不動産投資物件の購入や所有、売却でかかる諸費用は、初心者の方にはよく分からない項目が多いと思います。
しかし諸費用は必ず支払うものであり、項目によっては経費計上で節税につながるため、しっかりと把握しておくことをお勧めします。
そこで今回は不動産投資物件でかかる諸費用一覧と、金額相場を紹介したいと思います。諸費用を抑えるためのポイントも合わせて解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
物件購入時にかかる諸費用
不動産投資物件の購入でかかる諸費用には、主に以下のような項目があります。
不動産仲介手数料
不動産仲介手数料は物件を仲介した不動産会社に支払う手数料で、法定で料率の上限が決まっています。ただしそこからどれくらい値引きするかは自由なため、多少交渉する余地はあるかもしれません。
・不動産仲介手数料
売買代金(税別) | 仲介手数料の上限(税別) |
200万円以下の部分 | 売買代金の5% |
200万円を超え400万円以下の部分 | 売買代金の4% |
400万円を超える部分 | 売買代金の3% |
例:売買価格3,000万円の物件の場合
200万円以下の部分 200万円×5%=10万円・・・①
200万円を超え400万円以下の部分 200万円×4%=8万円・・・②
400万円を超える部分 2,600万円×3%=76万円・・・③
①+②+③=94万円+消費税=1,034,000円
印紙税
契約書に貼る印紙で納める税金で、契約金額によって税額が決まっています。売主買主それぞれの契約書に同額を張り、自分の契約書の税額を負担します。
不動産譲渡の売買契約書に対する印紙税は、2022年3月31日まで軽減措置が設けられています。
・不動産売買契約書 印紙税額
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
10万円を超え50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下のもの | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下のもの | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5,000円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
所有権移転登記費用
物件の所有権を自分名義に移転する登記の費用です。法務局に出向いて自分で行うこともできますが、手間が非常にかかるため司法書士に依頼するケースがほとんどです。
内訳は主に司法書士報酬と登録免許税となります。
司法書士報酬
登記を代行してもらう司法書士に支払う報酬で、以前は手数料が定められていましたが現在は自由に設定できるようになっています。
既知の司法書士がいればその方に頼むこともでき、あてがないようなら仲介の不動産会社や融資を受ける金融機関から紹介してもらうこともできます。
報酬は固定資産税評価額によって変わり、仮に評価額1,000万円で1筆及び1棟の場合5〜8万円程度が相場となります。
ただし司法書士報酬の他に出張料や調査料などの諸雑費が追加になります。
登録免許税
登録免許税は不動産登記でかかる税金です。土地と建物の所有権移転ではその原因によって税率が異なり、売買が原因では不動産の価額の20/1000になります。
固定資産税精算金
固定資産税は1月1日時点で所有していた人に課税されるため、年の途中で売買する場合はその年の固定資産税を元の所有者が支払っています。
そのため所有権を移転した日以降の年内分の固定資産税を、日割りで精算金として請求されることがあります。
固定資産税年間100,000円の物件を、その年の残り180日のタイミングで所有権移転した場合は以下のようになります。
100,000円÷365日×180日=49,315円
ローン諸費用
金融機関のローンを利用して物件を購入する場合は、次のような諸費用がかかります。
事務手数料
金融機関がローンの取り扱いをするための費用が事務手数料です。
一般的に数万円程度が多いのですが、この後紹介する保証料を無料としている金融機関では、事務手数料の方を借入額の◯%と設定して高額になることがあります。
借入する金融機関によって大きな違いがあるため十分な注意が必要です。
印紙税
金融機関から融資を受けるために交わす金銭消費貸借契約書に貼る印紙税です。借入額に対しての税額が定められ、自分の所有する契約書分を負担します。
・不動産の譲渡消費貸借等に関する契約書 印紙税額
記載された契約金額 | 税額 |
1万円未満のもの | 非課税 |
1万円以上10万円以下のもの | 200円 |
10万円を超え50万円以下のもの | 400円 |
50万円を超え100万円以下のも | 1,000円 |
100万円を超え500万円以下のもの | 2,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のも | 1万円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 2万円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 6万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 10万円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 20万円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
保証料
保証料は万一支払いができなくなった場合に代弁済をしてもらう保証会社に支払う手数料です。
料率は借入額に対して2%程度が相場ですが、借入時の諸費用としては不要で返済金利に0.2〜0.3%上乗せする保証会もあります。
ただし申込人の条件によって変動するため、実際に借入をする際は事前に必ず金融機関に確認するようにしましょう
抵当権設定登記費用
購入した不動産に融資を受けた金融機関の抵当権を設定するための登記費用で、こちらも司法書士に依頼し所有権移転登記と同時に行うのが一般的です
費用は債権額1,000万に対して7〜12万円程度が相場ですが、調査費などの諸雑費が発生することがあります。
団体信用生命保険料
金融機関からのローンで物件購入する際は、申込者が死亡したり高度障害を負ったりした場合にローンの残債返済に充てられる、団体信用生命保険に加入します。
保険料は金融機関が負担するのが一般的ですが、ガンや脳卒中など保険適用範囲を広げると借入金利が0.2〜0.3%程度上乗せとなります。
火災保険料・地震保険
火災保険は建物に発生した火災や風災、雪災、水災などの被害を補償するもので、融資を受ける際は大半の金融機関が加入を必須としています。
火災だけでなくさまざまな自然災害や上階からの水漏れ、盗難など幅広く建物の損害を補償してくれるため、突然の修繕費負担を防いでくれます。
地震保険は地震による建物被害に加え、地震で発生した火災や延焼を補償します。火災保険の保険金額の1/2までしか加入できませんが、大地震が懸念される昨今では万一に備え加入を検討しましょう。
・火災保険料相場
1棟物件(保険金額3,000万円の場合)
構造級別 | 保険料 |
H構造(主に木造) | 200,000円〜 |
T構造(主に軽量鉄骨造) | 110,000円〜 |
マンション1室所有(保険金額1,500万円の場合)
構造級別 | 保険料 |
M構造 | 30,000円〜 |
※建物の規模や築年数、付帯する特約などによって金額は異なります。
不動産取得税
不動産取得税は土地や建物を購入した際に一度だけかかる税金です。
税額は課税標準額(固定資産課税台帳に登録されている価格)に対して本則は4%の税率ですが、令和3年3月31日までは土地と住宅は3%の軽減税率となっています。
住宅以外の建物は4%のままですので注意しましょう。
経費計上できる購入時の諸費用
紹介した諸費用のうち以下のものは経費計上することができ、確定申告することで所得から控除され所得税や住民税の節税につながります。
・印紙税
・所有権移転登記費用
・融資の事務手数料
・ローン保証料
・火災保険料・地震保険料
・建物分の仲介手数料
・建物分の固定資産税精算金
物件所有中にかかる諸費用
不動産投資物件を所有している期間中にかかる諸費用は主に以下の項目があります。
ほとんどが毎年継続してかかるため、支払いの準備を確実にしておくようにしましょう。
管理費
管理費はマンション1室所有で毎月支払い、主に建物共用部分の清掃や点検、修理などに使われます。金額は建物によって異なりますが、毎月15,000円程度が一般的です。
修繕積立金
こちらもマンションの1室所有をした場合にかかる費用で、建物共用部分の大規模な修繕や点検、比較的高額な修理に備えるための積立費用です。
毎月10,000円程度が一般的ですが、先ほどの管理費も同様にマンションのグレードが高くなるとより高額になりがちです。
また新築から数年間は低額で、その後段階的に増額する物件もあるため、購入の際は注意が必要です。
管理委託手数料
不動産投資物件の入居者の対応を管理会社に委託した場合の手数料です。
入居者の契約管理や家賃の集金、滞納の督促、クレーム対応、退去手続きや部屋の原状回復手配、クリーニングなどを行います。
一般的に家賃の5〜8%程度の掛け率で毎月集金されます。
広告料
部屋が空室になった場合に新たな入居者募集を仲介会社に行ってもらうための費用です。
具体的には物件情報を不動産ポータルサイトに掲載したりチラシを作って配布したり、紙媒体の情報誌に掲載したりなどの費用です。
相場は家賃の1ヵ月分が多いですが、入居者の集まりにくい時期だと2〜3ヵ月分に設定する仲介会社もあります。
融資利息
融資を受けた際の利息は支出であり立派な諸費用となります。経費計上もでき節税になるため、どれくらいの利息を支払っているか把握しておきましょう。
支払いに占める具体的な利息はローンの残債によって異なります。金融機関に問い合わせれば詳細に教えてくれますので必ず確認しましょう。
建物修繕費
マンション1室の区分所有であれば物件の専有部分に、建物1棟所有であれば建物全体に損傷や劣化が発生すれば修繕費が必要になります。
特に1棟所有では屋根や外壁、各部屋の内装屋や設備など、幅広い修繕費がかかるため十分な資金の準備が重要です。
マンション1室所有でも前述の管理費や修繕積立金はあくまで共用部分のためであり、所有する室内の修繕費用は別になるため注意しましょう。
火災保険料・地震保険料
購入時にかかる諸費用で解説したものと同一です。購入時に複数年で契約して保険料を支払っている場合は、契約年数に分割して毎年経費計上ができます。
減価償却費
建物は1年ごとに劣化し価値が落ちていくため、その減少分を減価償却費として毎年経費計上することができます。
減価償却期間は建物構造ごとに耐用年数が決められているため、購入する物件と照らし合わせ残り期間を確かめておきましょう。
・住宅用途建物の耐用年数
構造 | 耐用年数 |
木造 | 22年 |
軽量鉄骨造 | 34年 |
鉄筋コンクリート | 47年 |
固定資産税・都市計画税
不動産を所有すると毎年かかるのが固定資産税で、地域によってはさらに都市計画税も課税されます。
固定資産税の税額は土地、建物共に各市町村が算出した課税標準額に対し1.4%が課税されます。また都市計画税は課税標準額に対し最大で0.3%が課税されます。
経費計上できる所有中の諸費用
・管理費
・修繕積立金
・管理委託手数料
・入居者募集費
・融資金利
・建物修繕費
・火災保険料・地震保険料
・減価償却費
・固定資産税・都市計画税
物件売却時にかかる諸費用
物件を売却する時には以下のような諸費用がかかります。
不動産仲介手数料
売却を仲介する不動産会社に支払う手数料です。購入時と同様の法定手数料が定められています。
印紙税
こちらも購入時と同様に売買契約書に印紙を貼って納める税金です。税額も購入時と同様です。
抵当権抹消登記費用
ローンで物件を購入した際に不動産に設定された抵当権を、抹消登記する費用です。
司法書士に依頼して手続きをしてもらい、費用は15,000円前後の相場となっています。
繰り上げ返済手数料
売却にあたりローンの残債が残っていると、繰り上げて全額を一括返済する必要があり、この際に金融機関に手数料を支払います。
金額は一律で数万円としている金融機関もあれば、残債額の2%などと設定しているところもあります。
掛け率で算出する方法では残債額によって非常に高額な手数料となることもあるため、早い段階で金融機関に確認しておくと良いでしょう。
経費計上できる諸費用
・不動産仲介手数料
・印紙税
諸費用を抑えるためのポイント
諸費用はできるだけ抑えられた方が、物件の利回りを高め多くの収益をもたらしてくれます。
税金や法定費用を大きく削減することは難しいですが、以下のものは意識することで抑えることができます。
経費計上での税金対策
紹介してきた経費計上できるものは、極力申告をして支払う税金を抑えるようにしましょう。
実際には申告の手間がかかり少額な削減にしかならないと考える方もいます。
しかしどのような項目が経費計上できるかしっかり理解しておくことは、後々投資を拡大した時に大きな差となります。
投資の収益を出来る限り最大化する意識を持つためにも、手間を惜しまず経費計上するようにしましょう。
修繕費がかかりそうか確認
修繕費は物件の状態によっては大変高額になることもあります。
例えば外壁や屋根の傷みが激しければ、物件を安く購入できても再塗装の費用が余計にかかる可能性があります。
マンション1室の所有でも内装やエアコンなどの設備が痛んでいれば、突然故障し思わぬ出費が発生してしまいます。
不動産投資初心者の方は、物件の価格や築年数で購入を判断する方が多いですが、例え新しい物件でも状態が悪ければ多大な出費で収益を削ってしまいます。
逆に築年数が古くても建物状態が良い物件を手頃な価格できれば、最終的な利回りを大きく高めてくれます。
投資物件を購入の際は必ず状態を確認し、修繕費用が抑えられそうな建物を選ぶようにしましょう。
空室になりにくい物件を選ぶ
賃貸投資では基本的なことですが、空室になりにくい物件を選ぶことも諸費用削減につながります。
所有中にかかる諸費用で紹介した広告料は、空室にならなければかからずに済む諸費用です。
特に入居者が集まりにくい閑散期に空室となってしまうと、広告料が割高なうえに何ヵ月も支払う諸費用となる恐れまであります。
家賃収入を維持できるのはもちろんですが、空室になりにくい物件はそれだけ余計な諸費用もかからないことを覚えておきましょう。
まとめ
初めて不動産投資物件を購入する方にとって、諸費用はなかなか理解しにくいかもしれません。
しかし一度覚えてしまえば特殊なものは少なく、相場もある程度予想することができます。
紹介した項目を参考に諸費用をしっかりと準備し確実に経費計上を行い、より多くの収益を得られる物件運営をするようにしましょう。
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