取ることがお勧めです。
また、発注方式に設計施工一貫方式を選ぶことでも費用を落とせますが、手抜き工事などの恐れがありますので、予算が許すようならできる限り設計施工分離方式も検討すると良いでしょう。
部屋のタイプにファミリータイプを選ぶことで建築費を抑えることもできますが、家賃収入はワンルームタイプンの方が有利です。
肝心の見積書の内容は、残念ながら一般の方が正確な比較と理解をすることは困難です。
費用はかかりますがマンション建築に明るい建築事務所や、コンサルタントに比較をしてもらった方が間違いはありません。
投資としては区分マンションや中古のアパート1棟物よりステージが一つ上がる新築マンションですが、堅実に運営をすれば得られる利回りは高いものがあります。
ぜひ今回の記事を参考に適正価格を把握し、投資を成功させてもらいたいと思います。
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