不動産投資物件の外壁塗装費用を安く抑える方法は、初めての方にとって難しく感じるものだと思います。
百戦錬磨の塗装業者と値段交渉をするには、経験と特殊なテクニックが必要と思われるかもしれません。
そこで今回は初めての方でも簡単にできる、外壁塗装の費用を抑える具体的な方法を詳しくお伝えします。
塗装業者との交渉方法だけでなく、火災保険を使ったり他の工事を併用したりするコストダウンテクニックもわかりやすく解説していますので、ぜひ最後までごらんください。
外壁塗装の費用相場
はじめに外壁塗装の費用相場をお伝えします。
主な塗料ごとの費用相場と耐用年数は以下の通りですが、これ以外に足場代や諸費用も加わる点にご注意ください。
塗料 | 費用相場(㎡あたり) | 耐用年数 |
アクリル | 1,200円〜 | 5〜7年 |
ウレタン | 1,800円〜 | 8〜10年 |
シリコン | 2,500円〜 | 10〜15年 |
フッ素 | 3,800円〜 | 15〜20年 |
塗装費用総額の求め方
通常塗装費用は㎡あたりの単価を建物の外壁面積にかけて総額を算出します。物件の延べ床面積ではないため注意してください。
ただ一般の方が建物の外壁面積を計算することは困難です。
このため管理会社に問い合わせ、物件を建築した時の工事明細や過去の修繕履歴書などを探してもらい、そこに記載されている外壁面積をもとに計算しましょう。
ただし古い物件だと書類を紛失していたり明細に外壁面積が記載されていなかったりすることもあります。この場合は外壁塗装の業者に建物図面を送れば相手の方で計算してくれます。
安く抑える方法
続いて外壁塗装費用を安く抑える具体的な方法を4つ紹介します。
閑散期を選ぶ
塗装の費用を安く抑えるには、建築の閑散期を狙って依頼する方法があります。
建築では年度末である1月〜3月までが繁忙期で材料や職人などが不足し、この時期に見積りを依頼すると割高な金額になります。
また工事業者によっては9月が決算というところもあり、その直前の7月〜8月がやはり忙しく金額は高めになります。
これらの時期以外のいわゆる閑散期に工事する前提で見積り依頼をすれば、平均的な価格かタイミングが良ければ割安になり、しかも値引き交渉が成功しやすくなります。
どうしても工事業者の繁忙期に外壁塗装をしたい特別の事情がない限り、閑散期の工事を前提とした方が価格を抑えやすいでしょう。
火災保険を活用
外壁塗装の費用を抑えるために火災保険の活用も検討しましょう。
意外に思われるかもしれませんが火災保険は火事の被害だけでなく台風や竜巻、大雪などの自然災害の被害も補償できるようになっています。
たとえば強風で物が飛んできて外壁に当たった損傷があれば、その部分の補修費用は火災保険で補償されます。
他にも大雪で雨樋が曲がってしまったり、台風でテレビアンテナが倒れてしまったりといった被害も補償対象になります。
そしてそれらの補修で足場が必要であれば、その費用も補償される点が大きなポイントです。
保険対象の工事でかけた足場を使って外壁塗装を行えば、大きく塗装費用を抑えることができるのです。
もし建物に自然災害などによる損傷があるようなら、火災保険を使った補修と同時に外壁塗装を計画してみてはいかがでしょうか。
足場兼用の工事を行う
外壁塗装をする際に、同じように足場を使う工事があれば同時に行うことで費用を抑えることができます。
その時の工事費は外壁塗装以外も含むため増えてしまいますが、足場代が一回で済むため物件のトータルの修繕費は抑えられます。
たとえばサッシの補修や外まわりの防水シーリングの打ち替え、換気扇フードの交換やエアコン室外機の修理・交換など、建物の外部で行う工事は意外と数多くあります。
それぞれを別々に行うとその都度足場代や高所作業費がかかりますが、塗装と同時に行ってしまえばそうした費用を削減できます。
外壁塗装を行う際は足場を使う他の工事がないかチェックをして、物件にかかるトータルの修繕費を抑えるようにしましょう。
複数見積りを取る
外壁塗装に限りませんが、工事の費用を安くする基本は複数の業者から見積りをとることです。
見積りを取る際に他の業者からも見積りを取ると伝えれば、競争原理が働いて値段を抑えた見積りを出してくれるはずです。
また複数の見積りを取れば所有物件の塗装相場金額を知ることができ、割高な金額で契約してしまうことを防げます。
ただし安かろう悪かろうの工事になれば塗装が長持ちせず、後で塗り直しや修繕の費用がかかる恐れもあります。
記事の後半でお伝えするしっかりとした塗装業者の見分け方を参考に、複数の見積を比べながらも信頼できる相手か見極めることも忘れないようにしましょう。
塗料以外の項目を知り金額交渉する
外壁塗装の塗料以外の項目と相場を知ると、交渉をして金額を安く抑えられる可能性が広がります。
塗料以外の項目を理解していれば複数社の見積もりを取ったときに、どの項目が割高か比べられます。
そして割高な項目を見つけられれば、それを指摘して金額を下げられないか交渉することもできます。
塗料以外の主な見積項目と費用相場は以下の通りです。
項目 | 塗装工事費用全体に占める割合 | 備考 |
足場代 | 20%前後 | |
諸費用 | 20%〜 | 養生費、補修費、管理費など |
それぞれの項目の具体的な内容については、以下の記事で詳しく解説していますのでぜひ合わせてご覧になってください。
「不動産投資物件の外壁塗装のベストなタイミングと価格相場を解説」
http://fudosan-archi.com/2021/03/05/explain-the-price-market/
工程を理解してから比べる
複数の見積りを比較する際は、外壁塗装の工程を理解し確かめた上で比べるのがおすすめです。
いくら金額が安くても他社が行っている工程を抜いて金額を抑えているなら、それは適正な比較にならないからです。
それどころか工程が省かれていれば耐久性や仕上がりが劣ることも考えられ、値段なりかそれ以下の工事になる恐れもあります。
具体的に外壁塗装は以下のような工程で行われます。
①足場設置
②養生
③高圧洗浄
④既存塗料の除去
(劣化が進んでいる場合に行う)
⑤損傷部分の補修
⑥シーラー塗装
(塗装の付きを良くする塗布剤 下塗りとも言う)
⑦中塗り
⑧上塗り
格安の塗装業者の中には④の既存塗料の除去が適当であったり、⑤の補修を十分に行わなかったりと手間を省いて価格を安くしている者もいます。
このような塗装は後で塗料の剥離が起きたり外壁自体が破損したりする恐れがあり、結局は高く付く結果になりかねません。
見積もりを比較する際は必ず工程も確認し、同じ条件の金額で比べるようにしましょう。
値引きの注意点
塗装のようなこれから行う工事に対しては、極端な値引き要求をしない方が安全です。
業者にしてみれば値引きで利益が減った分を、工事を調整して回収しようと考えるからです。
たとえば前述の工程を減らしたり塗料を安いものに変えたり、依頼主に気づかれないように値段を調整することは非常に簡単です。
しかも外壁塗装は高所で行われるため実際にどのような作業をしているか、確かめるのが困難というリスクもあります。
すでに出来上がっているものなら値引きをしても品質が変わることはありませんが、これから行う仕事ならいくらでも値引き分の帳尻合わせは可能です。
もし値引きを求めるにしても端数程度と考え、今回紹介しているような工事内容の工夫で値段を抑えたほうが賢明と言えるでしょう。
塗装以外の付帯工事の意味
塗装業者によっては見積りに付帯工事として、塗装以外のお勧め工事を記載する場合があります。
費用がかかるため余計な工事と却下してしまうのは少しもったいない工事もあります。
せっかく塗装などの工事業者が来るなら一緒に行った方が、長期的に見て建物にプラスになる工事もあるからです。
塗装と一緒に行う工事でおすすめな付帯工事を解説します。
補修
見積もりの塗装以外の項目でも挙げましたが、補修は塗装と同時に行うべき非常に大切な付帯工事です。
補修は主に外壁のひび割れをシーリングで埋めたり、欠けをパテで戻したりする事前工事になります。
補修を行うことで塗装した後の見栄えが良くなり、さらに外壁の割れが広まってしまうといった損傷の拡大を防ぎます。
また塗装をせず長年経過している外壁は、防水機能が失われもろく崩れやすくなっていて危険な場合もありますが、部分張り替えなどの補修を行って落下などの被害を未然に防ぎます。
このように補修は後々の損傷の拡大を防ぎ、ひいては費用負担の軽減にもつながります。
見栄えを良くするだけと考えずに提案された補修内容をしっかりと確認し、できる限り行うようにしましょう。
樋や露出配管
雨樋や露出している水道の配管なども、劣化しているようなら同時に塗装をすれば状態を回復し長持ちさせることができます。
これらはいずれも塩ビ製が大半で、年数が経過していると紫外線や風雨で劣化していることが考えられます。
そのまま放置しているとひび割れや変形によるジョイントの外れが発生し、水漏れを起こしてしまいます。
また雨樋は大雪の加重で勾配が狂いきちんと雨水が流れていなかったり、鳥の巣や落ち葉がたまり詰まっていたりする場合もあります。
せっかく塗装で外壁をきれいにしても、樋や配管から汚れた水が流れ出ていれば再び外壁が汚れてしまいます。
ぜひ塗装と一緒に樋や配管の点検と修繕の付帯工事も行うようにしましょう。
シーリング
シーリングとは窓枠や換気扇フード、配管の抜き穴などと、外壁との隙間を埋めている樹脂製の詰め物です。
これは年数が経過すると硬化してひび割れや剥がれが発生している場合があり、そのままにしておくとその隙間から外壁内に雨水が入り込んでしまう恐れがあります。
そうしたトラブルを避けるために外壁塗装と同時に、劣化したシーリングを増打ちしたり打ち替えたりする工事をお勧めします。
シーリングが打たれているジョイント部分は非常に多くの箇所があり、全体的に劣化が進んでいるとあちこちから水漏れが発生してしまう恐れもあります。
外壁塗装を行う際は付帯工事として同時に行うようにしましょう。
板金
板金は主に屋根の傾斜の合わせ目や雨樋が打ち付けてある下地部分の鋼板で、新築時には塗装をしてありますが経年で劣化し剥がれている場合もあります。
そのままにしておくと板金自体が腐食で穴が開いて雨漏りの原因になってしまうため、再塗装を行いサビや腐食を未然に防ぐ必要があります。
特に古い物件で銅板を使った板金は近年の酸性雨の影響で腐食が早く、雨漏りのリスクが高い状態のため早めの点検と塗装が必要です。
また屋根傾斜の合わせ目にある谷樋板金はゴミなどが詰まって雨水の流れをせき止め、こちらも雨漏りに繋がる危険性があります。
屋根まわりの板金の劣化は雨漏りに直結しやすいため、外壁塗装時にしっかり状態を確認し早めに塗装などの補修を行うようにしましょう。
しっかりした工事をする塗装業者の選び方
初めて外壁塗装を行う方にとって、どのような塗装業者を選べば良いかわからないというのが共通の悩みだと思います。
実際に質の悪い工事をされて色が希望通りでなかったり、数年で変色してしまったりというトラブルを耳にすることがあります。
そこで最後に依頼する塗装業者が真面目な工事をするところかどうか、判断するポイントを紹介します。
項目や工程を丁寧に説明するか
まず見積もりの項目や工事の工程を、丁寧に説明する塗装業者を選ぶようにしましょう。
一般の方にとって見積り項目や工事工程は分からない事ばかりで不安が大きいものですが、そうした心理を察して丁寧に説明する業者なら、実際の工事の丁寧さも期待できるからです。
工事項目や工程を十分に理解しておくことは、すでに述べたように金額の妥当性や手抜き工事防止に大いに役立ちます。
しかしそれをうやむやに説明して手を抜いたり他で余った材料を使ったりと、依頼主がわからないところで経費を浮かせようと考えている業者も残念ながら存在します。
一方で項目や工程を正直に伝える業者は、自らそうした手抜きをしないと約束している訳であり信用に値すると考えられます。
見積もりを受け取る時は金額だけでなく、その説明の態度もしっかりと見ておくようにしましょう。
極端な値引きをする業者は注意
極端な値引きをする業者に工事を依頼するのは慎重に考えるようにしましょう。
冷静に考えればわかりますが、値引きは見積りにその分の金額をあらかじめ乗せてあります。
しかしそれでは本当の工事金額が不透明で、見積りが妥当なのか検討できません。
さらに値引きをする代わりにすぐに返事が欲しいと、他社と比較する時間を与えず契約を迫るような業者が大半です。
これでは適正な金額の工事ができないばかりか、低品質な塗装になってしまう恐れさえあります。
値引きはあくまで契約を急かすための営業手法だと理解し、本当の金額と工事の質で依頼先を決めるようにしましょう。
あまりに遠方の業者は避ける
塗装は日が経つと温度変化や乾燥により色が変わったり、補修部分が変形したりなど気になる部分が出てくることがあります。
これは時間が経過しながら落ち着いていく建材の性質上避けられない現象ですが、大切なのはこうした気になる点が発生した場合にすぐに説明や対応をしてくれるかどうかです。
ところが遠方の業者だと工事が終わり代金を受け取ると、その後の対応を面倒がり丁寧に対応しない業者もいます。
中には音信不通になってしまう者さえおり、高額な工事を任せたのに大きな不満が残る結果になってしまいます。
このため信頼できる所からの紹介などを除いては、できるだけ遠方の業者は避けるようにしたほうがしっかりしたアフターケアが期待できます。
工事を依頼する際は会社の場所も含めて検討するようにしましょう。
まとめ
外壁塗装はまず相場を十分に理解し、その上で閑散期を選んだり火災保険を利用したりといった方法を活用すると費用を抑えられます。
さらに見積り項目や工事の工程を十分に理解すれば値段交渉が可能になり、割高な金額で工事してしまうことも避けられます。
ただし極端な値引きは質の悪い工事につながりかねないため避けていただき、紹介したように複合工事を行うことで物件の長期的な補修費用を抑える方が安全です。
見積もり項目や工程説明の姿勢などで真面目な塗装業者を見極め、優れた外壁塗装工事でコストパフォーマンスを高めるようにしましょう。
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