屋根の大規模修繕では確認申請が必要?条件と具体例を徹底解説

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屋根の大規模修繕では確認申請が必要かを必ず確かめなければなりません。

必要であるのに申請せず工事を行えば違法建築となり、工事を止められるだけでなく懲役や罰金の罰則を受ける可能性まであり、社会的責任も問われることになるからです。

そこで今回は建築のプロである一級建築士が、大規模修繕において建築確認が必要な条件とその具体例を詳細に解説します。

さらにマンションでの事例や混同しやすい社会福祉法人施設の補助金条件についてもお伝えしているので、ぜひ最後までご覧ください。

 

大規模修繕は確認申請の要否を確かめる

大規模修繕は建物の耐久性や外装、住環境回復をするために行われる工事で、特にアパートやマンションなど、複数の入居者を受け入れる建物で推奨されており、実際、定期的に行われています。

その工事条件によっては、事前に自治体や民間の指定確認検査機関に、工事が建築基準法に適合しているかを確認してもらうことが定められており、その申請が確認申請となっています

大規模修繕を計画する際は、この確認申請が必要かどうかを正確に把握しておかないと、予想外の費用が発生したり、工事中に指摘を受けて中断や中止に追い込まれたりする危険性があります。

しかも1年以下の懲役又は100万円以下の罰金という罰則も設けられており、物件だけの問題に留まらない大きなペナルティを受ける可能性もあります。

大規模修繕においては確認申請の要否を必ず確かめ、計画に盛り込んだ上で工事を進める必要があります。

 

確認申請が必要な大規模修繕の条件

建築基準法に定められた確認申請を必要とする建築工事の中に「大規模の修繕、若しくは大規模の模様替え」というものがあります。

この文言の中のそれぞれの言葉の定義を理解することで、どのような工事が確認申請を必要とするかの判断ができます。

ここではそれらの言葉を一つずつ解説していきます。

 

「大規模」とは

ここで使われる大規模とは「主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根または階段)の一種以上を過半(1/2超)にわたって」修繕や模様替えを建物に行うこととされています。

屋根で言えば1/2を超える水平投影面積において、修繕や模様替えを行うことが確認申請を必要とする第一の条件になります。

 

「修繕」とは

修繕とは経年劣化や損傷した建物の部分を、それまでと概ね同じ位置で、概ね同じ材料、形状、寸法のものを使って原状回復を行うことです。

これを前記の大規模に渡って行う工事であれば確認申請が必要になります

ただし、あくまで今までの状態と同様に戻す行為となるため、これを機に機能を増やしたり使い勝手を良くしたりする場合は次項の模様替えとなります。

 

「模様替え」とは

模様替えとは建物本体の構造や規模、機能の同一性を損なわない範囲で改造することを指し、前述の修繕と違い原状回復ではなく性能向上や機能の付加となる工事のことを言います

こちらもやはり「大規模」に行うことで確認申請が必要になってきます

ただし面積が増えたり元々の用途と大きく変えたりする工事は、増築やその他の取扱いになるため、単に模様替えに照らし合わせるだけでなく、他の法令にも目を向け慎重に判断する必要があります

 

確認申請の要・不要の具体例

ここでは大規模修繕における具体例での確認申請の要・不要をご紹介しますが、ご注意頂きたいのが建築基準法で明文化されていない部分は自治体ごとの判断になる点です

特に主要構造部はどこまでを指すか、どの程度までを模様替えとするかなど、同じ工事の種類や範囲であっても異なる見解が出ることは珍しくありません。

以下はあくまで多数例として捉えて頂き、必ず該当する自治体等に事前相談を行い確認するようにしてください

 

屋根の葺き替え

大規模修繕では非常に多い瓦やスレートの葺き替えは、それら屋根材瓦とその下の防水用のルーフィングまでは構造部分とせず確認申請不要となります

一方カバー工法と呼ばれる古い屋根材を別の新しい屋根材で覆う修繕方法がありますが、新規に構造部を造らないのであれば大規模修繕には当たらないという判断が多数を占めます。

しかし荷重増が伴うため構造計算による安全性の確認が必要とする行政もありその際は大規模修繕とは別の確認申請を求められるため注意が必要になります。

 

タルキや野地板の入替え

老朽化した屋根の葺き替えでは屋根材やルーフィングだけでなく、その下の野地板やタルキも傷みで入れ替えるケースがあります。

多くの場合野地板から下は構造部とされ、1/2を超える範囲で入れ替えるなら確認申請を要します

また屋根の形状を変える工事は、屋根材より下の構造部を作り変えるため確認申請を行うことになります

さらには大規模修繕や模様替えに当たるか否かだけでなく、構造の安全性などその他の法令に照らし合わせることも必要で

 

屋上防水塗装の塗り替え

上部が屋上や陸屋根の建物で施工されている防水塗装の塗り替えは、構造部の工事とみなされず確認申請は不要となります

ただし、その下地の屋根スラブや構造用合板を入替える場合は、やはり1/2超の工事となるようであれば確認申請が必要となります

ちなみにこの種の工事で注意したいのが、事前調査で瓦やスレートのように移動させて下地の状態を確認することが難しく、塗装を剥がしてから下地の劣化や損傷に気付くことが多い点です。

工事依頼の際は単に塗装の技術だけでなく、総合的な建物状態の判断に長けた専門業者を選ぶようにしましょう

 

4号建物は大規模修繕でも確認申請不要

大規模修繕に該当する条件は既に述べたが、これは次に示す第1号から第3号までの建築物の場合に適用され確認申請が必要になります。

1号:特殊建物(映画館やホテル、学校など)で200㎡を超えるもの

2号:木造で3階以上、または延べ面積500㎡、高さ13m、軒高9m、のいずれかを超えるもの

3号:木造以外で2階以上、または延べ面積が200㎡を超えるもの

これらに該当しない建物、例えば一般的な2階建ての木造住宅や、平屋の鉄骨造で延べ面積が200㎡以下の事務所などは、4号建築物と呼ばれ大規模修繕では確認申請が不要とされています

ただし大規模改修において不要であっても、その他の法令に係る工事では確認申請が必要になる可能性があるため注意をするようにしてください。

 

大規模修繕において注意すべき工事

大規模修繕では屋根工事において確認申請が必要かどうかだけでなく、その他の法令に抵触しないかどうかも十分に配慮することが重要です

その規模が大きくなるに連れて目を向けるべき点は増え、当然見落としのリスクが高まります

ここでは大規模修繕において屋根と同時に行われることの多い工事について注意点をお伝えします。

 

増築に該当しないか

屋根の大規模修繕で小屋裏に物置を作ったり、マンションのバルコニーに囲いを造り屋内化したりすると、修繕以外にも増築に該当する可能性があるため注意をしてください。

特に小屋裏については天井高1.4m以下であれば確認申請不要と、条件の一部のみが独り歩きをして誤解されることがありますが、水平投影面積がその下部分の床面積2分の1以上になると床面積に加える必要が出てきます

床面積が増えるとなれば建物が準防火・防火地域内にあれば面積に関わらず、それらの地域外なら10㎡超の増築で確認申請が必要になります。

大規模修繕時に計画されている方は、予想外の申請追加にならぬよう十分に注意をしてください

 

マンションは屋根以外の確認申請もチェック

マンションの屋根大規模改修で最も行われる屋上の防水層の塗り替えは、既に述べた通り防水層下の構造部に1/2を超えて工事が及ばなければ確認申請は不要とされます。

一方大規模改修で同時に行われる工事、例えばエレベーターの入れ替えや集会所の増築などは、他の法令の確認申請が必要となるためくれぐれも注意をしてください。

この他にも複数の工事を行うのであれば、それぞれに関連法令を確認する必要があり、屋根だけに注視せず総合的に確認と計画立案、予算組みなどをするようにしましょう

 

外壁の大規模修繕について

大規模修繕において屋根と同時に行われることが多いのが外壁の修繕工事です。

外壁の大規模修繕においても基本的な確認申請の要否条件は屋根と同じになり、主要構造部である外壁材自体を過半である1/2超を張り替えるのであれば確認申請が必要になります

さらに耐火、準耐火、防火などの性能を持つ外壁材は、新たに選ぶ外壁材を慎重に選ぶ必要もあります。

コスト的な面で見ると両者とも工事では足場を組むことが多く、同時に修繕することで重複する部分の足場費用を削減することができます

また外壁の塗装とスレート屋根の塗り替えや屋上の防水塗り替えは同じ塗装業者が入るため、1度で済ませれば打ち合わせや住人や近隣への声かけも少なく済みます。

屋根と外壁が同様の劣化具合であれば、同時に修繕を行うことでコストや手間を減らせることは承知しておくと良いでしょう

 

直接施工業者に依頼するのは危険

大規模修繕で確認申請に絡むトラブルで招きやすいのが、建築主が直接施工業者である大工などを手配するケースです。

通常、リフォーム業者や建築士などを抱える工務店では法的なチェックを行ってから見積もり計上や業者手配に移りますが、施工業者に直接依頼をしてしまうと法令チェックがされない可能性が高くなります

施工業者は工事のプロではありますが様々な法令確認は別業者の仕事のため、意図せず違法建築になってしまう恐れがあります

近所だからという理由で頼んでしまったり、ネットで探して依頼したりすると起こりやすいトラブルであり、必ず法令チェックを行える専門家を介在させて行うよう注意をしてください

 

社会福祉法人施設の補助金条件

社会福祉法人が整備する養護老人施設などの大規模修繕に対し、都道府県や指定都市、中核市によっては補助金制度が設けられています。

ここで同じ大規模修繕との言葉が使われるので混同されがちですが、この補助金交付の条件として確認申請が求められることはほとんどありません

建築基準法に則り確認申請が必要ならば行うべきですが、法に照らして不要なのであれば、そのまま補助金申請が可能です。

例えば前述したような単なる屋根の防水塗装の塗り直しであれば、確認申請を行わなくとも補助金の申請には差し支えありません。

もちろん「◯年以上経過した建物」や「使用に堪えない状態」など、補助金制度が設けている条件を満たす必要はあります

こちらも、もし判断に迷うようなら自治体の補助金担当窓口で事前の相談をした上で大規模修繕を進めるようにしましょう。

 

まとめ

屋根の大規模修繕においては、必ず確認申請が必要かどうかを確かめるようにしてください。

もし見落とせば違法建築となり大きなペナルティを受けることになってしまいます。

「主要構造部の一種以上を過半に渡り修繕・模様替えを行う」という前提とそれぞれの言葉の定義をしっかりと把握し、誤った認識をしないようにしましょう。

また具体的な事例を挙げてはいますが、判断が自治体等により異なる部分も多いため、事前に直接問い合わせるか、申請に長けた専門家に相談するなどして、適正な工事になるよう留意してください。

【記事監修】 山田 博保

株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
建築業界での経験を活かした不動産コンサルティング及び建築、不動産に関わるWEBメディアを複数運営。Facebookお友達申請大歓迎です。その他、建築や不動産、ビジネスモデル構築に関するコンテンツは公式サイトより。

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