新築建物は入居者集めが有利など大きなメリットがありますが、一方で十分な知識や計画を備えた上で建築しないと、あっという間に赤字物件に転落する恐れがあります。
そこで今回は新築のメリット・デメリットと、その対極にある中古物件のメリット・デメリットを徹底的に比較し、それぞれの特徴を明確にしていきます。
さらにどちらがご自身のスタイルによりマッチしているか判断しやすいように、新築・中古それぞれのお勧めの投資スタイルも紹介しています。
ぜひ最後まで目を通して頂き、投資建物の選択に役立ててください。
新築建物は十分に理解してから建てないと危険
新築建物と聞くと入居者を集めやすく、メンテナンスなどの維持コストもかからないことがメリットとして挙げられます。
一方で完成に至るには多くの時間と手間、そして何より土地選び、建物造りの知識が必要です。
新築であっても一定期間を過ぎれば単なる一物件であるため、ニーズに合った立地や間取になっており十分なメンテナンスがされていなければ、長く利益を生み出すことは不可能だからです。
もちろん中古とは比較にならない投資金額のため、万一失敗してしまえばその損失は非常に大きくなります。
新築建物こそ十分に需要や建築を理解してから投資をしないと、非常にリスクが高いことをご承知ください。
新築建物のメリット・デメリット
まずは新築物件のメリット・デメリットをご紹介します。
新築のメリットは魅力的に映るものが多いですが、その裏には綿密な計画があることもご理解の上、読んでいただけたらと思います。
メリット
希望に合わせて立地や間取りを選べる
新築の最大のメリットは自分の計画に合わせて立地や間取り、デザインなどを選べる点です。
立地においては売地であることが前提のため全て自由という訳ではありませんが、それでも自分の狙った戦略に合わせて物件を探し決定していくことができます。
間取りや内外のデザインは入居者層を想定したり、競合があれば差別化をしたりと、より入居率を高める策を打つことが可能で、成功すれば高い利回りが期待できます。
これらは中古や建売には無い魅力であり、攻めの投資をしたい方にはお勧めしたいポイントです。
入居者を集めやすい
日本人は特に新しいもの、未使用のものに価値を感じやすいと言われていますが、賃貸物件においても例外ではありません。
一定の需要が見込める地域なら入居者は中古に比べ圧倒的に集めやすく、早期に広告や情報発信を行えば完成前から契約が埋まっていくことも期待できます。
ただし若年層が中心のエリアだと入れ替わりが早く、新築の鮮度が落ちるころには空室が出やすい点はしっかりと計画に盛り込んでおきましょう。
家賃を高めに設定できる
上記のように新築はある程度の初期需要が見込めるため、新築プレミアムと呼ばれる高めの家賃設定も可能です。
周辺相場を意識することは大切ですが、あえて設計の自由度を生かしたオリジナリティある間取りやデザインにして、強気の家賃設定にトライするのも良いでしょう。
ただし入居者層や競合を十分にリサーチした上で、家賃設定をするべきであることは忘れないようにしてください。
当面の建物維持コストが少なめ
新築であれば劣化が当面先のため、初期の建物の維持コストは非常に少なくて済みます。
比較的早く劣化が目に見えて入居者集めに影響する外観や、損傷を放置すると大きな被害を生む防水などもしばらくは心配ありません。
もちろん新しい建物であれば建築会社の保証もあり、予想外の修繕などが起きにくく収益の見通しが立てやすいのは大きなメリットでしょう。
もちろんそれでも予想外の建物トラブルはゼロではないため、リスクに対する備えは必要です。
売却しやすい
経過年数や修繕、事故の有無にもよりますが、売却のしやすさも新築から所有することのメリットです。
タイミングは十分に検討しなければなりませんが印象は非常に良く、価格設定に間違わなければ売却はしやすいです。
ただし雨漏りや排水の詰まりによるトラブルが発生してしまうと大きなマイナスになるため、新築であっても定期的なメンテナンスはしっかりと行うべきです。
管理会社によっては客付けには熱心でも維持管理はおざなりというところもあるため、建物価値を落とさないよう所有者自身でも最低限のメンテナンス知識は持つ必要はあるでしょう。
デメリット
ここからは見過ごされがちな新築物件のデメリットについてご紹介します。
特に建築の視点からのデメリットも触れているので参考にしてください。
土地選びの知識が必要
建物を新築するには土地選びが非常に重要であり、その選定には十分な知識と経験が必要になります。
土地は建物の間取りやデザインのように「こうしておけばとりあえず間違いはない」という定番のノウハウが少なく、個別に確認や調査、判断をしなければならないからです。
しかも本当に優良な土地は買い手が付くのが早いため素早い判断が求められます。
需要や周辺環境、地域住民の傾向など考慮すべきポイントは幅広く、経験の少ない投資家の方には最も判断に迷うのが土地選びと言えます。
建築知識が必要
建築業者にご自身で発注を行うとなると一定以上の建築知識が必要です。
間取りはもちろんデザインや設備、耐久性に使い勝手、安全面など配慮すべきところは多岐に渡ります。
もちろん仲介業者や設計事務所に頼る方法もありますが、素人同然では満足行く建物にすることは難しいですし、手数料もかかってしまうため自分で打ち合わせができる方がベターです。
長い目で見れば建物維持やメンテナンスに関わるコストも予想でき、収支計画もブレがないように立てられるため、一定水準の建築知識は得ておくべきでしょう。
利回りが低い
新築は建築コストがかかるためどうしても利回りが低くなりがちですが、さらに借り入れを起こしていれば元本回収に時間がかかります。
入居者を集める面では魅力の多い新築ですが、トータルの収益で見るとどうしても他の選択肢に比べ分が悪くなりがちで、新築こそ年数経過後の入居者集めやメンテナンスコストの見通しを立てておく必要があります。
明確な計画とデータなどに裏打ちされた具体的対策を持って臨まないと、新築であっても利益を確保することすら難しいと言えるでしょう。
収益発生までに時間がかかる
新築は土地購入から建物完成まで半年から1年の期間がかかり、その間は家賃収入が発生しません。
もし借り入れを起こしていればその間の支払いは100%持ち出しになるため、十分な資金計画が必要です。
またその間に周辺環境や景気の大きな変化があれば、入居率や家賃設定に深刻な影響を与えるでしょう。
特に地方で大手メーカーの大規模工場の従業員の入居を見込んで新築したものの、撤退やリストラの影響で収益が悪化する例が増えています。
新築こそしっかりと地域経済の動向を視野に入れるべきでしょう。
新築は土地・建築知識がある方向け
不動産投資において新築建築は、積極的にニーズに合わせた物件にすることが可能で、しかも入居者集めもしやすいというメリットが大きいです。
しかし満足いく結果を出すには土地の選定はもちろんプランを実現させるための建築知識が求められ、さらに長期的な視点で長く収益が得られるよう修繕やメンテナンスの計画が必要です。
このため新築建物への投資は、十分な土地選定や建築の知識を備えた方や、時間をかけてリサーチや計画立案ができる方に向いた選択になるでしょう。
中古物件のメリット・デメリット
次に中古物件へ投資する際のメリット・デメリットを解説します。
メリット
購入価格が安い
中古物件の最大のメリットはなんと言っても価格が安いことで、築年数や状態、立地にもよりますが数百万円から購入可能です。
税務上の法定耐用年数である20年前後を超えた物件ならほぼ土地代だけで購入できるケースもあり、新たに不動産投資を行う方にとっては非常にハードルが低くなります。
また建物状態や修繕の履歴などを十分に確かめる必要はありますが、値ごろ感のある掘り出し物件も存在します。
収益発生までの待ち時間が少ない
ゴーサインを出してから家賃収入が発生するまでの時間が短いのも中古物件のメリットです。
融資がなければ契約から登記などの権利移転手続きを1ヶ月程度で完了させることも可能で、なるべく早く収益を得たいという方にも良いでしょう。
もちろん新築のように建物打ち合わせの時間も必要ないため、忙しい方にも中古の方が向いています。
ただし物件選びを焦って失敗する方が多いのも事実であり、慎重さも忘れないようにしてください。
利回りが良い
新築アパートでは一般的な利回りが7〜8%と言われていますが、中古は10%以上になることも珍しくありません。
マンションでも新築が3%程度のところが中古だと5%前後と、やはり中古物件の方が利回りは高いです。
これはひとえに購入価格が安いために実現できることで、この点に限れば中古が圧倒的に有利です。
ただし購入後の大規模修繕や細かな修理、定期的なメンテナンスのコストをしっかりと確保しておくことが必要なのは言うまでもありません。
デメリット
条件の良い物件購入は難しい
中古は正に一品物であり、希望と予算に見合った物件を見つけるにはこまめに情報収集ができないと難しいです。
しかも好物件ほど買い手が付くのは早いため素早い決断が必要ですが、程度の悪い建物を購入するリスクを回避するためには、状態を見分ける建築知識も必要です。
中古物件自体は多数存在しますが、その中から条件の良い建物を見つけるのは非常に難しいと言えます。
維持費用が早い段階で必要になる
中古は程度の差こそあれ、新築よりも早い段階で修繕やメンテナンスなどの費用がかかることになります。
建物の印象を大きく左右する内外装は当然として、トイレやキッチン、風呂、エアコンなどの設備も、入居者層によっては使えるだけでなく見た目の良さも維持する必要があります。
さらに雨漏りを防ぐ防水部分や、安全を確保するための手摺やエレベーターなど、手を加えるべき部分はきりがありません。
中古物件はこれらの修繕が購入から間もなく必要になるため、十分な費用の準備をしておくべきと言えるでしょう。
入居者が集まりにくい
中古物件の最大の課題が入居者集めです。
満室状態で売りに出ているならまだ良いですが、空室有りの物件では購入してから劇的に埋まっていくことは考えにくいです。
そのため購入の際は建物状態と入居者層を確認し、内外装の修繕など早い段階で行う必要があるかもしれません。
中には大規模なリフォームで入居率を大きく改善したケースもあるため、事前に対策を準備した上で購入することも検討しましょう。
売却のためにはメンテナンスが必要
中古物件は所有して年数が経つほど老朽化し売却がしにくくなります。
しかし適切なメンテナンスに劣化を遅らせることは十分に可能であり、大掛かりな修繕だけでなく小規模のメンテナンスもこまめに行いたいところです。
例えば屋根や屋上の修繕は良い例で、安価でも塗装を定期的に行なっておけば劣化はかなり防げます。
適切なメンテナンスは入居者のためはもちろん、売却時の価値を高めることもぜひ覚えておいてください。
忙しい方や初心者の方など幅広くお勧め
中古物件は初期投資が少なく済むため利回りが良く、収益面でのメリットは大きいです。
新築のように土地や建物をじっくり検討する時間がない方や、まずは少額から不動産投資を始めてみたいという方には適しています。
ポイントになるのは状態維持のための修繕や日頃のメンテナンスです。
もちろん資金を投入して大規模修繕で一気に直すのも良いですが、出費を抑えるなら状態に応じた最小限の改修をこまめに行う方法もあります。
いずれにしてもご自身で最低限のメンテナンスや修繕の知識を備えておいた方が、無駄のない投資ができるでしょう。
新築建売物件のメリット・デメリット
販売会社が建築会社に依頼をして建物を建築し、土地と共に販売するのが建売物件です。
新築でしかも完成しているため簡単に投資できそうですが、建売ゆえの注意点もあるため紹介いたします。
メリット
手軽に新築物件を入手できる
建売最大のメリットは建物の打ち合わせをせずに新築物件が手に入ることです。
手間や時間、知識を求められるこの工程を省けることは、経験の少ない投資家の方にとっては魅力でしょう。
ただし立地の検討や購入のための手続きなどは、他の建物の取得方法と変わらない点は認識しておきましょう。
建築リスクが少ない
建物が完成しているため工事中に近隣トラブルが起きたり、工期が遅れて入居者募集のハイシーズンを逃してしまったり、あるいは工事中に建築会社が倒産したりなどの建築リスクが避けられます。
その上で当面のメンテナンスや修繕の出費は最低限で済むという、新築のメリットもしっかり受けられる点も建売の大きな魅力となっています。
手数料は少なくて済む
建売は販売会社が土地を所有しているケースが多く、これなら売り主との売買になるため仲介手数料が不要です。
また打ち合わせがなく規定のプランをベースに設計されているため、設計料を取られない場合がほとんどです。
土地を購入して新築を建てるケースと比べると手数料がかなり省けることになります。
デメリット
建物品質が低く維持コストがかかる
建売は資金を投じて建築してもいつ売れるかわからないため、極力原価を抑えた作りにして多めの利益が乗せられています。
材料は大量流通品の一番グレードの低いものがほとんどで、職人も安請け合いのところを使うため決して良い造りではありません。
当然経年劣化が早いため、修繕やメンテナンスなどの維持コストが大きく利回りに悪影響を及ぼす点は、大きなデメリットと言えます。
建物は平凡で差別化しにくい
建売は間取りやデザインなどに特徴が無く平凡なため、競合が多いと差別化はしにくいです。
しかも年数が経って建物の鮮度が下がると、なおさら多数の物件の中に埋もれて空室を増やす結果になりやすいです。
このため安易に購入の際は入居者層やニーズとのマッチングを十分に見極めて購入する必要があります。
売値が安くなりやすい
冒頭で触れたように使用部材が安価なものが多いため、劣化が早く売却価格が下がりやすいのも建売の特徴です。
特に入居率に直接影響する内外装に痛みが出やすく、多少建築知識のある者なら建売物件の時点で購入候補から外すことさえあります。
将来的な売却のしやすさを考えると、他の選択肢に比べリスクがあるのが建売だと言えます。
しっかりと見通しが立てられる人向き
建売は入居者層のニーズなどに建物がマッチしているか、しっかりと見極められる方に向いた建物です。
さらに建物で使われている材料などを的確に判断し、劣化する前に売却のタイミングを伺うような眼力と判断力も必要です。
敷居の低さから安易に購入してしまうと、なかなか入居者が集まらず空室を抱える事態になりかねないため、投資経験の少ない方は避けたほうが安全でしょう。
まとめ
新築建物は入居者を集めやすく、場合によっては家賃も高めに設定できるなどメリットは多いですが、価格が高めなため決して利回りが良いものではありません。
しかし、しっかりと土地を選び、建物の設計にビジョンを持って取り組めば、長く堅実に利益をもたらしてくれる可能性を秘めています。
一方で中古は入居者集めに苦労するかもしれませんが、安価ですぐに収益が生まれるため、忙しい方や経験の浅い方にお勧めです。
しっかりとした修繕やメンテナンスの知識を持って運営すれば、高い利回りを期待できます。
いずれもご自分の目的や手法にマッチしているかを見極め、間違いのない物件選択を行ってください。
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