不動産投資物件を購入するにあたり、違法建築建物ではないか心配になる方もいると思います。
しかし違法かどうかはなかなか一般の方には分かりにくく、中でも築年数の古い物件は違法建築が多く注意が必要です。
そこで今回は、違法物件の具体例や購入すべきかどうかの判断基準を詳しく解説し、トラブル回避のために役立てていただきたいと思います。
違法物件を購入するとどのようなリスクがあるかも合わせて紹介していますので、ぜひ最後までお読みください。
不動産投資物件の違法建築とは
不動産投資物件における、違法建築の代表的な例を紹介します。
容積率オーバー
違法建築で最も多いと言われるのが容積率オーバーです。
容積率とは建物の各階の面積を合計した延べ床面積が、敷地に対して占める割合です。
これが地域によって50%から200%の間で定められていますが、これを超えてしまうと違法建築になります。
比較的多いケースは建築確認申請を行ったときには1階を駐車場にする計画だった建物を、建築途中で計画変更して部屋にしてしまうものです。
駐車場は一定の面積までは容積率に含まれないのですが、2階以上で容積率いっぱいまで部屋を作っていると、駐車場を部屋に変えれば容積率オーバーになります。
当然行政の完了検査を受ければ違法が指摘されてしまうため、こうした建物は完了検査を受けずに運用を開始してしまいます。
駐車場は部屋ほどの賃料収入が得られないため、収益アップを狙って意図的に計画を変えてしまう業者もいます。
現在はこのような行為は少ないようですが、古い物件では十分あり得るため注意するようにしましょう。
採光量不足
建築基準法では部屋に応じた光の量を入れる窓の大きさを決める、有効採光面積が定められています。
有効採光面積は隣地からの距離や、軒先から窓の中心線までの高低差で定められます。
しかし実際に建築工事を始めてみたところ、隣地境界との狭さから軒先のサイズなどが現場で変更されてしまい、窓の大きさが有効採光面積を満たさず違法建築となるケースがあります。
一度施工されてしまった窓を大きくすることは現実的に困難で、是正することが難しい違法建築物件となります。
有効採光面積が違反しているかは専門的な知識を持った者でないと判断できないため、特に注意が必要です。
違法増築
10㎡を超える面積の増築には建築確認申請が必要ですが、実際には申請せずに増築している建物が存在します。
特に倉庫や会社の事務所を増築しているケースでよく見られ、貸店舗の投資物件などは注意が必要です。
マンションやアパートは、増築しようとするとライフラインの増設などもあり工事に時間がかかります。
このため発覚を恐れて意図的に行われる例は店舗に比べ少なめですが、中には通りから見えない位置で増築したりする悪質なケースもあります。
行政に発見され是正を求められれば、増築部分を撤去することになり多額の費用がかかります。
増築は外部を見れば外壁の色や古さが違っていることから、比較的一般の方にも気づきやすい部分です。
物件を見たときに気になる部分があれば、増築の有無や確認申請を行ったか必ず確認するようにしましょう。
接道義務違反
建築基準法では接道義務の定めがあり、建物を建てる敷地は幅4m(以前は2.7m)以上の道路に、2m以上接している必要があります。
そうした法律を無視して勝手に建てられた違法建築物件が、特に古い建物で見られます。
現時点で所有していることを厳しく指導されることはあまりありませんが、将来建て直しをしようとしも建築許可が下りない可能性があります。
道路が狭いだけなら、敷地と道路の境界から必要な分だけ後退して建築する「セットバック」をすれば良い場合もあります。
しかし旗竿地のような土地形状で道路に接している部分が2mも無く、物理的に接道幅が確保できない場合は建て直しができなくなります。
他の違法建築以上に是正が容易ではないため、接道が確保されているかは確実に確認するようにしましょう。
壁界不明確
隣地との境界が不明確なまま物件を購入してしまうと、隣地とトラブルになったり違法建築になったりすることがあります。
たとえば購入した後に境界確定を行い、こちらの建物が境界線を越えて隣地へ出ていることが発覚すれば、取り壊しや越境部分の土地の買取りを求められる可能性があります。
また容積率や建ぺい率のギリギリまで建築している物件で、境界確定を行ったところ土地が登記簿上より小さいことがわかれば、容積率や建ぺい率が超えている違法建築となる事態も考えられます。
土地の契約書には境界の明示義務が記載されていることが一般的で、購入前に境界確定を行うことが推奨されています。
もし境界の明示義務が記載されていないようであれば、契約は十分に注意して行うべきでしょう。
違法建築物件が抱えるリスク
違法物件を所有すること自体に違法性はないのですが、投資を進める上では大きな障害があります。
特に違法部分の是正が難しいと、運用も売却もできないという状態になりかねないため十分な注意が必要です。
融資が受けられない
一般の金融機関では融資にあたり建築確認などを元に審査が行われ、違法建築と判断されれば融資を受けることができません。
違法建築物件を購入できないためある意味安全と言えますが、厄介なのが融資を使わず現金で購入する場合です。
違法物件と知らずに購入して運用後に売却しようとしても、新たな買主は融資を利用して購入できなくなります。
売却が難しければ違法物件のまま所有し続けることになり、違法の内容によっては老朽化しても建て替えできないことになります。
一部ノンバンク系の金融機関なら融資を受けられる場合もありますが、金利が高いため必ずしも買主が利用するとは限りません。
違法建築物件は融資を受けることが難しいことを、基本条件として覚えておきましょう。
安く買い叩かれる
融資を使わず自己資金で購入する買主が現れたとしても、違法建築物件はやはり不利な面があります。
違法であることを認識していた場合、売却では相手方に違法性を伝えなければならないからです。
もし違法建築物件であることを隠して売却すると、それが発覚したときに買い戻しを要求されるだけでなく、それまでにかかった費用や損失を請求される可能性もあります。
当然違法性があることを明らかにして売りに出せば、買い手が付きにくいばかりか足元を見られ安く買い叩かれることは容易に想像できます。
つまり違法物件は所有しないことが最も賢明な選択と言えるでしょう。
改修工事などができない
違法建築物件はそのままの状態では、10㎡を超える増築や一部の大規模修繕など申請が必要な改修工事を行えないと考えるべきです。
これらの申請を行うには新築完成時に完了検査を受けていることが前提ですが、違法建築の多くは完了検査を受けておらず、完了検査済証も発行されていないからです。
費用をかけて違法部分を是正し適法の認定を受けることはできますが、多大なコストがかかったり違法の内容によっては是正できなかったりする場合もあります。
大規模修繕は建物を長期維持するために劣化などを補修する工事ですが、これが行えないと建物の損傷が進んでしまうことになります。
違法建築は売却だけでなく、建物維持もしにくくなるのです。
行政指導を受ける可能性
違法建築物を行政が知ることとなれば、行政指導を受け是正を勧告されたり使用制限命令が出たりすることがあります。
是正とは違法部分を改修することであり、そのためには費用がかかります。
また使用制限は人に貸したり住まわせたりすることができなくなる可能性もあり、賃貸の収益が途絶えることになります。
気付かれることはないのではと思うかもしれませんが、近くの建築工事で行政の人間が立会いなどで来た際に気付かれたり、近隣から行政に連絡がいったりする場合もあります。
知られる経路はさまざまですが実際に指導を受けるケースもあるため、やはり違法建築物件の購入は避けるべきと言えます。
違法建築物件か見分ける方法
違法建築物件は一般の方にはなかなか見分けにくいものです。
そこで購入を検討している物件が違法建築かどうか、簡易的に推測するための方法をお伝えします。
確認済証・検査済証の有無をチェックする
投資物件の購入前には、必ず建築確認申請書や検査済証がないかを確認するようにしましょう。
建築確認申請書には建物の図面はもちろん細かな仕様も記載されているため、違法建築物かどうか確かめる上で大切な書類となります。
古い物件で紛失しているようであれば、行政に発行済みかを確認することができます。
建築確認申請通りに建築されたかどうか検査した検査済証は、建物の購入で融資を受けたり将来売却をしたりする上で非常に重要になります。
また改修工事や建て替えなどでも必要になるため、検査済証の有無は購入すべきかどうかの判断材料にさえなります。
ただし検査済証があったとしても、その後に違法な増改築や改修が行われている可能性もあるため、安心せず状態のチェックを怠らないようにしましょう。
重要事項説明書もチェック
物件の売買の際に添付される重要事項説明書も、違法建築物件では大切になります。
以前の所有者が購入した後にどのような増改築を行ったかや、もし違法性のある箇所が認識されているならその旨を記載するべき書類だからです。
違法性などを売主や仲介業者から口頭で伝えられることがありますが、それでは購入後にトラブルや行政指導などで被害を被った場合に、賠償を求めることが難しくなります。
できる限り詳細に重要事項説明書に記載するべきであり、必ず契約前に作成してもらい十分に納得してから物件購入をするようにしましょう。
専門家に相談がおすすめ
各種の書類があったとしても、やはり一般の方が違法建築物件かどうか見分けるには限界があります。
そこで不動産投資物件に明るい建築の専門家に、購入する前に相談するのも一つの方法です。
違法物件であるかどうかや是正できるかどうか、是正にはどれぐらい費用がかかるかなどもアドバイスしてもらうことができます。
さらに古い建物であれば劣化の程度や大規模修繕の時期、費用の目安なども聞けるはずです。
購入後の運営面でも参考になる部分がありますので、違法物件かどうかの確認を含めて相談してみましょう。
既存不適格物件とは
既存不適格とは建築時には違法物件ではなかったものの、その後の法改正で現行法に合わなくなった建物のことです。
違法建築物として、すぐに行政主導を受けることになったり是正したりする必要はなく、救済措置が用意されていることもあります。
既存不適格物件は相場よりも安く売られていることもあり、不適格部分を理解し是正の方法をあらかじめ了解していれば、購入に値するケースもあります。
もちろん既存不適格部分以外のところで違法建築になっていないかは、必ず確認しなければなりません。
また旗竿地で接道面が足りていない場合のように、既存不適格でも是正することが困難な物件もあります。
既存不適格はその内容と是正の具体的な方法を確かめた上で、購入を判断するべきです。
以下に代表的な既存不適格の例を紹介します。
建ぺい率・容積率・高さ制限などの変更
地域ごとに定められる建ぺい率や容積率、高さ制限などが変更になることがあります。
こうした場合には早急に是正する必要はありませんが、確認申請が必要な改修を行う際には是正を求められることがあります。
接道幅条件の変更
接道が4m以上の道路に接しているようにと定められる以前は、2.7m以上の道路への接道で良い時代がありました。
この既存不適格を救済するため、建築基準法42条2項で例外を設定しており、これに適する条件を満たせば再建築などが可能になります。
耐震基準改正
建物の耐震基準は何年かごとに見直され、1981年や2000年などに大きな改正が行われています。
これも早急な是正は求められませんが、現実に大きな地震が起きれば深刻な被害を引き起こす可能性があります。
またそうした情報を賃貸の入居者希望者が知り、耐震補強などが行われていないと敬遠される可能性もあります。
耐震補強の助成金を用意している行政もあるため、できるだけ早く改修するようにしましょう。
高収益物件なら購入すべき?
既存不適格物件は相場より安く売り出されていることがあります。
もし高い収益性が期待できる条件の物件で、不適格部分の改修が安価に済むなら、そうした格安物件の購入を検討しても良いかもしれません。
たとえば耐震改修などは築年数や構造によっては、助成金を使えばそれほど大きな費用とならない場合も考えられます。
改修を済ませれば通常の賃貸運営を行うことができ、物件価格が安いぶん投資回収と収益化が早まります。
特に都心のような賃貸需要が落ち込みにくいエリアの物件なら、格安で購入できることは不動産投資において大きなアドバンテージです。
こうしたトータルの資金計画や運営開始後の見通しによっては、既存不適格物件でも購入を検討して良いでしょう。
まとめ
違法建築物件は小さなものを含めればさまざまな種類があり、残念ながら決して珍しいものではありません。
知らずに購入してしまうと売却がしにくくなり、さらに修繕工事ができなかったり行政指導を受けて是正したりする可能性があります。
いずれも建物価値を大きく下げてしまう要因であり、できる限り違法建築物件は避けたいところです。
そのためには購入前に建築確認申請書や検査済証をチェックすることである程度予想できますが、建築に明るくない投資家の方には難しいことになります。
既存不適格物件のように必ずしも所有することが損失につながるとは限らない物件もありますが、不適格部分以外に違法建築が潜んでいる可能性もあり安心できません。
少しでも不安があるなら、投資に明るい建築知識の豊富なコンサルタントなどに相談し、しっかりとリスクを回避することをおすすめします。
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