不動産投資物件で賃貸管理会社にかかる業務委託費用の内訳を、明確に把握している方は少ないのではないでしょうか。
しかしその内訳をしっかりと把握することは、不動産投資において余計な出費を防ぐため非常に重要なポイントになります。
そこで今回は賃貸管理会社から請求される、業務委託費用の内訳を詳細に解説したいと思います。
合わせて業務委託費用の相場や賃貸管理会社の選び方なども解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
業務委託費用の内訳
業務委託費用の内訳は主に以下の4つに分かれています。
1:建物や設備などの維持管理
2:入居者募集
3:入居者対応
4:諸費用管理
それぞれを詳しく解説していきます。
建物や設備などの維持管理
まず1つ目は建物や設備などの維持管理費です。
物件に備えられているボイラーやエアコンなど、設備における補修や修理の対応をしたり、交換が必要となれば新たな設備を業者と交渉しながら選定をすることもあります。
また外部においても、たとえばテレビアンテナが破損しているようなら、工事業者に依頼して補修の手配を行います。
さらに細かなことですが、共用部の廊下やエントランスなどの電球といった消耗品の交換を行ったり、傷んだところがあれば簡易的に補修したりすることもあります。
単純に汚れているところがあれば清掃を行い、ゴミ出し施設があればその管理も行うなど、建物の細かい部分まで維持管理を行います。
小さなことで地味な作業が多いのですが、物件の機能や住環境を維持するには非常に重要な作業になります。
入居者募集
業務委託費用内訳の2つ目は、入居者募集です。
物件に入居者募集の張り紙をしたり、のぼり旗を立てたりといった現場でのPR活動や、チラシや広告を打ったり物件情報サイトに掲載をしたりといった広報活動も行います。
この費用の内訳としては管理会社が行う活動費用にプラスして、チラシ代や物件情報サイトへの掲載料など実費もかかってきます。
また入居希望者からの問い合わせに対応することも、管理会社としても非常に重要な仕事です。
賃貸の投資物件の運営の上では空室をいかに作らないかや、もし発生したとしてもいかに短期間で次の入居者を見つけるかというのが、不動産投資での生命線になります。
そのため、業務委託費用の中では大きな割合になるかもしれませんが、しっかりと内容を見極め十分に費用を投じることをお勧めします。
入居者対応
業務委託費用の内訳の3つ目は入居者対応です。
これは家賃の徴収や管理、クレーム対応、入居・退去の管理や立ち会い、部屋のクリーニングや補習の手配などがあります。
所有する物件数が多くなると家賃などの管理は非常に煩雑になりますし、物件が少なくてもクレーム対応などは非常に時間をとられます。
このためこの入居者対応をしてもらうために業務委託をしている、というオーナーの方も多いのではないでしょうか。
ただし一任して手離れをしたくなる部分だけに、実際には管理会社が十分な対応を行わず入居者の不満が重なり退去されてしまうケースもあります。
任せてはいても時にはしっかりと業務が実行されているか、確認するようにしましょう。
諸費用管理
業務委託費用の内訳の4つ目は、諸費用の管理です。
1棟物件なら共用部の電気代などを管理している場合もありますし、物件によっては入居者の電気代、水道代、ガス代などを集金する場合もあります。
このような物件ではこれら代金の支払いや、契約の更新、業者とのやりとりを管理会社が受け持ち、手数料を業務委託費用の中に計上してくることがあります。
また、建物にかける火災保険の加入や更新の手続き、保険内容の見直し、実際に補償を受けることになった場合の対応などを行う場合もあります。
もちろん業務委託費用の中に保険料は含まれませんが、各種手続き代行費用として手間代が含まれていることは考えられます。
業務委託費用の相場
業務委託費用の相場は1室の家賃に対して5〜8%が相場になっています。
部屋数が増えると賃貸管理会社の収入が増えるため掛け率の割引を用意しているところもありますが、建物規模が大きくなり管理する項目が増えることもあるので、逆に規模が大きいと掛け率が高くなる場合もあります。
また業務委託費用は家賃に対して掛け率で出すもの以外に、初回契約時の事務手数料や契約を更新する際の更新料、あるいはシステム利用料などが必要になることもあります。
中には掛け率は低いものの諸費用が高額になる管理会社もありますので、依頼先を選ぶ際には必ず詳細な諸費用も出してもらうようにしましょう。
業務委託をするメリット
業務委託費用だけを見ていると割高な印象を持つ方がいるかもしれません。
果たして業務委託をすることにそれだけの価値があるのか、そのメリットを改めて確認したいと思います。
それぞれの業務に豊富なノウハウを持つ
業務委託の一番のメリットは、内訳で紹介したそれぞれの管理項目に対して、多くのノウハウを持っているということです。
建物の修繕は、専門的な知識や業者との繋がりがなければ素早く的確に行うことは難しいですし、入居者募集も非常に地味で細かな作業の積み重ねが必要になります。
また入居者対応においても家賃の管理は非常に細い配慮が必要で、さらにクレーム対応は不慣れな方であれば精神的な負担が非常に大きいものといえます。
さらに各種費用の管理や、それぞれの支払先とのやり取りは非常に時間と手間のかかることであり、実際の管理業務の内容を知れば、費用対効果は大きいと理解できるはずです。
時間を取られず物件運営に集中できる
賃貸管理の業務委託を行うことで、投資家の方は貴重な時間を賃貸管理に取られることなく、物件運営に集中することができます。
また、副業で不動産投資を行っている方なら本業に影響をさせることなく、安定的に資産運用ができることになります。
不動産投資で成功している方はいかに自分の手間を減らし、任せられるものは任せて運営に集中し拡大していくという事を効率的に行っています。
この点は考えれば業務委託の費用は決して経費ではなく、先行投資の費用と考えることもできるでしょう。
業務委託をする上での注意点
業務委託をする上での注意点は、まず費用の妥当性を常にチェックする必要があることです。
より安くより良い管理を行ってくれるところがないか目配せをして、相場観を常に持っておくことは非常に大切です。
また、賃貸管理は一度任せるとそのままになってしまうことが多いようですが、馴れ合いから管理が行き届かず建物の状態が悪かったり、空室が続いてしまったりという事態が起きかねません。
物件の管理は任せるとしても賃貸管理会社の実際の業務内容を、定期的に確認することは忘れないようにしましょう。
よりコストパフォーマンスの良い業務委託をするためにも、ぜひこれらの注意点を十分に意識していただきたいと思います。
賃貸管理会社の選び方
これから新たに賃貸管理会社を選ぶ場合に、ぜひチェックをしていただきたいポイントをお伝えします。
闇雲に安いというだけで選ぶことはないと思いますが、やはり選ぶ際の明確な基準があった方が、より目的に合った賃貸管理会社を選ぶことができます。
得意分野を確かめる
賃貸管理会社にはそれぞれに得意分野があり、その分野は主に次の三つに分かれます。
・入居者募集
・入居者の管理対応
・建物の維持管理
管理会社を選ぶ場合にはどれが最も得意としている会社なのか、必ず見極めるようにしましょう。
たとえば、入居者管理が得意でも入居者募集が不得意であれば、一切を任せてしまうと空室がいつまでも埋まらない事態が発生しかねません。
また、建物の維持管理が得意な管理会社に家賃管理を任せてしまうと、集金漏れが発生する可能性もあるでしょう。
3つの分野を兼ねている会社も多いのですが、相手の得意・不得意を見極め不得意な部分は別の会社に任せることも検討しましょう。
例えば入居者管理と建物の維持管理は1社に任せ、入居者募集はそれを得意とする仲介業者へ任せるといった具合です。
全てを分けてしまうと所有者の方の負担が増えてしまいますので、1社を窓口にそこからの紹介で分業させるのも良いでしょう。
まずは相談をしている管理会社の得意不得意を見極めた上で、不得意分野の対策を検討するようにしましょう。
空室対策を最優先させる
紹介した3つの分野の中で最も重視していただきたいのが、空室対策つまり入居者募集の力量です。
行なっているのは単なる建物の運営ではなく、あくまで投資だということを忘れてはいけません。
投資を成功させるためには何よりも空室を発生させず、もし発生した場合にはできるだけ短期間で次の入居者を見つけることが生命線となります。
ただし、この入居者募集は管理会社によって力量の差が大きく、手間を惜しんで入居者管理や建物管理も合わせてできる管理会社に任せてしまうと、入居者募集の力量が低く空室が続いてしまいかねません。
入居者募集の力量が高い仲介会社があれば、多少手間がかかってもそれだけは1社に任せることも考えておきましょう。
しっかりヒアリングをする
賃貸管理会社を選ぶ際は見積もりや提案書だけで判断するのでなく、どのような体制で空室対策や入居者、建物管理を行っているか、しっかりと担当者からヒアリングしましょう。
話しをするのを億劫に感じて書類だけで判断しようとする方も見かけますが、それでは業務の詳細な部分や取り組む姿勢が見えてきません。
特に管理業務に対する姿勢や熱意は意外に大切で、文面上は立派なビジョンがあっても実際の現場ではおざなりな管理になっていて、想定外の補修や入居者の退出といった事態が発生することも考えられます。
オンラインで構わないので管理会社の担当者が見える状態で提案を聞いたり、直接質問をしたりしながら依頼先を判断するようにしましょう。
この管理会社の選び方については、以下の記事でさらに詳しく説明をしていますのでぜひご覧いただき、より優秀な管理会社を選ぶために役立ててください。
「不動産投資で賃貸管理会社の選び方を失敗しない10のポイント」
自主管理との違い
賃貸管理会社に管理を委託するのとは対照的に、自分で投資物件を管理する自主管理という手段もあります。
業務委託費用がかからないという利回りを高める上で大きなメリットがありますが、一方でこれから紹介するような注意を十分にしていただきたい点もあります。
建物の維持管理知識が必要
まず一つ目は十分な建物の維持管理知識がないと、劣化や損傷を早めに発見することができず、突然に修繕の出費が発生する可能性があることです。
例えば屋根の状態を早めに判断できなければ雨漏りが発生し、建物の構造体が腐食したり部屋の内装を汚したりするため、それらを修繕する費用が発生します。
さらに入居者の家財を痛めればその損害賠償を請求される可能性もあります。
こういった出費を防ぐために普段から建物各所の点検を行う必要がありますが、チェックをすべき場所や周期、どのような兆候が危険なのかといった、メンテナンスの知識が必要です。
自主管理では建物の維持管理知識が一定以上に必要なことを、忘れないようにしましょう。
突然時間が取られる
自主管理を初めて行う方が直面する一番の問題は、突然時間が取られるということです。
入居者からのクレームから始まり、物件から出た騒音へ近隣からの苦情があったり、さらには物件に雨漏りや水道管の破裂が起きたりと、賃貸物件には様々な緊急事態が発生します。
当然これらに土日祝日は関係ありませんし、早朝や深夜に起きることもあります。
そして即対応しなければ事態は悪化し被害は拡大してしまうため、プライベートな時間を過ごしていたとしても、すぐに駆けつけなければいけないこともあります。
こうした緊急対応の厳しさから自主管理に精神的に参ってしまう方も少なくありませんし、そもそも副業で物件運営を行なっている方は時間を取ること自体が難しいでしょう。
この突然時間が取られることは自主管理をする上で、ある程度覚悟をするべき部分になります。
空室対策は特に難しい
投資である以上、自主管理でも重要になるのが空室対策です。
単に物件サイトに掲載してもらえれば入居者がすぐに集まるというほど、空室対策は簡単なものではありません。
仲介の不動産業者に足を運び、自分の物件を紹介してもらうよう働きかける営業活動を行ったり、地道な宣伝活動でチラシを配ったり広告を打ったりと、相応のノウハウと努力が必要になります。
しかもこれらの活動を行ったとしても空室を埋めることは難しく、経験も知識もない所有者の方が漫然と行なっても容易に解消できるものではありません。
不動産投資における生命線となる空室対策においても、自主管理より有償で業務委託をしたほうがメリットは大きいと言って良いでしょう。
まとめ
賃貸管理会社にかかる業務委託費用は、主に建物や設備の維持管理、入居者募集、入居者対応、諸費用管理があり、それぞれの業務内容を把握することで内訳への理解が深まります。
また、業務委託費用の相場を気にしつつも、それぞれの業務が委託をした管理会社で確実に行われるかどうかチェックをするようにしましょう。
正しく物件管理をしてもらえれば所有者の方は物件運営に時間を割くことができ、副業の方なら本業に影響しないように賃貸運営ができます。
賃貸管理会社を選ぶ際にはその会社の得意分野をしっかりと確かめ、特に入居者募集の力量は十分に見極めるようにしたいところです。
もし力量に不足があるようなら、入居者募集だけ他の仲介会社に任せることも検討しましょう。
安心して物件管理を委託できる賃貸管理会社は、投資の利回りを高めるための心強いサポーターとなります。しっかりと協力してもらい不動産投資を成功に導きましょう。
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