不動産投資の賃貸アパート建築費は、投資初心者の方には適正価格がわかりにくく、しかもどのような工事項目があるかも不透明だと思います。
そこで今回は賃貸アパートの建築費の適正相場と、どのような工事の項目が含まれるかを詳しく解説したいと思います。
また、建築費を安く抑えるための4つの方法もご紹介していますので、賃貸アパート建築の参考にぜひ最後までご覧になってください。
賃貸アパート建築費の適正価格
賃貸アパートの建築費は坪単価と呼ばれる単位で表されます。
坪単価とは畳2枚分の広さである1坪を単位とした価格の目安で、これを計画している建物の坪数にかけてあげると、おおよその総額がわかります。
ここではその坪単価相場と、建物の区分けの基本となる工法について解説します。
工法ごとの坪単価相場
賃貸アパートの建築費は坪単価で表すことができますが、建物の工法ごとに価格帯が異なります。
工法とは建物の骨組みの作り方や種類によって、主に3つに分けられています。
①木造
木造は木製の柱やパネルなどを組み合わせて作る建物の構造です。
依頼先は工務店クラスからハウスメーカーまで多岐にわたり、コストを抑えやすく利回りが出やすい工法になっています。
建物規模にもよりますが、工期はおおむね3ヶ月から半年程度になります。
②軽量鉄骨
軽量鉄骨は厚さ6mm未満の鋼材を筒状にした柱で作られる構造で、主要な材料は工場で生産され現場で組み立てる工法です。
そのため工期が比較的早く、木造に比べ若干費用はかかりますが利益発生が早いと言うメリットがあります。
また工場で組み立てもある程度まで行うこともあり、現場作業が少なく建築精度が高いという特徴もあります。
③鉄筋コンクリート
鉄筋コンクリートで鉄筋を埋め込んだコンクリートの柱で建物を作っていきます。
高層の建物で強度を保つことができる工法で、主にマンションなどで用いられます。
コストが比較的高く、工期も前出の2つの工法よりも長くかかります。
工法 | 坪単価相場 | 適した建物 |
木造 | 50〜70万円 | 2〜3階建て向き |
軽量鉄骨 | 60〜80万円 | 2〜4階建て向き |
鉄筋コンクリート | 80〜100万円 | マンション向き |
木造と軽量鉄骨に大きな性能差はない
建物の防音性や耐震性、耐火性においては両者に大きな違いはありません。
木造アパートと聞くと華奢であったり、火事に弱かったりするイメージを持つ方がいるかもしれません。
しかし、近年の木造は十分に耐震性が配慮され、また耐火性の高い外壁や内装材を使うため火事において不利ということもありません。
特にハウスメーカーが提供する木造アパートはデザイン性も高く、外見上で木造と判断できる方は少ないでしょう。
逆に軽量鉄骨では、戸建住宅なら大きな窓が取りやすいなどのメリットがありますが、アパートでは木造との大きな差はないと言って良いでしょう。
工法によって融資期間が異なる
しかし不動産投資という面で見ると、選ぶ工法によって融資期間が異なると言う点には注意が必要です。
銀行は建物の法定耐用年数をもとに融資期間を決めるのですが、工法によってこの法定耐用年数が異なるため、結果的に融資期間も違うことになります。
つまり価格面で工法を選ぶのも一つの基準ですが、計画する融資期間で工法を選ぶという考え方もできることになります。
・工法別の法定耐用年数
工法 | 木造 | 鉄骨造 | 鉄筋コンクリート造 |
法定耐用年数 | 22年 | 34年 | 47年 |
坪単価に含まれる工事
アパートの建築費は坪単価が目安になりますが、比較する際はこの坪単価の中にどこまでの工事が含まれているかを、しっかりと把握しておく必要があります。
一般的には坪単価に建物本体工事と呼ばれる、以下のものが含まれています。
本体工事の代表的なもの
・構造部分:柱、壁、床、外壁、屋根、基礎
・サッシ類:ドア、窓
・内装:壁、壁紙、建具、収納
・水回り:キッチン、浴室、トイレ、洗面所、給排水管
・電気工事:照明器具、スイッチ、コンセント、各配線、テレビアンテナ、空調
坪単価に含まれない工事
一方で物件の計画やプラン、敷地条件予算などによって変化が大きいものは付帯工事と呼ばれ、坪単価に含まれず打ち合わせの際に都度、別途計上されます。
つまり坪単価×坪数で算出した金額以外にも、以下の付帯工事費が加わることになるためご注意ください。
費用の目安は物件の計画や立地条件によっても異なりますが、総費用全体の20%程度となります。
坪単価に含まれない主な工事
・水道給排水
・ガス工事
・電気引込工事
・地盤改良工事
・解体工事
・整地工事
・駐車場工事
・外構工事(アプローチや植栽など)
・サイクルポート
・消火設備
※建築会社によっては坪単価に含まれる工事もあります。
建物工事以外でかかる費用
アパートを建てるには、本体工事費や付帯工事費以外に、諸費用が必要になります。
1つずつは数万円から数十万円とそれほど高額ではありませんが、積み重なると大きな金額になりますので、しっかりと事前に把握をしておきましょう。
費用の目安としては、総費用全体の10%程度となります。
・測量費用
・地盤調査費用
・契約書印紙代
・設計料
・水道負担金
・火災保険料
・建物登記費用
・不動産取得税
・融資手数料
・保証料
・抵当権設定費用
・入居者募集費用
敷地面積での概算方法
坪単価を建物面積にかければ大まかな費用が出るとお伝えしましたが、まだ具体的な建物プランが定まらず建物坪数が不明な場合もあると思います。
その際は敷地面積から建物面積を概算で出し、坪単価をかけておおよそ建築費を出す方法もあります。
たとえばアパートを計画している敷地面積が50坪で、敷地に建築できる建物延床面積の制限である容積率が、100%であったとします。
この場合なら50坪×100%で延床面積50坪のアパートが建てられることになり、この50坪に前述の坪単価をかけるとおおよその建築費が予想できます。
ただしこれは小さな敷地いっぱいに建てることの多い、都心などのアパートで可能な概算方法です。
敷地にゆとりがあるケースや、駐車場も敷地内に確保するケースでは使えませんし、テナントを入れたアパートや事務所併用の物件などでは当てはまりませんのでご注意ください。
発注方式で費用は異なる
アパートに限らず建築を行う場合に、設計と施工をどのように発注するかを区別する発注方式と呼ばれるものです。
これには設計と施工を一緒に依頼する設計施工一環と、設計と施工を異なる会社に依頼する設計施工分離の2つの方式があります。
このうち設計施工一環は設計料が工事費の1〜3%程度となって建築費を抑えることができ、アパートの建築をハウスメーカーに依頼をするとこの方式になります。
設計施工分離では設計を建築事務所や設計事務所へ、施工を建築会社や工務店に依頼します。
この場合は利益が分割され一貫よりも一社の利益が減ること、会社が別のためやり取りなどの手間が増えることもあり、設計料は工事費の7〜8%と高めの相場となります。
設計施工分離を選ぶメリットは、設計をする側が施工管理も行うため、施工する会社と利害関係がなく厳しく管理をしてくれるという点が挙げられます。
また、個性的な建築を希望するために特定の建築士に設計を依頼したいという場合も設計施工分離となります。
しかし現実にはコストのメリットが大きい、設計施工一環になることが大半となっています。
ハウスメーカーと建築会社の建築費
アパートの建築を依頼する相手としては、ハウスメーカーと建築会社という選択肢があります。
建築費の面で見るとハウスメーカーの方が比較的安く、建築会社に依頼すると割高になることが多くなります。
ハウスメーカーのアパートはプレハブと呼ばれ、事前に工場で材料を大量生産し現場での作業を極力少なくしています。
このため材料費、工事費ともに安く抑えることができて工期も早く、しっかり管理された工場生産であるため品質も高い建物になります。
これは工法が木造であっても鉄骨であっても、ハウスメーカーであれば同様です。
一方で工場を持たず現場作業も多い建築会社は、工事費はどうしても割高になってしまいます。
しかし、個性的でオリジナルな建物を作りたい場合には、柔軟な対応ができる建築会社の方が適しています。
市場的にはハウスメーカーのシェアが高い状態ですが、一定の根強い需要を持つ建築会社も存在します。
コストパフォーマンスで言えばハウスメーカーが優位ですが、依頼主の方の計画によっては建築会社の価格が適正な場合もあると言えるでしょう。
建築費を安く抑える4つの方法
建築費を安く抑えられれば、投資した資金を早い時期に回収でき収支を黒字に変えることができます。
初期投資を抑えることは高い利回りを狙う上で近道になりますので、ここでは建築費を安く抑える4つの方法をご紹介します。
複数社で見積もり比較
建築費を安く抑える1つ目の方法は、複数の会社で見積もりを取り比較することです。
複数の見積もりを比較することで、計画する建物の費用の総額を知ることができ、割高な建築会社を見分けることができます。
もちろんその価格に価値を見出せれば良いのですが、同じ条件で金額のみが高いのであれば候補から外したり価格の交渉をしたりすることでできます。
また複数社で検討していることを各社に伝えることで、競合を生み価格を抑える努力を自然としてもらえることになります。
もちろん品質が落として価格が安くしていないか、しっかりと見分ける必要はありますが、その意味でも同じ条件で複数の会社から見積もりを取ることは有効です。
さまざまな提案を受け知識が増やせるなどのメリットもありますので、初心者の方ほど複数社から見積もりを取って比較してみることをお勧めします。
間取りや設備で調整
建築費を安く抑える2つ目の方法は、間取りや設備で調整することです。
建物は凝った間取りや個性的なデザインにすると、材料費や建築の工賃が高くなり工事費が高くなる傾向があります。
また設備も高機能なものや特殊なものを付ければ、当然その価格もかかることになります。
さらに内装も見栄えがするものや質感が高いものを選べば、やはり材料費が高額になってしまいます。
個性的にしたり良いものを選んだりすれば、たしかに印象は良くなるかもしれませんが、必ずしも需要にマッチして費用をかけた分の見返りがあるとは限りません。
味気ない話に聞こえるかもしれませんが、間取りや設備、内装などはスタンダードなものにした方が、コストが抑えられ幅広い入居者のニーズに応えられます。
そして結果的に堅実な入居者を維持でき、高い利益を生み出す可能性があるのです。
間取りや設備で調整するといっても大げさな策を打つ必要はなく、物件運営に慣れるまでは失敗の少ない標準的な建物にする方がリスクは少ないと言えるでしょう。
ターゲット層で建築費を抑える
アパートの建築では、ターゲットとする入居者層によっても建築費を抑える事は可能です。
たとえば同じ延床面積のアパートを建てたとしても、1Kの間取りで単身者をターゲットとした場合と、3LDKでファミリー層をターゲットとした場合では建築費が異なるからです。
同じ面積なら3LDKよりも1Kの方が面積は小さくなるため、より多くの部屋数を取ることができます。
そして部屋数が多い分、キッチンや浴室、トイレなど費用のかかる水回り設備を多く設置することになり、建築費は1Kの間取りにしたアパートの方が3LDKよりも高額になります。
この違いで言えば建築費を抑えるには3LDKで考えた方が良いと言うことになります。
しかし、入居者数で考えると1Kのアパートの方が多くなり、多少家賃は下がりますが頭数の多い1Kの方が家賃収入の総額は多くなる傾向があります。
つまり3LDKで建てた方が建築費は抑えられますが、稼働させた後の利回りは必ずしも建築費を安く抑えられた方が良いとは言い切れないのです。
賃貸運営は結局のところ利回りの高さですから、必ずしも建築費を安くすることにこだわり過ぎないほうがいいという、良い一例と言えるでしょう。
工法で費用を抑える
冒頭でもお伝えしたように建物は工法によって価格が変わってきます。
坪単価だけで見るとわずかな差のように見えますが、建物の規模が大きくなればかける坪数が増えますので、意外に大きな金額差が生まれます。
この点で言えば木造が最も建築費を抑えられるため、なるべく低価格でアパートを建てるなら木造がお勧めとなります。
しかし既に触れたように法定耐用年数が軽量鉄骨の方が長いため、不動産投資で重要な出口戦略での売却価値を考えると、必ずしも木造が高い利回りを生むとは限りません。
先ほどの間取りもそうですが、あまり建築時の費用ばかりに目を向けてしまうと、最終的なゴールである売却時の成果を生みにくくなることもあるのです。
逆に軽量鉄骨を選べば最終的なプラスになるのかと言えば必ずしもそうではなく、賃貸需要や空室対策、補修費などの維持管理と、トータルで計画していくことが利益を生むということを忘れないようにしましょう。
まとめ
賃貸アパートの建築費は工法ごとの坪単価によって把握することができます。
アパートでは木造か軽量鉄骨が工法の選択肢となりますが、差し当たっての建築費を抑えるなら木造が適しています。
しかし建築費を検討する際は、どこまでの費用が坪単価に含まれていることを確かめることが大切です。
また工法によって法定耐用年数が異なるため、融資の可能となる返済期間が異なる点も注意をしたいところです。
建築費を抑える方法としては、複数社で見積もり比較、間取りや設備で削減、ターゲット層、工法などの方法がありますが、必ずしも建築費用を抑えることが投資のプラスを生むわけではありません。
不動産投資はその途中やゴールである売却時の戦略もとても大切です。
ぜひ建築費を抑えつつもトータルで高い利回りが得られるよう、広い視野で運営をしていただきたいと思います。
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