不動産投資物件の賃貸管理会社の見積書が高いと、不満を感じている投資家の方もいると思います。特に不動産投資を始めたばかりの方にとって管理会社の業務は不透明であり、割高に感じるのも当然かもしれません。
そこで今回は賃貸管理会社からの見積もりが高い理由と、その対策を詳しくお伝えしたいと思います。さらに見積書を安くする方法や、見積書が不当に高い管理会社の見分け方なども解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
賃貸管理会社からの見積書は2種類
賃貸管理会社から出される見積書には、大きく分けて2つの業務についてのものがあります。
1つは入居者に対する管理業務委託費で、新たな入居者の募集、家賃の集金や未払いへの督促、賃貸契約や更新の手続き、入居者からのクレーム対応、入居や退去の立会いなどです。
もう1つは建物の維持管理業務で、日常的な清掃や故障の修理、入居者が退室した後の原状回復やクリーニング、定期的な点検や建物維持のための修繕などです。
いずれの業務でも高いと感じる見積書が出てくることがありますが、それぞれ理由が異なるためどちらの業務について高いと感じているか把握した上で読み進めていただきたいと思います。
管理業務委託費の見積書が高い理由
入居者に対する管理業務委託費が高い理由については、主に次の二つの理由が考えられます。
比較をしていないので高くなる
所有者の方の中には、物件購入時に仲介会社から斡旋された管理会社に任せている、という方もいると思います。その際に他の管理会社を比較していないと、提示された管理業務委託費の見積書のまま契約することになり、特に投資経験の少ない方は相場をご存じないため、割高な金額になっている可能性があります。
複数の会社を比較することは見積書が高くなることを防ぐ大前提であり、もし比べることをせずに契約をしているなら一度他社の費用を調べることをおすすめします。
業務委託の内容が多いと高くなる
入居者の管理業務において委託の内容が多く管理会社の負担が大きいと、見積書の金額が高くなることがあります。
たとえば、家賃滞納者や入居者からのクレームが多い物件は、管理会社の取られる時間や手間の負担が大きく、費用が割増になることがあります。
これらの対応は慣れた管理会社でも時間外の対応を迫られたり何度も連絡したりと、実際に行っている作業を知ると見積書が決して割高ではないと理解できるケースもあります。
特に家賃の安い賃貸物件は滞納やクレーム、入居者同士のトラブルが多い傾向があるため、もし見積書を高く感じるようなら対応の実情を管理会社に確認してみると良いでしょう。
建物維持管理業務の見積書が高い理由
次に建物維持管理業務の見積書が高い理由としては、次の3つが考えられます。
古い建物の修理費は高くなりがち
築年数が経った古い建物ほど、修理費用は高くなる傾向があります。
たとえば、外壁塗装では古く傷んだ外壁へそのまま塗料を塗ると、表層の剥がれや割れが発生する恐れがあるため、塗装前に補修する必要があり費用も高くなります。
また、階段や廊下の手すりの修理では、築年数が新しければ部分的な塗装などの補修で済みますが、老朽化が進んでいると交換になるためやはり費用は高くなります。
古い建物の修理費は手間や材料費が余計にかかるため、見積書が高くなることを理解しておきましょう。
念入りな修理をするため高くなる
管理会社は建物の修理を入念に行う傾向があり、その結果費用が高くなることがあります。
特に入居者からのクレームで修理する際は再度苦情が来ることを避けたいと考え、時には必要以上の修理をしてしまうのです。
たとえば、給湯器が故障して部品交換で済むような修理であっても、再発を避けるために丸ごと新しいものに交換してしまうなどです。
他にもエアコンなど入居者の日常生活の利便性に直結するような設備機器は、不具合があるとすぐに入居者からクレームが入るため念入りな修理になりがちです。
このような修理対応が頻繁に行われるようであれば、見積書が高く感じられるのは当然と言えるでしょう。
経費の上乗せがある
日常的な修理から大規模な修繕まで、建物の工事に関する見積書には管理会社の経費が上乗せされています。実際には建物状態の確認から、業者への見積り手配と内容の確認など手間がかかるために当然と言えます。
自主管理をする所有者の方から工事金額を伝え聞き割高と感じる方もいますが、こうした手間や工事業者を探たり交渉したりする作業、必要となる経験値を考えれば、管理会社の経費は簡単に削れるものではありません。
建物所有の経験が少なく修理などの建物工事に関する知識が少ない方は、修理の手配ミスなどによる損失を防ぐためにも、管理会社に任せた方が安心だと言えるでしょう。
管理会社の見積書を安くする方法
それでは管理会社の見積書を安くするにはどのような方法があるのか、具体的にご紹介したいと思います。
複数業者を比較する
管理会社の見積書を安くする方法として最初に検討したいのが、複数業者を比較することです。
複数の管理会社の金額を知らなければ、今の管理会社の見積書が高いのか安いのか判断できませんし、もし適切な価格であるとわかれば納得して管理を任せられます。また、他に安い管理会社があることがわかれば、現在の管理会社に対して金額の交渉をする材料にもなるでしょう。
同時に委託する業務内容もしっかりと確認するようにすれば、同じ金額でも中身の濃い契約内容にすることもできるかもしれません。
複数業者を比較することは現在の契約条件を良くしたり、他により良い業者を見つけ乗り換えを検討したりすることにも役立ちますので、ぜひ積極的に行うようにしましょう。
自分で業者などを手配する
管理会社の見積もりを安くする2つ目の方法は、修理業者や清掃業者、部屋の退去後のクリーニング業者などを自分で手配するということです。
経験や知識が無いと不安に思うかもしれませんが、クリーニング業者や清掃業者への依頼はそれほど難しい作業ではなく、何度か行えばすぐに慣れてしまうでしょう。
これらは高額な業務ではありませんが定期的に継続して行われるため、管理会社の経費がわずかでもカットできれば長く積み重なりコスト削減につながります。
ただし建物の修理に関してはある程度の建築知識を必要とし、安易に所有者の方が直接業者を手配するというのは得策ではありません。
故障の程度によって適切な修理内容は変わりますし、金額だけで判断してその場しのぎの修理をしてもさらに悪化させてしまう恐れもあります。
特に入居者の利便性に関わるような部分であれば早急な対応が必要で、十分に工事手配に慣れていないと苦情の原因となります。
自分で業者を手配することはその工事内容を冷静に判断できれば、見積書の金額を安くする効果が期待できるでしょう。
火災保険の利用を検討する
見積書を直接安くする方法とは少し異なりますが、出費を抑えるという意味で火災保険の利用を検討してみるのもおすすめです。
火災保険というと火事の時に利用するものと思いがちですが、他にも落雷や台風、大雪など自然災害による建物被害でも利用できることがあります。たとえば雨樋が大雪で曲がってしまったり、屋根が台風で破損してしまったりといった被害です。
経年劣化による損傷は除かれたり修理金額の制限があったりと、利用に関しては一定の条件がありますが、適用になれば保険金によって修理費が補償されるのです。もし該当しそうな損傷があれば火災保険を利用できないか、管理会社に確認をしてもらうと良いでしょう。
見積書が不当に高い管理会社の特徴
管理会社の中には残念ながら見積書の金額が相場よりも不当に高いところもあります。
ここではそういった管理会社の見分け方を解説します。
費用の追加項目が多い
入居者の管理業務委託費は、一般的に家賃の5%前後と掛け率で費用が決まっているのですが、それ以外にシステム利用料や契約更新時の手数料など追加費用が発生する管理会社もあります。
他にも時間外対応費やクレーム対応費など別途費用が必要になり、積み重なることで最終的に相場よりも高い金額になってしまう管理会社もあります。
これは特に掛け率の低い管理会社で見られる傾向で、掛け率の低さで目を引こうという意図がうかがえます。
もちろん業務内容の質が高ければ構いませんが、業務レベルが平均かそれ以下で行なわれているようなら、不当に金額の高い管理会社となります。
こうした相手を見抜く意味でも、複数業者の見積もりを取る価値はあると言って良いでしょう。
工事が一式出しの見積書になっている
部屋のクリーニングに始まり原状回復工事や、建物全体の修理や点検、大規模修繕など、工事見積書が一式出しになっている管理会社は、その見積書の金額が不当に高い可能性があります。
一式出しとは、工事金額の内容が使う材料の品名や数量、作業工賃をしっかりと記載せず、まとめて「一式〇〇万円」という表記になっている見積書の出し方です。
これは業者から上がってきた見積もりに経費を上乗せだけして見積書を作っている可能性があり、その見積もり内容を管理会社が確かめておらず、割高な金額になっていることが考えられます。
また、一式出しではどのような材料を使いどのような工事をするかが明確ではなく、妥当な金額かどうか判断できません。
このような見積書は必ず管理会社へその内容を確認し、明確な返答が得られない場合は不当に高い見積書になっていることを疑っても良いでしょう。
物件の状況を把握していない
修理の見積書を作成しても、実際の物件状況を全く確認していない管理会社もあるので注意しましょう。
実際の修理箇所を確認しなければ、修理業者から上がってきた見積書が妥当かどうか分かりません。
また、業者とすれば状況を確認されずに見積もりが通るのであれば、余計な費用を上乗せして見積書を作ってしまおうと考えるかもしれません。
そういった仕事をさせないために管理会社はあるわけですから、実際の物件状況を見ずに見積もりだけ送ってくるというのは論外と言えます。
見積書を受け取った時はその内容を管理会社にしっかりと説明してもらい、現場状況を見た上で内容をチェックしているか確かめるようにしましょう。
利回りを高めるためにかけるべき費用
投資物件の利回りを高めるために、管理業務の委託費や修理費は極力削るべきだという意見を見かけることがあります。
しかし、それらの費用をカットすることで逆に投資物件の利回りを下げてしまいかねない部分があります。
最後に削るべきではない見積書の中の費用をご紹介します。
新たな入居者募集の費用
1つ目の削るべきでない管理会社の費用は、新たな入居者募集の費用です。
たとえば、物件情報サイトに掲載するための費用や広告、チラシなどを打つ費用、あるいは現地に昇り旗を立てたり看板を掲げたりする費用などがこれにあたります。
今の入居希望者はネットで情報を探すことが大半で広告やチラシなどは無駄だと削ろうとする方もいます。
しかし物件タイプや入居者の層によっては、広告やチラシから問い合わせをする方が一定数いるため、必ずしも広告やチラシが無駄とは言い切れません。
また物件現地の昇り旗や看板も賃貸物件が多く建っている地域であれば、他の物件を見に来た人の目にとまり問い合わせにつながることもあります。
空室を減らすことは賃貸投資において生命線であり、小さくても地道な宣伝活動によって空室が回避される点は軽視すべきではありません。新たな入居者募集の費用は極力削らないようにしましょう。
適切な建物修繕の費用
削るべきではない管理会社の費用の2つ目は、建物の適切な修繕の費用です。
建物の修繕費には、すぐに直すべき緊急なものと、将来の劣化や損傷を防ぐための予防的なものがあります。
後者の予防的な修繕費は、いずれ売却するという考えから積極的に行わない所有者の方も多く、確かに物件を所有する予定期間によって判断の分かれるところです。
しかし、物件が古ければ突然破損をして高額な修理費が必要となり、投資の資金計画に大きな影響を与えることが考えられます。
たとえば、雨漏りが発生すれば建物の修繕費はもちろん、入居者の家財などに被害が及びそれも補償するケースも考えられ、多額な損失が発生してしまいます。
建物の状態をしっかりと確認し管理会社と相談しながら、適切な修繕の費用はかけるようにしましょう。
物件の需要を回復するリフォーム費用
最後に削るべきでない管理会社の費用としてお伝えしたいのは、物件の需要を回復するリフォームの費用です。
家賃の値下げを回避しつつできるだけ空室を避けるには、建物を入居者の需要に応える最低限健全な状態にしておく必要があるからです。
あまりにも見た目が悪かったり設備が老朽化していたりすると、新しい入居者に敬遠されるだけでなく既存の入居者にも退去されてしまう可能性が高まります。
リフォームは部屋数によっては大きな出費となるため、売却時期が近いのであれば見送っても良いかもしれません。
しかししばらくの期間所有するつもりであれば、建物の状態を回復するリフォームを行い選ばれる物件にする費用はかけるべきでしょう。
管理会社から提案されるリフォームの計画があれば、その内容をしっかりと検討してみることをおすすめします。
まとめ
賃貸管理会社の見積もりが高い理由は、業務委託費では他の管理会社と比較していないことが原因と考えられます。
また管理を任せている物件の業務内容が、手間や時間がかかっていることで高くなっているケースもあります。
建物維持管理費では築年数が経った傷みの多い物件では修理の費用が高めで、さらに管理会社によって入念な修理が行われるため高くなりがちです。
いずれも他の複数の業者と見積書を比較したり、自分で業者手配したりすることで安くできる可能性があるため、検討してみても良いでしょう。
また、管理業者の中には元から不当に見積もりが高いところもあるため、追加項目が多くないかや一式出しの見積書になっていないかなどを確かめることも大切です。
新たな入居者募集の費用や、適切な建物修繕費、リフォーム費などは、物件の利回りを高める効果が期待できるため適切に予算を充て、投資物件の収益性を向上させるようにしましょう。
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