不動産投資における大規模修繕の適正価格!相場や実施周期を詳細解説

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不動産投資における適正価格を知らないまま大規模修繕を行ってしまうと、割高な出費をすることになり物件運営に悪影響を与えてしまいます。

そこで今回は投資物件への大規模修繕の適正な価格と、実施すべき周期について詳しく解説したいと思います。

また細かな項目ごとの価格だけでなく物件全体での総費用相場や、マンション1戸あたりの平均負担額などもご紹介しており、所有される物件形態に合わせて参考にしていただけるようになっています。

大規模修繕において大切な資金から不要な出費が発生しないように、ぜひご活用ください。

 

不動産投資における大規模修繕のメリット

不動産投資における大規模修繕のメリット

具体的な適正価格をご紹介する前に、投資物件における大規模修繕のメリットを改めて、確認しておきたいと思います。

①物件価値を高めることができる

投資物件に適切な修繕工事を行うことで、その物件の価値を高めることができます。

物件の状態を健全な状態に保つことで売却時の価格設定を高めることが可能になり、さらに売却交渉時に劣化箇所を指摘され値下げを要求されることを防ぎます。

②長期的な建物修繕費を抑えられる

当然ですが大規模修繕を行えば、その後の建物の劣化や損傷を防げるため、突然建物が破損して修繕費が必要になるという事態を避けられます。

一時的には出費が必要ですが、長期的に見ると損失を事前に防げるため、決して資産がマイナスとなるわけではありません。

③入居者が集まりやすくなる

外見や建物状態が良くなるため、入居者が集まりやすいというメリットもあります。

特に築年数を経過した物件では空室が発生する確率が高いため、見た目で好印象を与えることは空室予防に大きな効果が期待できます。

また外観とともに設備の利便性を回復することで、既存の入居者が不具合を感じて退去することも防げます。

以上のように大規模修繕は、不動産投資という面でも大きなメリットがありますので、以下の適正価格と実施周期を参考に積極的に行うようにしましょう。

 

大規模修繕の主な項目と適正価格

 

それでは大規模修繕の主な項目とそれぞれの適正な価格についてお伝えします。

建物の規模や使用によって細かな工事の項目は変わってきますので、ここでは一定の規模の建物で共通して行うべき項目を取り上げています。

さらに、それぞれの項目別と併せて建物規模ごとの総額の平均もご紹介していますので、両者を見比べながら目安にしていただけると良いでしょう。

 

主な項目とそれぞれの適正価格

主な項目とそれぞれの適正価格

工事項目 適正価格 備考
外壁塗装 1万円〜1万2,000円/㎡ 補修、防水、手すり塗装を含む
給排水設備補修 300万円〜 清掃と劣化部分の交換
給水ポンプ入れ替え 150万円〜
受水槽交換 120万円〜
屋上、ベランダ床防水 5,000円〜8,000円/㎡ ウレタン塗装防水の場合
キュービクル交換(受変電設備) 400万円〜 大規模マンションでは所有者負担

工事費別途

共用部照明器具交換 300万円〜 LED照明仕様
オートロック+インターホン入れ替え 500万円〜 全戸+エントランス部
エレベーター入れ替え 200万円〜/台
自動火災報知設備交換 30万円〜/台
屋内消火栓BOX交換 30万円〜/台
機械式駐車場基部交換 150万円〜/台

※キュービクル以外は50戸規模を目安とした金額です。戸数や建物面積により適正価格は変動します。

上記工事の他にも以下のような諸費用がかかる場合があります。

項目 適正価格 備考
足場設置費用 300万円〜 外部に関わる工事で必要
産業廃棄物処理費用 50万円〜 工事内容による
建物劣化診断料 50万円〜 建物規模による
コンサルタント費用 工事総額の10%〜 大規模修繕計画の適正判断やアドバイスなど

 

建物規模ごとの適正価格

建物規模ごとの適正価格

国土交通省が行った平成29年に行った「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」では、全国で行われた過去3年間の実績を集計した、建物規模ごとの最も多い価格帯の上限額を見ることができます。

あくまで上限額なので工事内容によって変わりますが、費用を多めに考えた場合の適正価格とも言えるため、かなり現実的な参考になるのではないでしょうか。

また同一物件で行われた何回目の大規模修繕かによって分けて集計されていますので、検討される物件の回数に合わせて確かめていただくと良いでしょう。

参照:国土交通省:マンション大規模修繕工事に関する実態調査を初めて実施

https://www.mlit.go.jp/report/press/house06_hh_000154.html

http://www.mlit.go.jp/common/001234283.pdf

・1回目

マンション規模(戸数) 最多価格帯上限額(万円)
20戸以下 4,000
30戸以下 4,000
50戸以下 6,000
75戸以下 6,000
100戸以下 10,000
150戸以下 15,000
200戸以下 20,000
300戸以下 30,000

・2回目

マンション規模(戸数) 最多価格帯上限額(万円)
20戸以下 2,000
30戸以下 4,000
50戸以下 4,000
75戸以下 6,000
100戸以下 8,000
150戸以下 15,000
200戸以下 20,000
300戸以下 30,000

・3回目

マンション規模(戸数) 最多価格帯上限額(万円)
20戸以下 2,000
30戸以下 4,000
50戸以下 4,000
75戸以下 6,000
100戸以下 8,000
150戸以下 15,000
200戸以下 20,000
300戸以下 25,000

 

マンション1戸あたりの平均負担額

マンション1戸あたりの平均負担額

続いて同じ国土交通省の調査結果により、区分所有マンション1戸あたりの平均的な大規模修繕の負担額を知ることもできます。

結果としてはおおむね1戸あたりの平均負担額は100万円前後となっており、このあと解説する大規模修繕の周期から考えると、毎月集められている修繕積立金が滞りなく蓄えられていれば、大きな出費の変更は発生しないことになります。

ただし、入居者が減少したり滞納者が多かったりする物件では、積立金の値上げや追加集金、工事内容の削減などの可能性もあるため、大規模修繕が近づいてきたら積立金残高を確認する必要があるでしょう。

・1回目

マンション規模(戸数) 一戸当たりの負担額(万円)
20戸以下 200
30戸以下 133
50戸以下 120
75戸以下 80
100戸以下 100
150戸以下 100
200戸以下 100
300戸以下 100

・2回目

マンション規模(戸数) 一戸当たりの負担(万円)
20戸以下 100
30戸以下 133
50戸以下 80
75戸以下 80
100戸以下 80
150戸以下 100
200戸以下 100
300戸以下 100

 ・3回目

マンション規模(戸数) 一戸当たりの負担(万円)
20戸以下 100
30戸以下 133
50戸以下 80
75戸以下 80
100戸以下 80
150戸以下 100
200戸以下 100
300戸以下 83

 

大規模修繕の周期

大規模修繕の周期

一般的に大規模修繕の適正な周期は、周りの環境や使用状況によっても変わりますが、12年が1つの目安と言われています。

ただし、区分所有のマンションでは近年の景気低迷の影響からか、修繕積立金の不足でその周期が伸ばされている物件も多く見られます。

また、入居者の高齢化によって修繕積立金の不足だけでなく退去者の増加もあり、大規模修繕はもちろん小規模な修繕さえも行えない物件も出てきています。

さらに1棟所有であれば大規模修繕の実施はオーナーの資金計画次第ですし、区分所有の集合マンションでは所有者全体の意向によるという違いもあります。

いずれにしても12年はあくまで目安として、前回の大規模修繕からの経過年数や建物状態で実施時期を判断されることをおすすめします。

区分所有マンションであれば、さらに前回実施までの経緯を管理組合の議事録などで確かめ、大規模修繕に協力的な所有者の傾向か否かを見極めるのも良いでしょう。

 

大規模修繕に必要な期間

大規模修繕に必要な期間

大規模修繕の工事の期間は、建物規模と工事内容にもよりますが、小中規模物件だと半年から1年、大規模物件になると1年以上かかることもあります。

ただし特に注目をしておきたいのが、区分所有マンションでの大規模修繕の実施までの準備期間です。

1棟物件と違い複数の所有者の協議で詳細が決まるため、準備期間に2年3年とかかることも珍しくありません。

管理会社とも協議しながら実際に工事する内容や、予算の決定、業者の選定までを話し合いで行うため、非常に時間がかかります。

入居者への利便性に影響するのは確かに工事期間ですが、いつ行われるかも中長期的なスパンで入居者の計画に影響を与えます。

なるべく早い段階で実施時期を把握し、周知することをおすすめします。

 

小規模修繕も定期的に必要

小規模修繕も定期的に必要

大規模修繕は大きな金額がかかりますが、一方で小規模な修繕も建物状態を健全に保つために、必要なことを忘れてはいけません。

工事の額としては小さいかもしれませんが定期的に行うことで、①物件価値を高めることができる、②長期的な建物修繕費を抑えられる、③入居者が集まりやすくなる、という得られるメリットは大規模修繕と変わりません。

また金額も累積すればそれなりの出費になってきますので、年ごとに明確な計画を立てておくことが重要です。

以下に主な小規模修繕を挙げますので、定期化するための参考にしてください。

小規模修繕の主な工事と目安

修繕項目 適正価格 周期目安
居室のクリーニング 3万円〜 退去ごと
居室の復旧工事 10万円〜 2〜3年ごと
廊下やエントランス、駐車場など共用部の修繕 10万円〜 劣化に応じて随時
大型設備の定期点検 10万円〜 1〜3年程度

 

外壁・屋根・屋上の点検 5万円〜 3〜5年程度

※適正価格、周期ともに建物規模や工事内容により変動します。

 

大規模修繕実施時の注意点

ここからは大規模修繕を実施する際の主な注意点をご紹介します。

情報を集めたり管理業者からアドバイスを受けたりする際の、基本的な前提事項にもなりますので十分にご理解しておくことをおすすめします。

 

区分所有と1棟所有で異なる点

区分所有と1棟所有で異なる点

マンションなどの1部屋を所有する区分所有物件と、建物を丸ごと所有する1棟所有とでは、大規模修繕全体の予算見通しと実施のタイミングが大きく変わります。

区分所有ではあくまで管理組合での決定が優先されますので、必ずしも適正価格で行われる訳ではないことを承知しておきましょう。

実施する工事項目も同様に管理組合の合意によりますので、当初の計画とは違った実施項目になることは十分にあり得ます。

また計画されていた時期から延期されることもあり、価格や工事項目とともに管理組合での協議に目を配ることも必要でしょう。

一方で1棟所有の場合は価格や工事内容、実施時期のいずれもが、所有者の判断に任せられます。

自ら工事業者を探して交渉をすれば、適正とされる価格よりも抑えた出費で工事を行う事も可能ですし、実施する工事項目も自身の判断で行う事ができます。

ただし、建物状態を判断する建築の知識をお持ちか、その判断ができる専門家のアドバイスがないと、建物の損傷や劣化に応じた十分な工事が行えず、入居者へ不便や実害を与えてしまう恐れもあります。

1棟所有はすべての責任を所有者が負うことになりますので、より慎重な判断が必要と言えるでしょう。

 

入居者ではなく所有者が費用負担

入居者ではなく所有者が費用負担

区分所有物件でよく誤解されるのが大規模修繕費、つまり修繕積立金を支払う義務はあくまで所有者にあるという点です。

中には物件を利用している入居者が払うべきと考える方もいますが、あくまで入居者が借りているのは専有部分であり、大規模修繕は建物全体、共用部分の状態と価値を維持するために必要なものです。

このため修繕積立金はあくまで権利を所有する方に支払いの責任が生じます。

よく管理費と混同されて修繕積立金も入居者負担にしてもいいのでは?と考える方もいますが、管理費は日常的に利用する部分の維持費ですので、大規模修繕費とは意味合いが異なります。

結果的に家賃収入の中から支払うことは問題ありませんが、家賃とは別に修繕積立金を入居者に請求することは避けましょう。

 

大規模修繕では専有部分が除かれる

大規模修繕では専有部分が除かれる

分譲マンションなどの区分所有物件でもう一つ注意したいのは、大規模修繕では自己所有である専有部分の修繕は除かれることです。

たとえば照明の入れ替えは、あくまで廊下やエントランスなど共用部分の範囲になるため、自室内のものは修繕対象になっていません。

よく工事を行うなら自室の照明交換も一緒に依頼したいと考える方もいますが、工事業者はあくまで管理組合と契約していますので、個別の工事を請け負わないことがほとんどです。

1軒の希望は小さな工事だとしても、全室から要望が出れば大工事になってしまいますので、スケジュールなどで本来の大規模修繕工事に影響が出ることが考えられるからです。

ただ場合によっては、玄関ドアのインターホンのように事前に各戸の要望を聞くケースもあります。

もし、一緒に行って欲しい工事があるなら回覧や掲示板を小まめにチェックし、早い段階で管理組合へ相談をすると良いでしょう。

 

投資面で大規模修繕コストを考える

大規模修繕のコストを、不動産投資の運営上で考えるためのポイントを解説します。

中長期的に考えると大規模修繕を安価に済ませることは必ずしもメリットにはならないため、物件状況も考慮してコストを判断すべきです。

その観点から以下の2つに注意し、運営計画を立てるようにしてください。

 

コストは所有期間で判断すべき

コストは所有期間で判断すべき

まず大規模修繕にかけるコストは、今後物件を所有する期間の見通しで判断すべきです。

確かに一定の大規模修繕を行えば物件の価値は上がりますが、数年以内に売却を考えるようであれば、推奨される工事を全て行わなくて良い可能性もあります。

これは1棟物件だけではなく区分所有物件も同様で、大規模修繕の計画時期と実施見通し、修繕積立金が十分にプールされているかなどを加味して、売却を大規模修繕の前にするか後にするかが変わってきます。

大規模修繕の価格が適正かどうかも重要ですが、出口戦略を考慮した所有期間全体の中でも実施の是非を判断すべきでしょう。

 

積立金の値上げや追加費用の発生リスク

積立金の値上げや追加費用の発生リスク

自分の予算や建物状態の判断だけで費用が決められない区分所有物件は、投資運営上では特に注意が必要です。

修繕積立金の残高不足や建物の劣化状態によっては、積立金値上げや追加費用の負担請求があり得ますので、工事を実施する前から経費が膨らむというリスクがあります。

区分所有物件では仲介会社にお任せの所有者の方もいますが、あくまで投資ですので修繕積立金の残高や大規模修繕についての管理組合での協議進捗にも、目を配ることをおすすめします。

どうしても空室にならないかや目先の修繕費などに関心が向きがちですが、最終的なゴールの売却時の収支も重要ですので、区分所有物件ほど大規模修繕に注視していただくと良いでしょう。

 

まとめ

まとめ

不動産投資における大規模修繕の適正価格を知るとこで、相場から離れた高額な出費となることを防げます。

さらに大規模修繕は物件の資産価値を高め、入居者を維持することで安定的な収入にもつながります。

今回ご紹介した適正価格と周期を参考にして、物件に思わぬ損傷や劣化が発生する前に大規模修繕を実施することをおすすめします。

また、区分所有物件のように自身の判断だけで価格や工事内容、時期を決められない場合は、修繕積立金の残高や管理組合の協議進捗を知ることが大切です。

ぜひ積極的に情報収集を行い、売却時期を含めた戦略を練るようにしてください。

【記事監修】 山田 博保

株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
建築業界での経験を活かした不動産コンサルティング及び建築、不動産に関わるWEBメディアを複数運営。Facebookお友達申請大歓迎です。その他、建築や不動産、ビジネスモデル構築に関するコンテンツは公式サイトより。

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