不動産投資で注目される戸建て賃貸はしっかりと収益性を上げるポイントを押さえて建築し、建築費を削るだけでなく賃貸であることを考慮したコストバランスが大切です。
そこで今回は戸建て賃貸の収益性を上げるために注意しておきたい建築のポイントを詳しく解説します。
また建築費相場や戸建賃貸で注目されるメリットなども併せて紹介していますので、ぜひ最後までご覧になってください。
収益性を高める戸建て建築とは
戸建ての賃貸で収益性を上げるために建築時に行っておきたいポイントを3つ紹介します。
アパートやマンションのような集合住宅と異なる部分もありますので、その違いにもぜひ注目してください。
日当たりのいいリビング
戸建てに限らず多くの方が長い時間を過ごすリビングの日当たりはとても重視します。
もし日当たりが悪ければ内見に訪れた時のイメージが悪く入居してもらいにくくなり、さらに住んでからも暗く寒い部屋になるため転居されやすくなってしまいます。
このため建築する際はできるだけ日当たりを良くする必要があり、南向きにするのはもちろんなるべく窓を大きくして光が少しでも多く入るように工夫しましょう。
また南から見て南北に縦長なリビングより東西に横長なリビングの方が、南向きの窓面積を取りやすく部屋にまんべんなく光が入ります。
入居を検討している人に良い印象を持ってもらったり、住んだ人が快適に過ごせたりするよう日当たりの良いリビングを計画しましょう。
シンプルな間取りとデザイン
いくら快適に過ごせる建物だとしても建築費があまりに高すぎては収益性が上がりません。
投資した費用をいかに家賃で早く回収し収支をプラスにするかは収益性アップの大きなポイントです。そのため建築費が高すぎれば初期投資の回収に時間がかかってしまいます。
建築費を抑えるのに一番効果的なのは、間取りやデザインを極力シンプルにすることです。
凝った間取りや目を引くデザインは入居者を集めやすくなりますが、建てる際の工事費や材料費がかかりがちです。
また個性的な建物を求める方は相対的に少なく、無難でシンプルな間取りとデザインにした方が空室を防ぎやすくなります。
建築費を抑えるために工事費の安い建築業者を探す方もいますが、仕上がりが悪かったり建物の傷みが早かったりして長期的に見ると収益性が高まることにはなりません。
まずはシンプルな間取りとデザインでプランニングして収益性を見通し、その上で各社の見積りを比較すると良いでしょう。
コンパクトな戸建てが有利
戸建て賃貸は需要に合った間取りにした上で、できるだけコンパクトにした方が収益性が高まります。
コンパクトであればそれだけ建築費を抑えられ、さらに固定資産税や将来的なメンテナンス費用も安く済むからです。
借りる人は自宅と違いあくまで賃貸であるため、それほど大きな間取りを求めない傾向があります。
また家賃は面積に応じて決まるものではなく、間取りが満たされていれば例えコンパクトでも大きく家賃を下げる必要はありません。
極端な例ですが25坪の戸建て賃貸の家賃が50坪の戸建て賃貸の半額になることはなく、ファミリー世帯が入居できれば周辺の相場に準じた家賃設定が可能です。
このためできる限り建築費を抑えられ維持費も安くなるコンパクトな戸建の方が収益性は有利になるのです。
建築費が収益性を左右する
建築費を抑えることは収益性のアップに確かに役立ちますが、あまり抑えすぎて品質が悪くなると劣化が早まり大掛かりな補修費用がかかってしまいます。
そこでまずは適切な戸建て賃貸の坪単価相場を知り、その上で費用を削りすぎないように注意しながら建築業者と交渉することが大切です。
戸建て賃貸の坪単価相場
戸建て賃貸の工法ごとの坪単価相場は以下のようになっています。工法とは建物の骨組の材質で、主に木造とツーバイフォーと軽量鉄骨があります。
木造は古来から日本にある工法で木の柱を使い、依頼先も大手から地場工務店まで豊富に存在します。
ツーバイフォーはアメリカから入ってきた工法で、パネルを組み上げて家を作っていきます。
軽量鉄骨は鉄の骨組を使い、精度が高く短期工事が得意な工法です。
工法ごとにメリット・デメリットがあるため投資計画に応じて選ぶことになります。各工法については以下の記事で詳しく解説していますので、参考にぜひご覧になってください。
不動産投資の戸建て賃貸の建築費は?適正価格や利回りを徹底解説!
http://fudosan-archi.com/2020/10/21/reasonable-price-and-yield/
工法 | 坪単価相場 |
木造 | 50万円前後 |
ツーバイフォー | 45万円前後 |
軽量鉄骨 | 55万円前後 |
この後解説していますが坪単価はあくまで建物本体のみの費用であり、これ以外にも追加費用がかかるため注意をしてください。
坪単価に影響の大きい部分
これから紹介する建築部分は坪単価に影響が大きく、使う材料によって費用を抑え収益性を高めることができます。
建築に不慣れな方は建築会社を変えて一気にコストダウンする方法を選びがちですが、手間はかかっても工事項目を一つずつ確認しながら部材を選び、小さな額のコストダウンを積み重ねた方が耐久性を落とさず費用を抑えられます。
以下を参考にぜひ適切なコストダウンを行ってください。
外壁や屋根材
外壁や屋根に使う材料は建築費の中で非常に大きなウエイトを占めています。それぞれのグレードを1ランク変えるだけでも、合計で100万円以上値段が下がることも珍しくありません。
ただし多くの建材は金額と耐久性が比例するため、グレードを落とす際は慎重に耐用年数などを確かめながら選ぶことが大切です。
・屋根材
屋根材では従来からある陶器瓦は耐久性が高いのですが、費用が高額で賃貸に使う材料としては割高と言えます。
スレートは需要が落ち気味で市場在庫がだぶついているため、破格の安さで提案してくる建築会社もあります。しかし10年を超えたあたりでひび割れや変色が起き外観が悪化する恐れがあります。
近年はコストが抑えめで耐久性が比較的長いガルバリウム鋼板のような金属屋根が主流になりつつあります。
・外壁材
外壁はサイディングなどのセメント系材料が主流ですが、表面の塗装が安価だと10年超で汚れや変色が目立つようになり再塗装の可能性があります。
こちらも前述のガルバリウム鋼板を使った外壁材があり、費用は若干かかりますが長期的な補修費を抑えられます。
このように屋根材や外壁材は初期費用と耐久性、そして物件をどれくらい所有する予定かを考慮しながら選ぶと収益性を上げられます。
ただし一般の方には判断が難しい部分のため、建築士事務所や建築に明るいコンサルタントなどに相談しながら選ぶと安心でしょう。
設備のグレード
戸建ての設備の中で特に金額がかかるのがキッチンや浴室で、さらに
エアコンも各部屋に付けると相応の金額になります。
キッチンや浴室はグレードを変えるだけで数十万円単位のコストカットができ、しかもグレードを下げても耐久性が大きく落ちる心配がなく必要な機能も備わるため、積極的に検討したい部分です。
ただしまれに名前を聞かない海外製キッチンが格安で流通していることがあり、国産に比べ耐久性が低くアフターメンテナンスも不十分なことが多く注意が必要です。
エアコンは特にLDKに付ける広い畳数用がグレードによる金額差が大きく、こちらも金額とグレードをしっかり確かめながら選びましょう。
設備は単体では小さな額かもしれませんが合計すると百万円単位のコストダウンにつながることもありますので、手間を惜しまずしっかり検討してみてください。
断熱性
断熱性は窓と壁の中の断熱材によって大きく変わりますが、見た目ではっきりわかる部分ではないため軽視されがちです。
しかし断熱性は入居者の住み心地につながり、あまりに低価格なものを選ぶと寒すぎたり暑すぎたりして転居を考えられてしまいます。
さらに安価な窓は結露しやすく周りにカビが生えることもあり、入居者が不快に感じて転居のきっかけになってしまうかもしれません。
窓はガラスが1枚のシングルガラスと2枚のペアガラスがあり、多少コストがかかりますがペアガラスを選んでおくと断熱性は向上し結露も軽減できます。
賃貸の断熱材はグラスウールと呼ばれる綿状のものが主流ですが、厚みや密度に種類があり値段の高い方が断熱性が高くなります。
また発泡樹脂系と呼ばれる発泡スチロールのような断熱性の高いものもあり、建物を長期間所有するつもりであれば検討しても良いでしょう。
断熱性は入居率に影響ないと思うかもしれませんが、暑い寒いが厳しければせっかく住んでもらってもすぐに退出される可能性があります。
より長く住んでもらうためにも、断熱性の良い材料を使った見積りも建築会社に作ってもらうようにしましょう。
坪単価以外にかかる費用を把握する
建築では坪単価以外にもかかる費用があり、これをしっかり把握しておかないと予算が不足したり収益性が正しく判断できなかったりします。
特に次から紹介する付帯工事と諸費用は金額が大きいため、しっかりと確認するようにしましょう。
付帯工事
付帯工事は建物本体以外に行う工事になり、土地を整地したりライフラインを整備したりします。
主に以下のような工事がありますがいずれも大きな金額になる可能性が高いため、見積りを依頼する際は必ず含めてもらうようにしましょう。
・給排水工事
・ガス工事
・電気引込工事
・地盤改良工事
・整地工事
・駐車場工事
・外構工事(アプローチや植栽など)
※建築業者によっては坪単価に含まれるものもあります。
諸費用
諸費用は建築の申請をしたり融資を受けたりするために必要な費用です。
主に以下のようなものがありそれぞれは大きな金額ではありませんが、必ずかかる費用ですので漏れがないように注意しましょう。
・設計料
・登記費用
・火災保険料、地震保険料
・不動産取得税
・融資諸費用
・入居者募集費用
付帯工事や諸費用については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧になってください。
「不動産投資で賃貸物件の建築費相場と内訳を知り高利回りを実現する」
http://fudosan-archi.com/2021/01/06/rental-property-construction-cost-market/
施工会社による金額の違い
戸建て工事をする施工会社は主にハウスメーカーと工務店がありますが、建築費が異なるためその選択によっては収益性に影響する可能性があります。
ただし金額以外にも大きな違いがあるため、しっかり理解した上で選択する必要もあります。
・ハウスメーカー
ハウスメーカーは工務店に比べ金額はかかりますが品質が高く工期も短めで、企画プランを選べば打ち合わせ時間も短くて済みます。
またアフターサービスは迅速なところが多く、入居者からのクレームを抑えやすくなります。
・工務店
工務店は予算に合わせて建物の仕様や設備を調整してくれるため、価格を抑えたい場合は魅力的な依頼先です。
ただし品質は依頼する工務店によって幅があり値段を落とすと品質も下がりやすく、ハウスメーカーに比べ会社の資本力が小さいため倒産しやすいなどの注意点があります。
また引き渡し後のアフターメンテナンスは規模の小さい工務店ほど対応が遅れがちで、入居者からのクレームが増えたりそれを理由とした転居が起きたりする可能性もあります。
さらに建築した会社がなくなっていればメンテナンスなどは自分で手配することになります。
建築の依頼先は金額が違うため収益性に影響しますが、アフターメンテナンスを含めた工事品質も異なるため十分に検討した上で選ぶようにしましょう。
戸建て賃貸が注目される理由
ここからは戸建て賃貸が注目される理由を紹介します。そのメリットを理解したうえで自身の投資スタイルと合うかどうか判断してみてください。
競合が少ない
戸建て賃貸はアパートなどに比べて競合が少ないという大きなメリットがあります。
実際にはファミリー層の賃貸需要はあってもアパートやマンションといった集合住宅の物件が大半です。
このため「もう少し広い部屋で生活したい」「子供の声などで他の住人に迷惑をかけたくない」といった希望に応えられる戸建て賃貸は非常に少ないのが現実です。
さらにワンルーム賃貸が大半でファミリー向け賃貸自体が少ない地域もあり、需給バランスをしっかりリサーチすれば競合が少なく人気の物件にすることもできます。
戸建て物件は初期投資はかかりますが、ニーズにマッチすれば安定した収益が得られ早期の資金回収も十分可能なのです。
将来売却がしやすい
将来物件を売却することになっても戸建て賃貸は希少性があるため売却しやすく、競合が少ない地域であれば期待以上の高値で売却できる可能性もあります。
しかも賃貸物件としてだけでなく持ち家として購入する層もターゲットにできるという、アパートやマンションにない大きなメリットまで持っています。
さらには賃貸で入居している方が住み慣れてそのまま買い取るというケースもあり、売却先の広さは突出しているのです。
戸建て賃貸は希少性と売却先の層の広さから、想像以上の売却のしやすさを備えていると言えます。
物件管理がしやすい
戸建て賃貸は居住者が基本的に1世帯のため入居者対応が最小限で済み、集合住宅であるアパートやマンションに比べ物件管理がしやすいというメリットがあります。
入居している世帯数が多ければそれだけ滞納やトラブルの発生する確率が高くなり、さらに各種設備の数も多いため故障や交換の出費も多くなります。
実際は管理会社が入居者や設備などの修理対応をしますが、収支の見通しを立てるのは入居者が1組の戸建て賃貸の方がしやすいのです。
この点が投資初心者の方や副業で不動産投資を行う方に、戸建て賃貸が注目される大きな理由になっています。
地形や大きさに影響されない
戸建て賃貸は敷地を占める面積が小さいため、コンパクトな土地でも不動産投資を始めることが可能です。
さらに細長かったり折れ曲がったりしているような変地でも、戸建てなら形に応じて建築することができます。
またアパートやマンションは建物が大きく駐車場も必要なためかなりの土地の広さが必要になり、しかも建物の形を変形させることが難しいことから形も整っていないと建築が難しいのです。
様々な土地の大きさや形に柔軟に対応できる点は、戸建て賃貸の大きなメリットと言えます。
まとめ
戸建て賃貸の収益性を上げるには第一に入居者に選ばれる建物にすることが重要です。
さらに建物の費用相場を把握した上で外壁や屋根設備などを適切に選び、建築費を抑えることも収益性向上に効果があります。
また付帯工事や諸費用、建築会社による費用の違いなどもしっかり理解する必要があるでしょう。
戸建て賃貸はアパートやマンションにない大きなメリットを持っており、しっかりとターゲットと需要を見極めれば大きな収益が期待できます。
戸建て賃貸は漠然と建てるのではなく、収益性を上げるポイントをしっかり押さえながら建築するようにしてください。
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